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RSリベリオン・セイヴァ―

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第十三話「銀髪と眼帯とロリにはご用心?」

 
前書き
いよいよラウラ登場です。と、同時にまた一人最強キャラが登場します。 

 
数週間前、ロシアの軍事施設にて

「フン……たわいもない」
黒い大剣を肩に担ぐ一人の青年が、足元に転がるIS操縦者の死体を見下ろして鼻で笑った。
「レーゲン・タイプとはいえども、操縦者が弱くては性能の意味がない……」
近頃のIS操縦者などは、大半がタレント的活動をしている者たちが多い。よって、ISに乗るときの彼女たちの姿はハッキリ言って見掛け倒しと言われても仕方がない。基本的動作や銃の引き金を引くことは出来ても、やはり専門的戦術知識を持つ戦士と戦えば、結果は答えなくてもわかる。
「まったく……軍人とはいえ、軍務を怠ってタレント業に走るとはな……そもそも、本当にエースなのか? 情報にはIS適正Aであり、模擬戦での撃墜王と記載されていたが」
女というモノは、いったい何を考えているのか理解に苦しむ。彼にとって、とても胸糞悪いことわざで例えるなら、「乙女心と秋の空」というやつだ。
「戦士としての信念があやふやな者に武器を持つ資格はない……」
RSの大剣を収めた彼は、ロシアの冷たい夜風に身を震わせてすぐさま空へ消えていった。

春の温かさは中途半端に終わりを迎え、徐々に夏の暑さが近づきつつある今日この日。
期末テストという難関を潜り抜けてきた男たちは、平和なひと時を味わっていた。
「あ~……平和だね~?」
太智は、机に頬をのせて授業後の一息をついた。
「太智、臨海学校って……どういう場所かな?」
今か今かと待ちきれない彼は、隣の席の清二に話しかける。
「合宿だから……別に、高級旅館に泊まるようなことはしないとおもうよ?」
「まぁ……旅館に関しちゃ二の次、三の次だ。目玉は海水浴だよ?」
「海水浴」
「そう! つまり、海水浴には水着に身を包んだ女達の眩しい姿を写真に収める。それをマニア共に高値で売りさばくのさ?」
「ははは……計画的だね?」
「もちろんさ♪ 特に山田先公の水着ショット~!」
「山田先生の……」
想像しただけで清二は、鼻の下を伸ばしてしまう。
「ぬっふっふ! しかし、山田先公以外に一番すっごーい目玉は……」
と、太智は机の中からデジカメを取り出すと、清二同様鼻の下を伸ばしてこう言う。
「弥生の水着ショットだ~!」
「や、弥生ちゃんの?」
「おうよ! あんな神秘的なグラマーボディーを持つ娘は他に居ない。彼女の写真なら……絶対に五万円は行く!!」
「や、やめなよ? いくらなんでも弥生ちゃんは俺たちの仲間なんだし、可哀相だよ?」
「何を言うか!? 今年の夏休みは、あんなことや、こんなことをして遊びつくすって心に誓ったのだ! 大丈夫だよ? 仮にばれたとしても後で弥生に餡蜜でもおごってやれば、ご機嫌になるんだからさ?」
「知らないよ~?」
つくづく危ない橋を渡る相棒だと、清二は溜息をついた。
「何話してんだ?」
と、そこへ俺が現れる。
「お、狼か? なに、臨海学校の計画でも考えていたところさ?」
「ああ……そういや、今月末に行く予定だったな?」
「だろ? ああ、早くその日が来ないかな~?」
「随分楽しそうだな? けど、合宿だぞ? 合宿って言うと一日中、海上で行う模擬授業をする予定だから、面白いもんじゃないだろ?」
「狼は知らないな~?」
と、太智がニヤニヤして俺の顔を見上げた。
「何だよ?」
「ふっふっふ……自由時間に海水浴をやるんだぜ? きわどい女共の水着を写真に収めまくるチャンスじゃないか?」
「何だ、太智って女嫌いじゃないのか?」
いつも、女子たちに悪戯をし続けるこいつを、俺は今まで女嫌いな人間かと思っていたのだ。
「おいおい? それをいうと、俺がホモって思われるじゃねぇか? 女に興味ないが、女の体には興味があるんだよ?」
「ああ……そういうことね?」
俺は、傍に居る清二同様に苦笑いした。
その後、朝のホームルームが始まり、いつものように厳格な千冬が教室に入場し、教卓で仁王立ちをして、彼女の隣に相棒のように山田先生が出席を取っていた。
「シャルル君とラルフ君は、突然の用事が出来て急遽フランスへ一旦帰っちゃうことになりました。でも、近いうちにこちらへ帰ってくるそうですよ?」
と、山田先生は転校してきた二人の美男子の事情を話した。周囲のファンの娘たちは、とても残念がった。特にショタ系が好きな女子や、美青年にいじられたいというMっ子の変態女子共は大いに悲しんでいるだろう。
「そして! 今日は、なんと皆さんのクラスに転入生がもう一人入ってきます」
と、シャルルやラルフが出て行って早々に再び転校生が現れることになった。
「転校生? シャルルやラルフが去ってから早々だな?」
一夏は、あくびをしながらそう呟いた。
しかし、教室に入ってきた生徒は凰と同じ小柄な女子生徒である。それも銀髪で眼帯をした少女であった。それも、制服すらスカートではなくズボンと長靴だった。
――うわぁ……また変な奴が現れたわ?
また、厄介ごとにならないようにと俺は心から願った。
「ドイツから来た、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
と、まるで軍人のように堅苦しい態度で紹介も一言で済ませた。
「い、以上ですか?」
と、山田先生。
「以上だ」
キッパリ答える転校生だが、そんな彼女に千冬が近づいた。
「自己紹介だ。まともにやれ……」
「はい、教官」
「教官ではなく先生と呼べ?」
――ん……?
その会話を聞いて、俺は千冬とそのラウラという転校生を見た。会話からするにラウラは千冬の教え子なのか? しかし、教官と言っていたから千冬が前にどういうところにいたのかはわからないな……
すると、ラウラは目の前の席に座る一夏へと歩み寄ってきた。
「貴様が、織斑一夏か?」
と、不愛想に尋ねる彼女にボンヤリとした一夏は、「ああ……」とつまらなそうな顔をして返事を返した。どうせ、また千冬の熱狂的なファンの一人だろ? 脅し染みた嫌味でも言うに違いない。が……
ぺチンッ……!
「痛……!?」
気が付くと、一夏の頬がジンジンと赤く腫れていた。ラウラは、会って早々に一夏へ平手打ちを挨拶かのように放ったのである。
「な、何すんだよ!?」
当然一夏は怒るが、ラウラは構うことなく平然とこう述べる。
「貴様など認めんぞ……お前が、あの人の弟だなんて!」
「あ? テメェ……姉貴の知り合いか?」
と、頬を撫でながら問う一夏に、ラウラはさらに怒る。
「気安くあの人のことを……」
刹那、ラウラの腹部に衝撃が襲った。そして彼女は教卓に叩き付けられていたのだ。
「おいおい? ドイツってのは、あいさつ代わりに人を殴るのが風習なのか?」
RSの力の一部を開放した一夏が反撃した。
「ぐぅ……貴様ぁ!」
「織斑センセー、コイツ追い出していいですかー?」
と、棒読みで千冬に聞く一夏。
「何をしている貴様ら! とっとと席につかんか!?」
しかし、今頃気づいたのかと千冬は俺たちに注意した。
――コイツ、半分面白がってんな?
一夏は、そう千冬を嫌な目で見た。最初は行き成り自分の弟を引っ叩いたラウラに驚いただろうが、その後の展開が妙に面白そうだと思って彼女はそのまま見届けたのだろう。
「……わ、私は認めない! 貴様何ぞ、認めるものか!?」
「おう! ケンカならいつでもかかってこい!!」

同時刻、IS学園正門ゲート前にて

正門の管理ボックスの中に、女性警備員が涎を垂らしながら額を窓に当てて気絶していた。
そんな彼女の前を、サングラスをかけた一人の若い青年が平然と通り過ぎて、学園の敷地へ入っていった。ラルフのように黒いジャケットとショルダーアーマーと肘と膝にプロテクターを付けた身形で、オールバックの垂らした前髪が風に揺れる。
「IS学園の警備とは、この程度か……?」
サングラス越しから見渡す青年の目は、IS学園ともあろう日本の誇る巨大施設がこれほどまで警備が緩く、全てが非力な女性陣ばかりで取り仕切られていることに呆れていた。
――平和ボケというやつか?
いや……それもあるが、やはり「女尊男卑」による影響の一つだ。女性ばかりが有利になりすぎた挙句、重要な役割までもが男女問わずに女性限定になってしまった。今に、女性なら誰でも高給取りになれる世の中が訪れるかもしれない。実に、世も末だ。
「こちらヴォルフ、たった今IS学園に入ったところだ」
ホログラム通信を起動させて、ヴォルフという青年は本部との連絡を取った。
『門番はどうした?』
本部からは、ヴォルフよりも年上の青年の声が聞こえた。
「眠ってもらった」
『やれやれ……前回のパリ支部の筆頭も同じようなことをしたな?』
「前者のしたことは賢明な判断だ。やはり、どれほど事情を説明しようが、相手側は信用してはくれないようだった。俺が、『男』というだけでな?」
『ま、とにかく目立たないように実行しろ? 同士に見られるのはともかく……IS側の人間には出来るだけ見られぬよう彼女を始末しろ』
「了解……で、問題のターゲットはどこにいる?」
『今朝、一年一組に転向して来たらしい。お目当てはブリュンヒルデだそうだ?』
「そんなに彼女は人気なのか?」
『ああ、女共からすれば絶大な人気らしい』
「その、ラウラという軍人も千冬のファンなのか?」
『いいや、情報によると千冬は彼女の恩師らしい……当時、いろいろとあってドイツの軍事施設で黒兎部隊の教官を務めていたとか? どのみち、敬愛する人物=ファンってことだ』
「くだらんな……」
『では、通信を切るぞ? ターゲットは一年一組に居る、忘れるな?』
と、本部とのやり取りは終わり、ヴォルフは再び歩き出した。
しかし、ふと背後から銃口を向けられていることに気付き、ヴォルフはゆっくりと振り返った。
そこには、警備員の女性たちがISを纏って彼に対し銃を構えていた。
「止まりなさい! IS学園侵入の容疑で逮捕します!!」
警備員の一人が叫んだが、ヴォルフは動じることなく片手を頭上へかざした。そのポーズを合図に頭上から光の陣が現れ、そこから巨大な大剣が降りてくる。それを片手で握りしめ、その大きさに似つかず軽々と華麗に大剣を振り回した。
「そ、その姿は……男専用のIS!?」
「そんな……また前回と同じパターンじゃない!?」
動揺する警備員達に構わず、ヴォルフは剣先を向ける。
「相手がISなら容赦はせん……」
と、同時に警備員の悲鳴がこだました。

ホームルームが終わって休憩時間が訪れる。
早々に転校生からの喧嘩を買った一夏、そしてそんな一夏に箒がしつこく問い詰めてくる。
「一夏! あの少女はいったい何者なんだ!?」
「知らねーよ! いきなり殴ってきたんだ」
「お前が変な事を過去にしでかしたのではないか?」
「はぁ!? 何言ってんだよ! あんなチビ、全然知らねっつうの!!」
そんな一夏を見て、俺はまた厄介ごとが始まりそうでならないと心のどこかで不安を感じる。
「しかし……ドイツのラウラ・ボーデヴィッヒが転校とは、益々厄介なことになったぜ?」
清二が、ため息をついた。
「そうだな? すくなくとも、俺たちの敵になりうる可能性がある。何せ、黒兎部隊隊長だからな?」
と、太智。
「え、あのラウラってガキ……そんなに強いのか?」
俺は、キョトンと尋ねた。
「ええ、かなりの凄腕と聞きます。国家の代表IS操縦者を圧倒するほどの……」
そう弥生が、俺にラウラのデータを見せた。クリアファイルに挟まっている書類には、ラウラの写真と部隊の詳細な情報までもが記載されている。
「ラウラ・ボーデヴィッヒか……って、おいおい? ISを軍用化するのは世界的に禁じられてんじゃないか?」
そう……ISは、あくまでスポーツ種目。それが、いつのまにやら軍用化されており、世界は知らんふりを続けてはスポーツ競技よりも軍備の方へISを回している。
「世界が決めたルールなんざ、あてにはならねぇよ? 表世界のお上にとっちゃあ、ルールなんて破るためにあるって認識なのさ? 初めから守ろうなんて気はこれっぽっちもありゃしねぇ……」
太智は、そう言って懐からタバコを取り出した。ちなみに俺と清二、そしてこの太智は皆成人をむかえている。
「太智さん? 見つかったら、織斑先生に怒られますよ?」
と、心配する弥生だが、太智は気にしていない様子。
「とりあえず、一夏! お前は、あのラウラってガキに十分注意しろ!? 奴はひょっとすると、お前さんのデータを盗むか、あるいは拉致か暗殺を企てているかもしれねぇ……ドイツが送りこんだISの尖鋭部隊の隊長だ。これでもかってぐらいに警戒しろ!?」
と、太智は注意深く一夏へ言った。
「そうだ、一夏君? これを持っていて?」
次に弥生が一夏へ一枚の札を手渡す。
「相手に殺意を感じたら、警報を鳴らして私たちに知らせてくれます。これを肌身離さず携帯しておいてください」
「あ、ありがとう……弥生さん」
大げさだと、一夏は苦笑いしながら御札を受け取った。

昼休み、ジャージ姿の俺と一夏はアリーナを借りてお互いの腕を高め合っていた。一夏に負けじと俺も共に汗を流しながら零と白夜が刃を交えた。
「おいおい? いつの間に強くなったんだ一夏?」
下手すれば、俺よりも強くなったのかもしれない。
「狼さんこそ、隙のない攻撃が半端ないですよ?」
お世辞とは言えない表情で俺の攻撃を必死で防ぐ一夏は、汗だくになっていた。
空中戦もそうだが、RSの主な戦闘環境は地上戦である。空中とは違って、自由自在に移動できるのとは違って移動区域が限られるために空で戦うよりも厳しい。
俺たちは、アリーナの地を駆け回って何度も剣を交えて戦い続けた。
「ふぅー! 良い汗かいたぜ?」
お互い汗だくになりながら、それぞれの刀を鞘へ納めた。
「早くシャワー浴びたいですね?」
「ああ、さて……そろそろ昼休みが終わるころだし早くシャワー浴びて戻ろうぜ?」
「はい!」
俺たちは、そのままシャワールームへ向かおうとしたが、そんな俺たちの背後を呼び止める少女の声が聞こえた。
「待て……」
「ラウラ?」
そこには、今朝一夏を殴ったあの転校生の姿があった。
「何しに来たんだよ?」
一夏は、ぶっきら棒に尋ねる。
「私と戦え?」
「はぁ?」
了解も得ずに、ラウラはすぐさま自機の黒いISを展開した。
「織斑一夏、私と戦ってみせろ?」
「やだ」
一夏はキッパリと断った。
「……!」
しかし、ラウラはそれを気に入らず、肩に搭載されたレールキャノンを向けて引き金を引いた。
「……!?」
刹那、激しい爆発音と砂煙が舞うが、そのキャノンの攻撃を一夏の白夜が切り裂いた。一瞬、ラウラは目を丸くさせるが、時期に冷静さを取り戻してこう述べる。
「ほう……少しはやるようだな? しかし貴様など、あの人の足元にも及ばないだろうな?」
「っ!!」
そう姉と比較されることに一夏は、表情を険しくさせる。
「何の真似だ!? 勝手に攻撃したりして!!」
俺は、ラウラの非情さに怒りを覚えた。
――コイツ、まさか本当に一夏の命を!?
途端に俺は、太智が言っていた事を思いだした。軍人が転校生として現れたということは、大方一夏が関係することではないかと……今や、一夏は俺たちよりも世界中にマークされる存在だ。後から同じような事を真似して出てきた俺たちよりも、やはり最初に現れた一夏のほうがより価値があるということだな。彼に対して世界は、モルモットとして研究に欲するか、イレギュラーと見なして抹殺するかのいずれかだろう。
「ラウラ! お前の目的は何だ!?」
俺は、零を握りしめて彼女に尋ねた。
「無関係な邪魔者は黙っていてもらおうか?」
やはり、話す気はないか……
「よく聞け! 眼帯の銀髪チビ!?」
「……?」
一夏は、白夜の剣先をラウラへ向けると、相手がドイツの尖鋭部隊を仕切る人間だろうが関係なく堂々と、こう言い張った。
「お前が、あのバカ姉貴の何なのかは知らねぇが、俺が``アレ``の弟だからという理由で、ビンタされる筋合いはねぇ!」
「キサマァ……! あの人を、教官のことをそこまで愚弄するかぁ!!」
頭に血が上ったラウラは、手の甲部からビーム上の刃を展開させると、こちらへ一直線に突っ込んできた。無論、一夏と俺も受けて立つつもりだったが……
「ターゲットを発見、状況は……問題ない」
「!?」
その声は、俺たちの無線に聞こえた。レーダーに映る上空を見上げると、そこには巨体な剣を担ぐ人影が見えた。
「あれは……!?」
一夏は、太陽に背を受けるそのシルエットに目を見開く。
「あ……RS!?」
そして俺は、その正体が何であるかを呟いた。
人影は、地上へ急降下してアリーナへ降り立つ。それも、先ほどの急降下にかかわらず、土煙すら立てずに静かに降り立った。
「黒兎隊長の、ラウラ・ボーデヴィッヒだな?」
「……何者だ?」
しかし、突然の乱入者にも動じることなく、ラウラは冷静に尋ねる。
「俺は、ヴォルフ・ラインバルト……お前を殺す」
大剣を片手で軽々と持ち上げて、その先をラウラへ向けるヴォルフ。そんな彼にラウラは鼻で笑った。
「フン……何者かは知らぬが、誇り高きドイツ軍人であるこの私を……」
シュッ……!
刹那、ラウラの間合いへヴォルフが入りこんでいた。
「遅い」
そして、気付いたときにはシュヴァルツァ・レーゲンのシールドが2ケタを切り、残量が4となった。
地面へ膝をつく彼女を、ヴォルフが見下ろした。
「力量を知るため、ほんの小手調べだったのだが……その程度か?」
「き、キサマァ……!」
「俺も、貴様と同じ誇り高きドイツ軍人だ……」
「!?」
その言葉を、そっくりそのまま返すかのように母国語で話すヴォルフに、ラウラは目を丸くした。
「ば、バカな……! 同じドイツ軍人とはいえ、この私が……!?」
腹部を抱えながら、立ち上がるラウラに、今度は逆にヴォルフが鼻で笑う。
「黒兎といえども、所詮は黒い毛を被った兎。寒地を流離う黒狼の前には単なる獲物に過ぎん」
「何を……!?」
「死ね」
ヴォルフの大剣が、ラウラの頭上へ振り下ろされる。その時。
「貴様ら! そこで何をしている!?」
剣幕を上げて、アリーナへ入ってくる千冬がいた。
――邪魔が入ったか……
ヴォルフは、振り下ろす大剣をピタリと止めると、静かにその剣を粒子化させて収めた。
「何者だ? お前は……」
ラルフの時と同じような登場をした青年を、千冬は睨み付ける。
「今日からこの学園へ転校する者です……」
「転校? ああ……政府からそのような通達が届いていたな? まったく、次から次へ変な奴らがウチに押しかけてくるから困る……」
ため息をついて額に手を添える千冬を見て、ヴォルフはムッとした。
――ブリュンヒルでが、これほど柄が悪いとはな?
小さなため息をつくヴォルフに、千冬はまた尋ねる。
「……で、先ほどの騒ぎは何だ?」
「喧嘩を止めたまでです……」
「ほぉ……?」
と、千冬は俺たちとラウラを見た。時期にヴォルフへ向き直ると、呆れた顔をした。
「ここは学園だ。いくら仲裁に入ろうとしても、無許可でISを展開するな? ま、今回はいろいろとあるため、見逃してやる」
「どうも……」
呆れた顔で、ヴォルフは頷いた。
「それと、そこの三人も早く教室へ戻れ! もう授業が始まっているぞ!?」
「はい……」
俺たちも、彼同様に呆れた顔をする。まったく、喧嘩が起こったというのに解決しようともしないでそのまま勤務に戻るのかよ?
「今回は見逃す……」
ヴォルフはラウラを背にそう言い残してアリーナを後にした。そして、彼は俺たちの元へ歩み寄る。
「ドイツ支部から来た、ヴォルフ・ラインバルトだ。よろしく」
やや、微笑んだ表情で俺たちに挨拶をする。
「ああ、日本の鎖火狼だ。それと、こちらが……」
「織斑一夏だな? なに、リベリオンズの中で彼を知らない者はおらんよ?」
「そ、そうか……はは、案外俺って有名人だな?」
と、一夏は苦笑いを浮かべる。
「では、行こうか? 後で、この施設の詳細な情報でも教えてくれ?」
そう、親し気にヴォルフは俺たちの肩に手を添えて、共にアリーナを後にした。ただ一人、ラウラだけを残して……
――ヴォルフ・ラインバルト……何者だ!?
ただ、未だ己の身から離れぬ彼への殺意は、本物だと感じた。
 
 

 
後書き
予告


千冬と一夏の過去に何があった? 一夏は、かつて行われた第二回IS世界大会での出来事を語り始める……そこで明かされる真実とは?

次回
「モンド・グロッソ」
 
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