おぢばにおかえり
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第十八話 プールですその一
プールです
今日の体育はプールです。天理高校のプールは屋根があって雨でも泳げます。けれど普段はそれだと暑いので天幕は開いています。
「開閉式なのね」
プールに入る時に誰かが言いました。
「福岡ドームみたい」
「そういえばあんた福岡出身だったわね」
「ええ」
また野球の話になっています。最近阪神が不調であまり楽しめないですけれど。やっぱり星野監督のあの熱血采配が好きでした。岡田監督も子供の頃から観ていてサインだって持っていますし二軍監督の試合をお父さんに連れて行ってもらったりして嫌いではないですけれど何か采配が地味なのでどっちかというと星野監督が好きです。
「だからホークスファンなのよ」
「ホークスも強いわね」
パリーグの話はあまりわからないですけれど横で聞いていました。
「最近特に」
「西武なんかには負けないわよ」
誇らしげな言葉が耳に入りました。
「オリックスなんかギッタンギッタンにしてやるんだから」
「もうしてるじゃない」
「何よ、去年だったっけ」
また随分と古いお話です。
「それより前だったかしら。二十何点も取って」
「どんな相手にも容赦しないのよ、鷹は」
それで日本シリーズ阪神負けました、はい。最終回の広沢選手のホームランで一矢報いたのだけはよかったですけれど。鷹が強いのは本当に実感しました。お爺ちゃんが何か御道筋決戦の再現だと言っていました。大阪の道だっていうのは知っていますけれどそんな決戦があったんでしょうか。
「例え巨人でもね」
「ああ、巨人は好きにやっちゃって」
「あのチームだけは許せないわ」
天理高校では阪神ファンが大勢を占めますので。巨人は敵なんです。それでもOBに元巨人の選手もおられます。監督に口説き落とされて入団したらキャンプであんた誰?と呼ばれたそうですけれど。そんなこと言う監督は一人しかいないんですぐにわかりました。
「毎回毎回選手の取り方が汚いのよ」
「そうそう、自分のところの選手は育てない」
「あのオーナー何とかならないの?」
男の子の中には巨人が勝ったら選手とか監督とか特にオーナーに色々言う子がいます。巨人ファンもいるにはいるんですけれど。
「私は監督が嫌い」
「私はいつもテレビで巨人巨人って五月蝿い落語家が」
あの落語家は私も大嫌いです。面白くないです。
「ガチャ目でスキンヘッドのあいつも嫌よね」
「家でテレビに出たらすぐにチャンネル変えるわよ」
昔巨人が負ける筈がないだろう、とか喚いていたのを憶えています。これって何処かの北の将軍様の国と一緒じゃないんでしょうか。
「何で巨人ファンでテレビに出るのって嫌な奴ばかりなんでしょうね」
「阪神ファンはそうでもないのにね」
「そうよね」
私はその中でもあのオーナーと今のしゃもじみたいな顔をした監督が嫌いです。信者さんの中には巨人と聞いただけで顔を顰めさせる人までいます。とにかく天理教は関西に多いですから巨人を嫌いな人もそれだけ多いんです。私もその中の一人だったりします。
「まあとにかく。あんな嫌なチームの話はこれで止めて」
「今年は補強が成功して絶不調だしね」
「そうそう」
あそこまでお金かけて補強すればするだけ勝てなくなる。不思議ですよね。それにしても日本全体が不況だって言われて長かったのにどうして巨人だけお金が尽きないんでしょうか。そういえば何か毎日一時間テレビに出て好き勝手言うだけの報道番組の人の年収が二億とか五億とか。不況不況って言われていたのにそれを言う人がお金を湯水みたいに手に入れているのはちょっとわかりません。
「それはそうとしてプールよね」
「おぢばがえりの時はあちこちで泳げるけれどね」
「あの時はね」
おぢばがえりの時は夏の暑い時です。ですからおぢば中にあるプールが全部開放されます。中にはその時の為に置いてある場所もあります。
「けれどここのプールはね」
「何と雨でも泳げる」
「よく考えたら凄いわよね」
更衣室に入っても話を続けます。中はクラスの女の子全員が入ることができます。そこで皆制服を脱いで着替えはじめました。服を脱ぐと皆。
「皆スタイルいいのね」
私はついつい呟いてしまいました。
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