| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

東方幻潜場

作者:月の部屋
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

4.『願い』

 
前書き
 お兄ちゃん、元気ですか?
 私は元気だよ。
 妖怪さんたちは相変わらず優しい。けど、絶対にこの部屋から出してくれない。それも相変わらず。
 お兄ちゃん、今どこでなにをしているの?
 寂しいよ。
 前ね、二週間前に会ったときね、思わず抱き着いちゃったよね。しばらく恥ずかしかったけど、でもね……やっぱり、お兄ちゃんの匂いがいちばん落ち着くんだよ。
 ……でも、恥ずかしいものは恥ずかしいかも。次は気を付けるね。
 次は、いつかな。

追記
 そういえばこの前妖怪さんがね、お兄ちゃんが『げんそうきょう』っていうところへ調査しに行ったって言ってたけど、それが本当なら今そこにいるんだよね?
 待っててね。
 きっと会いに行くから。
 お兄ちゃんと幸せに暮らせる日が、来ますように。


 

 
 そして与えられた部屋は広々としており、とてもじゃないが一人で暮らす部屋とは思えなかった。火をおこして暖をとるらしいレンガ造りの暖炉に、赤い絨毯。一人で使うにはもったいないくらいの大きな机。
 しかし一つ、明らかに足りないものがあった。
 それはもちろん、ベッドである。
「(あえて見抜かなかったけど、あの子、本気なのか)」
 中身は年頃の東としては、ちょっぴり嬉しいような恥ずかしいような、けどなんか違うような、やはり複雑な心持ちであったが、もういいやと意を決し、任務の一つをこなすことにした。
 東はポケットからスマートフォンを取り出した。
 そしてぽちぽちと何かを入力していき、やがて一息ついて再びポケットにしまった。
 何をしていたのか。それはもちろん、報告である。今回送った内容は、博麗神社の重要性と特徴、吸血鬼の存在及び推測される能力と戦闘力を主として色々である。
 スマートフォンには現代の科学を超越した様々な細工がされている。空気と摩擦を起こすだけで充電ができるという画期的な充電方法に、妖怪結社のみだが結界を無視してメールのやりとりができる驚異的な送受信能力、いざというときに自分の姿を消すことのできるアプリなどが入っており、もはや意味が分からない。
 東が暖炉に火をつけて暖をとっていたとき、ガチャリと無造作に扉が開かれた。
「あなたが、お姉さまの専属枕ねっ!」
「うん……君は?」
 レミリアと同じような顔つきだが、性格は全く異なって無邪気に明るく、そして、背中に七色に光る羽が生えている少女。見抜くまでもなくレミリアの妹で同じく吸血鬼であることを悟った東は、現状報告をもう少し後にすればよかったとちょっぴり後悔する。
「フランドール・スカーレットよ!あなたは確か、えぇと、おさらいどぐま?」
「……おさなぎあずま、だよ」
「えへへぇ。……それよりも、東。私と、遊ぼ?」
「っ!?」
 東は見抜いた。
 フランの能力、『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を。
 なぜ見抜けたのか。それは、フランから放たれた狂気にも近い強力な妖力を感じたからである。
 身構えようとしたその時、神速で東の身体に抱き着いてきた。
 東は、しまったと思った。
 ぐっと唇を噛みしめ、手にしたスマホを起動しようとしたとき。
「ふわぁ、ほんとに抱き心地良い!」
「……」
 フランは東に抱き着いて離れなかった。
「(この子、力が強大であるゆえに調節ができていないのか。暴走したらややこしいことになりそうだ)」
 フランの髪を撫でると、まるで絹糸のようにやわらかかった。再生能力が高いので、髪がいたんでも修復されるらしい。
「東ぁ、私の枕にもなってくれる?」
「ふぇ!?えぇと……」
「フラン、それは私の枕よ」
 ガチャリと入ってきたレミリアにそう言われ、ぬうぅとなるフラン。しかしそこで黙りはしなかった。
「じゃあ、フランもいっしょに使う!」
「いいわよ」
「即答っ!?」
 仲の良い姉妹である。
「(二人が連携を取って攻撃を行えば、抜群のコンビネーションとなるのだろうか。だとすれば危険だな)」
 東は二人に抱き着かれるという謎の状況で、生真面目にも考えうる可能性をいくつも考えていた。



 スカーレット姉妹は吸血鬼である。吸血鬼は基本的に夜行性のはずなのだが、二人は夜に睡眠をとる。その理由は「夜は暇」ということらしい。
 それはそうと、紅魔館の門に立つ『黒ひげ危●一髪』みたいなことになっている妖怪の影は北を向いていた。
 あの姉妹は、東を思う存分抱きしめた後、何か忙しそうに去っていった。判断材料がさすがに足りなさすぎるので見抜くことができず、まぁいいかと思ってスマホをいじっていた時である。
「……トイレどこかな」
 別に便意を感じたわけではないが、手洗い場の位置を把握しておかないといざというときに困るので行っておこうと思い、部屋を出た。
 数十歩、歩いた時である。
 メイドが目の前に現れた。
 そして。
「……っ!?」
 東の頬を、ナイフがかすめた。
 そしてメイドは一枚のカードを取り出した。
「あなた……ただの人間じゃないみたいね。ちょっと検査させてくれるかしら……!」

時符「トンネルエフェクト」

 一瞬にして、視界は銀色に染まった。
 
 

 
後書き
連日投稿でごんす!誰だてめぇ。
終戦を迎え、調子に乗っている月さんでございます。結果はまだ返ってきてないのにね。

さて、メイドは一体何を考えているのでしょう……? 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧