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トガ

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第四章

 観客はその彼等の舞台を観てだ、驚いて言った。
「ローマ時代でも」
「こんな鮮やかな服あるんだな」
「いい舞台だな」
「ああ、本当にな」
「白とか鎧の青銅だけじゃなくて」
「赤に青にな」
「黄色に緑」
「それぞれのキャラの色があって」
 それにと言うのだった。
「その色がどれも鮮やかで」
「奇麗な舞台だな」
「この舞台いいな」
「脚本や演技もいいけれど」
「いい演出だよ」
「目立ついい舞台ね」
「目に鮮やか」
「まるで虹を見ているみたいね」
 それこそと言うのだった。
「この舞台はいいね」
「うん、この舞台はまた観たいよ」
「凄くいいよ」
 こう言うのだった、そして。
 評判は上々だった。当然ながらその評判はジュリアス達演劇部の耳にも入った。そうしてだった。
 ジュリアスはその言葉を聞いてだ、確かな笑みで言った。
「成功だよ」
「うん、そうだね」
「君の発想が成功したよ」
「あえて色々な色の服や鎧にした」
「それが成功だったね」
「うん、本当にトガはね」
 もっと言えば当時の服や鎧はだ。
「色が一つしかないから」
「それをどうするか」
「君はそれで悩んでいたけれど」
「じゃあ色を付ければいい」
「そう思ったからだね」
「そこに考えが至ったからね」
 それ故にとだ、彼も言う。
「成功したよ」
「あれだよ、若しもね」
 フランコも言う、皆今は打ち上げのパーティーの場にいる。そこで飲み食いをしながら話をしているのだ。
「トガも色がないからね」
「調べたらあったけれど」
 白だけでなくとだ、ジュリアスは言った。
「それは階級とか喪服用だったりしたから」
「それじゃあね」
「うん、やっぱりわかりにくいから」
 舞台のキャラが誰なのかだ。
「これはね」
「当然のことだね」
「そう思うよ」
 こうフランコにも言う。
「やっぱりね」
「そうだね、時代考証も大事だけれど」
「舞台ははっきりわからないと」
「駄目だね」
「そうだね、じゃあ」
「この舞台は成功だよ」
 そう思っていいとだ、フランコは言った。
「色を上手に使ったお陰でね」
「成功した」
「そうだよ、君の功績だよ」
「そうだね、僕もね」
 フランコに言われてだ、ジュリアスも言う。
「色の使い方がわかったから」
「だからだね」
「大きな経験になったよ」
「そしてその経験をだね」
「これからも使っていくよ」
 こうも言うのだった、そして実際にだった。
 フランコは次の舞台でも色を匠に使って成功させた、そしてそれかれもそうしていってだった。何時しか色使いが巧みな演出をすることで知られる様になり後に演出家となりその分野で大いに名を馳せたのだった。


トガ   完


                        2015・11・29 
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