強い警官
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五章
「しかしその考えが変わった」
「現場にですか」
「出る考えになってな」
「それで、ですか」
「ああして鍛えて強くなったんだ」
「確かに。あの事件のことを知れば」
あまりにも無残な事件だからだ。
「そうした考えにもなりますね」
「そういうことだ、私も私でな」
「部長もですか」
「警察が腐ってるとな」
「そうした事件がですか」
「また起こりかねない、警察が強くて健全でないとだ」
それこそというのだ。
「舐められて悪い奴がのさばるからな」
「部長は健全ですね」
「私が考えたことはな」
「そうなんですね」
「あいつは強さを選んでな」
「そうですか、僕も」
曹はここで自分のことを考えて言った。
「そのことを考えます」
「警官としてどうあるべきか、か」
「はい、部長は組織の健全化ですね」
「汚職には厳しいだろ」
「確かに」
一銭も受け取らずしかも他人の不正に厳しく追及する、それで上司を辞職に追い込んだこともあると言われている。
「部長は」
「それで警部は強さですか」
「どれを選ぶ?」
部長は曹に確かな笑みで問うた。
「御前は」
「そう言われますと」
「まあ考えることだ、そしてだ」
「二度とあんな事件が起きない様に」
「警察官として相応しい行動を取れ、ではな」
「はい、それでは」
こう言ってだ、そしてだった。
部長はあらためてだ、こう曹に言った。
「また飲むか」
「これからですね」
「そうだ、そうするか」
「今度は何を食いますか?」
「そうだな、飲茶にするか」
「それの屋台ですね」
「いい店を知ってる、そこで飲みなおすぞ」
部長は曹に笑顔で言ってだった、そのうえで。
彼と共にまた飲んだ、そしてその次の日だった。
曹は劉のところに来てだ、こう彼に言った。
「警部が通っておられる道場は何処ですか?」
「?そこに通うのかい?」
「そのつもりですが」
「そうか、そこで拳法をしたいんだな」
「はい、通っていいですか?」
「いいよ、門下生が多い方が老師も喜んでくれる」
いささか世俗的な話だった。
「それじゃあね」
「はい、お願いします」
こうしてだった、曹は劉と共に己を鍛えだした。彼はそちらを選ぼうと思った。それで道場での稽古の後劉と共に帰りながら言った。
「もっと強くならないと駄目ですね」
「強くなって?」
「警官は強くないと駄目ですね」
「まあね、それはね」
「ですからもっと強くなります」
「まあ頑張ってね、多分君もあの事件知ったね」
劉の方から言って来た、その夜の街を歩きながら。
「そうだね」
「はい、実は」
「私のことも誰かから聞いたかな、部長かな」
「それは」
「まあ聞かないよ、とにかくね」
「ああした事件が二度と起こらない様に」
「しないといけないね」
劉は前を見つつ自分の横にいる曹に話した。
「本当にね」
「全くですね」
「その為にはね」
「強くならないと駄目ですね」
「市民を守る、そして何よりも悪い奴等に悪いことを起こさせない」
「僕達が強くなって」
「そうだよ、強い警官を見たら悪い奴は怯むから」
それで悪事をしようという気持ちをなくすからだというのだ。
「警官はまず強くあること」
「それが第一ですね」
「私はそう思うよ」
「だから僕も」
「そうなんだね、じゃあね」
「はい、強くなります」
「強く正しくあれ」
劉はこうも言った。
「警官はね」
「市民と治安を守る為に」
「そうならないと駄目なんだよ、ではね」
「これからもですね」
「私は強くなるよ」
「じゃあ僕も」
曹も決意した、それでだった。
彼はこの日からもだった、修行に励んだ。そして劉と同じ様に強くなった。それが彼の選んだ警官としてのあり方だった。
強い警官 完
2015・6・24
ページ上へ戻る