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強い警官

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第一章

                 強い警官
 台北市警の劉国忠警部はとにかく強い、ただ腕っ節が強いだけでなく。
 拳法も学び技も持っている、しかも勇敢で危険な状況にも真っ先に飛び込む。
 外見は爽やかな顔立ちで目も優しい、眉は太くよく動き。
 髪は黒髪をセンターで分けている、一八〇を超える長身で身体は引き締まっている。
 台北市警きっての猛者であり上層部からも頼りにされている、だが。 
 その彼にだ、新任の曹林補は昼食の時に食堂で食べている劉の向かい側の席に来てそのうえであえて彼に尋ねた。
「あの、いいですか?」
「どうしたんだい?」
「はい、警部は何でお強いんですか?」
 こう問うたのである、ダイレクトに。
「その体格もですし腕力も強いですし」
「トレーニングはしているからね」
「それで拳法もされてますよね」
「それもトレーニングの一貫だよ」
「射撃も凄いですし」
 劉はこちらでもだ、かなりのものだ。
「毎日努力されてですか」
「私だってね」
 笑ってだ、劉は曹に答えた。
「最初からそうじゃなかったよ」
「最初はですか」
「そうだよ、もう警察に入った頃はね」
 それこそというのだ。
「大学を卒業したばかりで」
「確か大学院まで出ておられますよね」
「そうだよ」
 台湾は学歴社会だ、それで大卒でも甘く見られる風潮がある。大学院まで出たり海外留学もしていないと駄目と思われるのだ。
 それでだ、劉もだったのだ。
「大学院も出てね、その間ずっとね」
「勉強ばかりだったんですか」
「トレーニングなんてね」
 それこそというのだ。
「拳法なんてとても」
「そうだったんですか」
「腕立て伏せすらしていなかったよ」
 トレーニングの基本中の基本であるそれすらというのだ。
「ストレッチもね」
「じゃあ本当に身体を動かすことは」
「していなかったよ、背は昔からあったけれどね」
「それ本当ですか?」
 曹は昼食の麺を食べつつ驚きの顔で劉に尋ねた。劉はその体格の為か御飯に肉に野菜にだ。ふんだんに食べている。
「昔の警部は」
「うん、そのことは刑事部長が一番知っておられるよ」 
「部長が」
「その頃からの付き合いだからね」
 その部長とは、というのだ。
「その時の私のことを聞くといいよ」
「それじゃあ」
「本当に今の私とその時の私は違うからね」
「そんなになんですね」
「うん、聞けばいいよ」
 劉は笑いながら曹に答えた、それで実際にだった。 
 曹は今度は刑事部長に聞いた、お互いにプライベートの時に。
 彼は私服で、黒い髪を下ろして今時の台湾の若者に戻った姿でだ。中年のやや太った紳士といったっ外見の部長に酒の場で聞いた、夜の台北の屋台でだ。台湾は屋台が非常に多く台北も屋台の街である。
 そこでだ、曹は部長に横から聞いた。
「あの、劉警部ですけれど」
「ああ、あいつは私の後輩でね」
「警部が警官になられてからのお付き合いですよね」
「いや、高校からだよ」
「その時からですか」
「二年後輩だったんだよ」
 部長のというのだ。 
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