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ポケットモンスター 急がば回れ

作者:おうーん
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21 シルフカンパニー

ブルー「ここは……?」

グリーン「クチバだ」

グリーンとブルーはシオンタウンからクチバシティのポケモンセンターにテレポートしてきた。

ブルー「そうだ、イエローは!?」

グリーンはうつむいたまま何も言わない。

ブルー「そんな……」

グリーン「何なんだよあのポケモン……
あんなの見たことねーよ」

ポケモンセンターのモニターにライブ映像が映る。
荒れ狂う海に瓦礫がのまれていく様子が上空から見える。
近くの岩山や8番道路に避難する人たちの姿もある。

グリーン「シオンタウンがなくなっちまった」

ブルー「じゃあイエローも……」

モニターにはシルフカンパニーの屋上に降りる人型の影が映っている。
この影と今回の一件と、そしてヤマブキ封鎖との関連はあるのだろうかとキャスターは告げる。

ブルー「ロケット団の仕業ね!」

グリーン「あのおっかねえのがロケット団のポケモンだっていうのか?」

ブルー「そうとしか考えられないわ。
きっとイエローもヤマブキにいるのよ。行くわよ!」

グリーンにも行くよう促すが動かない。

グリーン「あのポケモンは強すぎる……俺たちの手に負えない」

ブルー「イエローが心配じゃないの?」

グリーン「そういうのは警察にでも任せときゃいーだろ」

ブルーはポケモンセンターを出る。
イエローのこともそうだが、ブルーはヤマブキシティにいる友達のことも心配だった。
6番道路を経てヤマブキシティのゲートに着く。

警備員「私は真面目な警備員。
はー、喉が渇いた。おっとそっちは今通行禁止だよ」

ブルー「そう来ると思って、これ持ってきたわよ」

警備員「あっ、それは……美味しそうなおいしい水!
えっ、くれるの? サンキュー!
ゴクゴク……ヤマブキシティに行くなら……ゴクゴク……通っても……」

ブルー「そうそう、それでいいのよ」

警備員「いいわけねーだろ!
なんで水なんだよ!
どうせ金ケチって自販機でいちばん安いの選んだんだろ!
ミックスオレ買ってこいや!せめてサイコソーダお願いします!」

ブルーは追い返される。
財布を確認すると、10円玉と1円玉が数えるほどしかない。

ブルー「そういえば地下通路があったわね」

そこには私有地につき立入禁止と書かれた看板が立っている。
地下鉄建設中に事件があり計画は凍結され、今はハナダシティからクチバシティを繋ぐトンネルだけが残っている。
妙な噂も立っていて誰もそこを通ろうとはしない。

ブルー「行くわよ」

薄暗い道を進んでいく。
やがてちょうど中間あたりにさしかかる。

ブルー「この上がヤマブキね。
お願いっ、ゲンガー!」

ゲンガーがモンスターボールから出てくる。
暗闇にゲンガーの鋭い眼光とにやりと見せる歯が浮かび上がる。

ブルー「なんか不気味ね……
まあいいわ、指を振って何か凄い技で天井に穴を開けるのよ!」

ゲンガーの指を振る攻撃。
ゲンガーの跳ねる!
しかし何も起こらない。

ブルー「なにピョンピョン飛び跳ねてるのよ……
あんた真面目にやりなさいよ! もう1回!」

ゲンガーの指を振る攻撃。
ゲンガーの毒ガス攻撃!

ブルー「ちょっとゲンガー、あんた何したの!?
息が苦しい……」

地下通路に毒ガスが充満する。
それを吸ったブルーは倒れてしまう。
その後もゲンガーは指を振る攻撃を続け、技ポイントが無くなったらブルーのバッグを漁ってピーピーエイドを勝手に使い、28回目でやっと穴を掘るを引き当てる。
そして天井を掘り進んでいき、地下からのシルフカンパニー本社の侵入に成功する。

お姉さん「疲れてるみたいよ!
仮眠室で休んでいったら?」

優しそうな女性の声が朧気に聞こえる。

ブルー「ここは……?」

お姉さん「シルフカンパニー本社の9階よ。
この子があなたをここまで連れてきたみたいね」

隣のベッドにゲンガーが座っている。

ブルー「そうだ、あたしは毒ガスを吸って……」

お姉さん「毒ガス? ロケット団がまた悪さしてるのね」

ゲンガーが撒いたとは言わなかった。

ブルー「あの……ここにあたしと同じくらいの歳の男の子が来ませんでしたか?」

お姉さん「赤い帽子をかぶった子が来たわよ」

ブルー「レッドが……?
黄色い髪の男の子は?」

お姉さん「さあ、そんな子は見てないわね」

ブルー「そうですか……」

お姉さん「その子もロケット団を倒しに来たの?
レッドって子もそんなことを言って社長室へ行ったわ」

ブルー「来たかはわからないけど……行かなきゃ!」

ブルーはベッドから飛び起きる。

お姉さん「気をつけてね」

がらんとしたビルの廊下を歩いていく。
ふと窓の外を眺める。
建物の中も外もロケット団員は見あたらない。
以前ヤマブキシティに来たとき、ロケット団員が街に溢れかえっていたのが嘘に思えるほど誰もいない。
奇妙な静けさの中、ブルーは社長室の扉の前まで来る。
念のためノックをして開ける。

ブルー「あれ? エリカさん?
どうしてここに?」

エリカ「あらブルーさん、お久しぶりでございますわね」

エリカの他には中年の男性と若い女性がいる。

サカキ「ほう、知り合いか?」

エリカ「はい、会長」

ブルー「会長!?」

エリカはサカキを示す。

エリカ「こちら、シルフカンパニー会長のサカキでございます」

サカキ「よろしく」

立ち上がって握手を求める。
ブルーは畏まった様子で握手する。

エリカ「こちらは秘書のナツメ。
ヤマブキジムのジムリーダーでもあります」

ナツメ「あなたとは前に会ってるわね」

ブルー「あ! あのおじさんの家で!」

エリカ「そしてわたくし、同じく秘書のエリカでございます」

ブルー「エリカさんも?
ジムリーダーで、しかもこんな一流会社の秘書なんてすごいわ!」

エリカ「いえいえ、そんなことはございませんわ」

ブルー「それに生花教室の先生でもあるし、ナツメさんも美人で超能力も使えるなんてかっこいいわ!」

ナツメ「そう? ありがとう」

エリカ「いえいえ……」

サカキが咳払いをする。

サカキ「女性だけで盛り上がっているところ悪いが」

エリカとナツメは秘書の顔に戻る。

サカキ「ブルー君といったか。
アポ無しで何の用だね?」

ブルー「あの……赤い帽子をかぶったレッドという男の子と、黄色い髪をしたイエローという男の子はここに来ませんでしたか?」

サカキ「レッドという少年ならさっきまでここにいたな。
イエローという少年は来ていない」

ブルー「そうですか。
レッドはどこへ行きましたか?」

サカキ「さあ……
ロケット団を追っ払ったらどこかへ行ってしまったよ。
優れたポケモントレーナーだった。
彼はシルフを、いやヤマブキを救ってくれた英雄だからせめてお礼をしたかったのだがね」

ブルー「そうですか、もう行っちゃったんですか。
じゃああたしはこれで……失礼しました」

サカキ「待ちたまえ」

背を向けるブルーを止める。

サカキ「実は私も君に用があるのだよ」

ブルー「えっ?」

サカキ「我々は君によく似た少女をロケット団から保護してね。君に会いたがっているのだよ。
彼女に心当たりがあるかな?」

ブルーは、はっとする。

サカキ「入りたまえ」

奥の部屋からブルーと瓜二つの少女が現れる。

ブルー「イミテ!」

イミテはどこか不安な様子でブルーを見ている。 
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