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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第40話:誑し・誑させ・誑させず

(サンタローズ)
ポピーSIDE

何だと!?
あのリューナがまだ膜付で、この真面目っ()フレイの方が既に開通工事完了だとは!!
世の中とは皮肉なモノだ(笑)

「えぇぇ~~!!?? 意外にフェルマー君は手が早いー!」
「あの……止めて下さい……恥ずかしいですから……」
一番驚いてるリュリュが、彼の股間を凝視して叫ぶ。

「もう、止めてよお姉ちゃん!」
大切な彼氏を守るのは、既にリュリュより大人(肉体的)なフレイ。
姉を押し退けると、“ギュッ”と彼を抱いて遠離る。

「だって……何時も『不純異性交遊は最低!』ってな感じで私をバッシングしてたのに、意外にあっさりヤリマン女に変貌するから……」
自分の妹捕まえて『ヤリマン女』は無いだろう……

「失礼な事言わないでよ! ヤリマンじゃないわよ、フェルマー一人だけでしょ! それにお姉ちゃんは自分の恋が“不純”じゃないと思ってるの? 対象相手は実父なのよ!? 自覚ないの? 馬鹿なの!? ラングストンさんの様なフリーの男性に恋してるなら応援するし……百億歩譲って、ウルフさんの様な彼女持ちに恋心抱いてても、ここまで冷ややかな目では見なかったわ。でも、現状は如何よ!? 選りに選って実の父親よ!? その人とお母さんがお姉ちゃんを作ったのよ! 憧れるだけで押さえとけば良いものを、馬鹿じゃないの!」

凄い。
ここまで冷やかされ続けた為、鬱憤が溜まり……そしてリュリュの食いつく様な彼氏(の股間)への視線で、一気に爆発したみたいだ。
この捲し立てる様なツッコミの応酬は、我が家でも1.2を争うレベルだろう。

「酷いフレイちゃん(涙)」
妹に泣かされたリュリュは、これ幸いとお父さんに抱き付こうとする……が、ヒラリと躱されシスター・フレアへ抱き付いた。

「あぅ……酷いお父さんも」
あ、嘘泣きだった。

ポピーSIDE END



(サンタローズ)
サンチョSIDE

何やら外が騒がしくなってるので、妻のレミとマーサ様と共に何事かを確かめに外へ出る。
するとそこにはリュカ様を中心に、シスター・フレア、リュリュ、ティミー様、アルル様、ポピー様、コリンズ様、フレイ……それと村の農園の息子フェルマー君が、騒ぎを起こしていた。

「一体何をやってるんですかリュカ?」
「あ、ヤベェ……うっせー婆さんに見つかった!」
全く慌てた素振りも見せず、マーサ様登場を笑顔で受け入れるリュカ様。

「息子が問題児だから“うっせー婆さん”なんです。いい加減“大人しい婆さん”に変身させてくれませんか?」
遠い昔に魔族やエルフの血が混じってるマーサ様は、何時まで経ってもお綺麗で、『婆さん』等という言葉を使うのはリュカ様だけ。

「やだなぁ母さん。母さんの性格上“うっせー”のは治らないよ。でも大丈夫……ほら微笑んでごらん。あっという間に“うっせー美女”に大変身☆」
そう言うとリュカ様は、マーサ様の右頬に手を這わせ口づけする様な勢いで顔を近づける。

「……………」
「いいなぁ」
そのスマートな動作に、マーサ様も思考が停止したらしく、リュリュの一言がなければ、ウットリし続けただろう。

「ちょ、リュカ! 冗談は生き方だけにしなさい」
そう言ってリュカ様を押し退けたマーサ様の頬は、初めてパパス様とキスをしたときのように上気しておられました。

「ところでリュカ様……本当に何をして居られたのですか?」
「うん。僕はナニをしてただけなんだけどぉ~……子供達は、フレイの彼氏をヤジりに来てたみたいだね」
そう何時もの口調で告げると、ファルマー君を我らの輪の中央に押し上げ、フレイと交互に視線を交わす。

「まぁそうですかフレイ。貴女にも彼氏が出来たのですね?」
マーサ様が嬉しそうにフレイを見詰めると、フレイもフェルマー君も慌ててお辞儀をした。
ふむ、どうやら良い子のようだ。

「でもねフェルマー……私の孫娘の彼氏になるのは大変よ。なんせ父親が……」
皆の視線が一人に集まる。
当人は右手をサムズアップさせ顔の左横に掲げると、爽やかな笑顔で応えてみせる。

「リュカ……アナタの事を言われてるって解ってる?」
「解ってる解ってる。そんな事よりさぁ……これから皆で温泉にでも行かない? 僕は親孝行もしたいし、新たなる息子を可愛がりたいしぃ」

「全然解ってねーじゃねぇーか! ウルフ君が呼んでたって、さっき伝えただろ!」
「あぁ……良いよそんな事。MH(マジックフォン)で『温泉行ってきます』って伝えれば、アイツも現地で合流するよ。彼女2人連れて……あ、3人目を連れてきたりして。あはははは」

え!? あの小僧、新たに女を作ったのか!?
そんな情報は聞かないが……
それともリュカ様の冗談か?
何時もこんな感じだしなぁ……

「責務を放っておいて温泉になんて行ける訳ないでしょう!」
「大丈夫だよ。ウルフは優秀だから」
マーサ様の小言を無視して、リュカ様は懐からMH(マジックフォン)……の前に大根(!?)を取り出し、後にMH(マジックフォン)を取り出して通信を開始する。

『あ、リュカさんだ。如何しましたか?』
「あ、うん。親孝行の為にこれから温泉旅行に行ってくる」
程なくMH(マジックフォン)に出てきたウルフに向かい、何気ない口調でこれからの予定を告げるリュカ様。

『はぁ!? お前、何言ってんの? ……ちょっと、お前の馬鹿息子出せ!』
ウルフの無礼な物言いに、リュカ様は肩を少し竦めただけでティミー様にMH(マジックフォン)を託す。
『おい馬鹿息子。お前、俺の言付けをちゃんと伝えなかったのか!?』
と些か憤慨。

「僕は君が言う程の馬鹿息子じゃないから、君からの言付けはちゃんと伝えたよ。でも、あの馬鹿親父は理解しないんだよ。解るだろう、君なら」
『なるほど……失礼しました真面目息子さん。では改めて馬鹿親父に代わって下さい』
そして、またリュカ様に託されるMH(マジックフォン)

『おい馬鹿親父。早く帰ってこい馬鹿。然もないと、お前の行動を奥方に密告(ちく)るぞ!』
「ふざけんなアホ。ビアンカにも参加して貰うんだから、お前が温泉までエスコートしてこい! 無礼は許さんぞアホ」

『テメーが帰ってこい馬鹿! そして仕事を片付けろ馬鹿! それから温泉にでも、風俗にでも行け馬鹿!』
基本的に言いたい事を言うウルフ。だからリュカ様にも信頼されてるんだろうが……良い気分ではない。

「フェルマー……こんな大人にはなるなよ。悪い大人の見本だからな」
最も悪い大人の見本が、純真無垢な少年を使って駄々をこねる。
それが良い大人だと思ってるのですか、リュカ様?

『それがフレイの彼氏か?』
「そうだ。お前と違って良い子だぞ!」
リュカ様とも違って……ね。

『よし、フェルマーと言ったな少年』
「は、はい。初めまして……お、俺……フレイと『そう言うの良いから聞け!』
新たな大人の登場に緊張した感じで挨拶してたフェルマー君だが、それを遮り何か続けるウルフ。

『今すぐ、そのオッサンに抱き付いて“パパ! 皆の為にお仕事を頑張って下さい。僕の望みはパパが頑張ってお仕事する事ですぅ”って言え! ほれ、言え!』
「えぇ!? い、いきなり……そ、そんな……だって……」

『何だ……結局お前もフレイの身体だけが目当てなんだろ! だから未来を確定するが台詞を、皆の前で言えないでいる。おいフレイ、この男は止めた方がいいぞ』
リュカ様が偶に嫌いな貴族相手にする心底腹立つ口調を、この若造は見事に真似する。

「ち、違いますよ! 俺はフレイを愛してます!」
『ふん、如何だか……』
「い、言いますよ! 貴方の言う通りの台詞を言いますよ!」
『無理しなくて良いぞ……俺も他人の人生設計を壊したくないし』

まるでリュカ様を“パパ”と呼ぶ事が、フェルマー君の人生を台無しにするかの様なウルフの台詞。
「くっ……パパ! 皆の為にお仕事を頑張って下さい。僕の望みはパパが頑張ってお仕事する事です!」
ムキになったフェルマー君は、強い口調で先程ウルフが言った台詞をリュカ様に抱き付いて繰り返す。

「よ~し、パパ頑張って仕事してくるよぉ! なんせ僕は君のパパだからね!」
『よし、よくぞ言った若人! ようこそ我が家へ……俺と一緒に苦労しような(笑)』
さっきまでMH(マジックフォン)越しにキレていたウルフは、リュカ様と同じく満面の笑みになって返答する。

「じゃぁ僕は帰って仕事するから、今日はこれで!」
ウルフとの通信を素早く切ると、私たちに笑顔で挨拶をして……シスター・フレアには優しくキスをして、ルーラで飛び立つリュカ様。

「もう……あの子は何時もあの調子だ」
間近まで迫られウットリしてた事に憤慨してたマーサ様が、リュカ様が帰られたのを見送って溜息と共に吐き出した。

満更でも無かった様子でしたけど……?

サンチョSIDE END



(サンタローズ)
フェルマーSIDE

「あの……さっきの方がウルフさんですか?」
リュカさんが使用してた不思議な装置に映し出された方を憶測で尋ねてみる。
「そうだ。君と同じで、あのオッサンの娘に手を出した哀れな男だ」
お、俺も哀れって事ですかね?

「はぁ……どんな方なんですか?」
「見ての通り、あのオッサンの考えを他人より多く理解して、阿吽の呼吸で罠を張り巡らせる有能な男だ」
ティミーさん……真面目な顔で怖いですよ。

「罠ですか……怖いですね。俺も気を付けた方が良いのですか?」
「アンタはもう手遅れよ。既に連中の術中に嵌まったわ」
ポピーさん……何を言ってるんですか?

「フェルマー……貴方さっきウルフさんに煽られて、私の父親を『パパ』って呼んだのよ。もう貴方は私と結婚するしか無い……私が酷い女だとしても、貴方が自ら私の父親の子供になると宣言したの。大変よ、これから」

「べ、別に大変じゃないさ! 俺はフレイの事が大好きだし、リュカさんの事も尊敬出来る。ティミーさんも良い人そうで安心出来るし、ウルフさんは……ちょっと怖いかな?」
あとポピーさんも。

「あんなヘタレ怖くないわよ! 世界で一番怖いのは私達の『パパ』よ。アンタも認めた私達の『パパ』が一番怖いのよ」
いえ、ポピーさんも十分怖いです。ニヤニヤ俺を脅す貴女も怖いですよ!

「と、ところで……リュカさんって何を生業にしてるんですか?」
「あらフレイ……彼には話してないの?」
「う、うん……説明が面倒臭かったし、そういうのは追々知った方が良い様な気がしたし……」

「永遠に知らない方が幸せなんじゃないかな? 僕はそう思うよ」
「私もティミーの意見に同意するわ。無理して聞かない方が良いわよフェルマー君」
ティミーさんが意味深な事を言うと、奥様も同意してリュカさんの事を隠そうとする。

「そういう事よフェルマー。私の父親がどんな人物でも、私は私だから関係ないでしょ」
そう言うとフレイは俺の手を取り見詰めてくる。
ズルいなぁ……こんな可愛い顔で見詰められたら、「そうだね」って言うしかないだろ……

「やるわねフレイ……」
ボソッとポピーさんの言葉が聞こえてきた。
どうやらまたしても俺は罠にかかってしまったらしい。

この家族、皆怖いぞ!

フェルマーSIDE END



 
 

 
後書き
次話は、皆様待望の“パンツ話”です。


ってか、パンツ話って何だ!? 
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