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怖い家

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2部分:第二章


第二章

「今回はですね」
「話があるのか」
「はい」
 今度の問いには素直に答えてみせる。
「その通りです。実はですね」
「聞いてやる」
 ここで向こうからこの言葉が出て来た。
「御前の話聞いてやる。来い」
「来いと言いますと」
「だから話を聞いてやると言っているんだ」
 また言ってきた。今気付いたが初老らしき男の声だった。低く割れた感じのあまりいい意味ではなく実に耳に残る声であった。
「御前の話。だから玄関の中まで来い」
「宜しいのですね」
「俺がいいって言ってるんだよ」
 またしても随分とぞんざいな物言いが返って来た。
「この俺がな。だから入れ」
「わかりました。それでは」
「ただしだ」
 だがここで声はまた偉そうに言ってきたのだった。
「下らん話はするな」
「それは勿論」
 自分の話術には自信がある。だから彼はすぐに答えることができた。
「ではお話を」
「聞いてやるって言ってるだろ。だから入れ」
「はい、それでは」
 こうして彼は玄関の扉を開けて緑の庭を左右に分けている白い道を歩いて家の扉まで来た。扉はダークブラウンで木製だった。この扉もまた実に荘重でいいものであった。
 その荘重な扉を開けて中に入ると。そこにあったのは異様だった。
「・・・・・・・・・」
「来たな」
 異様な男だった。頭は禿げ上がり髪の毛はまばらだ。目は吊り上がり黒い目が不自然なまでに小さい。白いシャツに腹巻を巻き白ブリーフに黒いソックスといった格好だ。色は不気味に黒くそれだけで病気を思わせるものがあった。人相も口が裂け不気味なものがある。
「御前だな」
「はい、私です」
 上村はとりあえずは普通に応対していた。ここでもビジネスマンに徹していた。
「この度はですね」
「御前が今度の敵か」
 男は蟹股のまま彼に言ってきた。彼を睨んだままで。
「また俺を倒しに来たのだな」
「倒す?」
 上村は彼が何を言っているのか一瞬わかりかねた。
「あの、何が」
「誤魔化すな」
 睨みながらまた言ってきたのだった。
「俺の目は誤魔化されんぞ」
「目がといいましても」
「嘘をつけ!」
 いきなり怒鳴ってきた。
「俺にはわかる。御前は敵だ、あの組織の刺客だ」
「組織!?」
 またしても彼にはわからない言葉だった。
「あの、組織といいますと」
「御前はあの影の組織の幹部だな」
「一介の平社員ですが」
 一応は次期課長候補とまで言われている。ゆくゆくは営業部長にも、とまで噂されている。しかしであった。自分の会社が影の組織だとは夢にも思っていない。
「誰でも最初はそう言う」
 男は彼の話を聞いてはいなかった。勝手に自分の言葉を出すだけだった。
 
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