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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第37話:良い娘・悪い娘・普通じゃない娘

(グランバニア城・中庭)
アローSIDE

グランバニア城の中庭の一角には四季折々の植物を愛でながらティータイムを楽しむ為、大きな丸いテーブルと多数の椅子が設置されてある。
そこでは時折、王家の人間が仕事の合間を縫って休憩してるのだが、今日は珍しくアニキも一緒に一服していた。

「ウルフ君が仕事を抜け出して休憩するなんて珍しいね」
「この間のバカンスが良い起爆剤になったみたいです。元々皆優秀だったので、俺が居なくても何とかする術を学んだ……みたいですね」
ティミー殿下の質問にアニキは笑顔で答えた。

「そうだね……父さんは以前から人材育成に力を入れてたし、そんな連中が僕等の部下として頑張ってるんだから、何でもかんでもウルフ君が引き受ける必要はなかったのかもしれないね」
「えぇ……それを周囲に理解させる為の旅行だったのかもしれませんね」

「流石お父さんよね!」
「私もそう思うぅ~!」
「え、あぁ……そうだね。君等的にはそうだろうね」

ティミー殿下が“やれやれ”といった感じで女性二人の言葉に反応した。
アニキは軽く頭を押さえ首を振る。
オイラとしては黙って紅茶を啜るだけ。

何故なら言うだけムダだから。
女性二人の内、一人は……言わずもがなリュリュ姫様である。
抜群のプロポーションと慈悲深く優しい心の持ち主であるが、その全てを残念に変える超弩級の変態(ファザコン)女である。

そしてもう一人は、この家系の女でリュリュ姫と双璧を成す変態(ファザコン)のリューナ嬢である。
リュ-ナ嬢とは、友好国ラインハットに住むマリソルさんという女性とリュカさんの間に生まれた娘で、リューラとは10ヶ月ばかりお姉さんになる女だ。

謎が多い家系だが、その中でも特に謎がある女だ。
何が謎かというと……この女、色っぽい……というやつだ。
オイラも人間になり暫く経つが、外見の美しさというのに理解出来てきた。

そう言う意味ではリュカさんの娘は皆が美形だ。
父親の遺伝子もそうだが、その遺伝子を持つ男の女の趣味がズバ抜けてるのも大いなる影響だろう。
だから人それぞれの趣向の違いはあるだろうけど、外見だけで判断すれば誰を選んでもハズレはない。
内面で選ぶのならマリーは大ハズレだ。

さて、色っぽい事の何が不思議なのかというと……
プロポーションで言うと普通(年相応でリューノより良い感じ)、容姿で言っても普通(まぁリュカさんの娘としては、って意味)、性格で言えばマリーの様なイカレ具合もなく普通。
でも何故か色っぽいんだ。

なので、このティータイム中にジックリと観察したんだ。
……で解った事がある。
それは、彼女(リューナ)の仕草が色っぽいって事だ。

例えば……メイドのマオさんが紅茶と一緒に出してくれたクッキー。
大きさ的には一口サイズで食べやすく美味しい。
オイラもアニキも勿論ティミー殿下も、一個手にしては“ポイ”っと丸々口に入れて食す。

それは隣に居るリュリュ様も同様だし、マリーやリューノにリューラさえも同じ様に食してる。
マリーなんかは食べカスをポロポロ溢し、それを手で払うだけ。
お淑やかさも上品さもない。

だがリューナ嬢は違う。
一口サイズのクッキーを大口を開けて頬張らず三回に分けて口の中に入れ、その際に出るカスもハンカチなどを使い綺麗に処理し、優雅にティーカップを口元へ持って行くのだ。

マリーが「イライラする食べ方ね!」と文句を言ったが、リューナ嬢は目を細めて微笑みかけるだけで反論をしない。
それを見たマリーは「マリリン・モンローみたいな面しやがって」と意味不明な憤慨をしてた。
だから思わず皆で「「「マリリン・モンローって誰?」」」って言ったよ。

そしたら「良いんだよアンタ等は知らなくて。でもお父さんに言ったらウケるわよ。『口の横にホクロ描いちゃおっか(笑)』とか言って」と教えてくれた。
うん。今度言ってみよう。

さてさて話を元に戻すが、何故に彼女(リューナ嬢)がグランバニアに居るのかと言えば……
「しかし凄いわねリューナは。あの“魔技高(魔法機械技術高等学校)”に飛び級合格するなんて」
そう、リューナ嬢は難関な魔技高に合格し、来週から半年ズレで入学するのだ。

「ありがとうマリーちゃん。でもお父さんの娘としては、これくらいは頑張らないとって思ってるのよ、私は」
言外に“お前等は迷惑しかかけてない”と聞こえるが、流石はリュカ家の女性だ。
サラッとした一言が実にイタイ。

でも実際に凄い事だとオイラも思ってる。
高等学校へは、義務教育を卒業出来る資格(年齢的にではなく、能力的に)が必要で、尚且つ各高等学校へ入学出来るだけの資格(これも能力的な事)を有していなければならない。

しかも魔法機械技術学は難関中の難関と言われ、知識だけではなく魔道の才能も必要とされる学科であり、創設され10年程経つが、その間に入学者が1人しか出なかった年もある程の難しさだと言われてる。

他の高等学校では、奨学制度枠の選定に頭を悩ませる事があるらしいが、魔技高は合格者数事態が少ない為、奨学制度枠での悩みは少ないらしい。
そんな学校に飛び級で入学出来るのだから、リューナ嬢は間違いなく秀才なのだろう。

だから先程の嫌味にも言い返せず、グランバニアの女性陣は黙っちゃってるんだろう。
でも年上として文句を言っておきたいリュリュ姫は……
「私だって頑張ってるモン!」と反論。
うん。お世辞じゃなく頑張ってるとオイラも思うよ。

「そうよねぇ……リュリュお姉ちゃんは頑張ってるわよねぇ……でも、それ以上に迷惑かけてるし、私としては許せない存在よ」
口調も柔らかく、柔和な笑顔で、語りかける様にリュリュ姫へ言い返すリューナ嬢。

「わ、私は……お父さんが好きなだけで……」
「私もお父さんの事は大好きよ。お父さんが私を犯したいと言うのなら、私は喜んで犯されますし、乱暴な性行為が望みとあれば喜んでその行為を受け入れます」

「お父さんがそんな事言う訳ないでしょ!」
「勿論よお姉ちゃん。お父さんは娘の事を大切に思っており、心身に対する暴力は勿論、人生の強制もしてこない心から尊敬出来るお父さんよ」

柔らかい笑顔と口調のまま、リューナ嬢はリュリュ姫を押し込んで行く。
でも彼女の言う“人生の強制”は大きい事なのだ。
オイラは人間になって直ぐにリュカ家に迎え入れられた形なので、感じる事は無かったのだけど、他所の家庭では子供に家業を継がせる事が当然となっている。

つまり、漁師の家系に産まれたら将来は漁師にならなければならず、農家なら農家、鍛冶屋なら鍛冶屋と職業選択の自由があまりないのだ。
現にオイラの友達には『どうせ将来は大工を継ぐんだし、勉強なんて無意味なのに』と言ってる奴が居る。

「だから私はお父さんが好きなのよ」
「小さな女の子が『パパ大好き。将来はパパのお嫁さんになる♥』って言ってるのなら微笑ましくて文句もないけど、いい年して言わないでもらいたいのよ。解るかしら?」
イタイよ、リューナさんイタすぎるよ。

「そう言うアンタは如何なのよ。アンタだって“パパ大好き派”でしょ」
迷惑度で言えば1.2を争うマリーが、憤慨気味に言い迫る。
「えぇ私も“パパ大好き派”よ。だからこそ努力して勉強したり、お父さんを安心させるべく彼氏を作ったりしてるのよ」

「え、リューナって彼氏居んの!?」
「居るわよぉ~、ラインハットにだから遠距離になっちゃって、これから如何なっちゃうのか解らないけどぉ……」
変態的なファザコンだと思ってたけど、重度のファザコンなので父親の為に彼氏を作っておいたみたいだ。

「どんな男なんだ、それは?」
オイラを彼氏と認めてくれているリューラが、チラリとこちらを見てからリューナ嬢に問いかける。
オイラと比べるつもりかな? だとしたらオイラはまだまだなので恥ずかしい。

「ふふふっ……ハインツはね兵士なんだけど、叔父のデルコさんの部下なの。新進気鋭の若手兵士で、将来有望なのよ」
デルコさんというと、リューナ嬢のお母さんマリソルさんの弟だ。

「へ~イケメンなの?」
彼女の話を聞いたマリーが自分の彼氏をチラリと見て尋ねる。
アニキレベルのイケメンは居ないだろう……

「う~ん……そこそこかな? でもイケメンだったらユリウスね。彼だったらウルフさんにも対抗出来るわよ。まぁ頭は悪いけど……」
ん? リューナ嬢の彼氏の話なのに、何故別の人物を引き合いに出した?

「まぁ頭の良い彼氏で言えばミヒャエルかな。それでもウルフさんにはおよばないけどね」
「あの、待って。アンタの彼氏の話をしてるのよね? ハインツが彼氏として、そのユリウスとミヒャエルは誰よ!?」

「誰って……彼氏だけど?」
「ん? その彼氏って多重人格者で、ハインツと名乗ったりユリウスやミヒャエルと名乗ったりもするって事かしら?」
た、多重人格者って言葉の響きからヤバそうだな。

「何でそんな危険因子と付き合わなければならないの。別人よ勿論」
相変わらず柔和な顔で語りかけるリューナ嬢に、何だか恐怖を覚えてきた。
「あの……それは3人の男性と付き合ってるって事かな?」
アニキが恐る恐ると言った口調で問いかける。

「いいえ違いますよ」
だがリューナ嬢の答えは否定だった。
それがまた不安を掻き立てる。

「……じゃ、如何いう意味?」
「今は5人の男性とお付き合いしてます。3ヶ月前までは7人居たんですけど、私がグランバニアに留学するって言ったら猛反対して、じゃぁ別れましょって事になりました」

ヤバい。
女版リュカさんが現れた!
男は平気なのか、彼女がこんなんで?

「あ、勘違いしないでよ。私はまだ処女よ。複数の男性と付き合ってると言っても、生涯の伴侶を決める為に、それぞれ違う男性と付き合ってリサーチしてるって事なのよ」
あぁなるほど。それなら男も納得……するかぁ?

「複数の女性と付き合ってる俺やリュカさんは何も言えないけど、それで彼氏達は文句言わないのか? ヤらせてくれないクセに彼女面で品定めだけされてるのって屈辱だと思うんだけど?」
苦笑いで諭す様に話アニキ。

「大丈夫よ、彼女面だけじゃなく彼女としての役目も行ってるから」
「何だ“彼女としての役目”ってのは?」
呆れ顔を崩す事なく質問を続けるアニキ。

「そりゃ勿論……彼達の性欲処理よ」
「「「………………・」」」
……聞き間違えたのだろうか。何か凄くダメな台詞が入ってた気がするが?

「リューナさん。今もしかして『性欲処理』って言った? さっき処女だと言ったのに、男の性欲処理してるって言いましたか?」
「あ、勘違いしないでよ。口や手、時折足とか胸でシてあげてるだけだからね。処女なのは本当よ♥」

「「「……………」」」
な、何この女……馬鹿なの? (すげ)ー頭良いけど、(すげ)ー馬鹿なのですか!?
処女だったら如何な状態でも許されると思ってるの!?

(ドンッ!!)
「何考えてるんだ君は!? そんなふしだらな関係が許される訳ないだろ!」
皆のお兄さん、ティミー殿下がテーブルを激しく叩いて怒った。

あまりに強くテーブルを叩きすぎて紅茶を溢しちゃうくらい怒った。
それを見たマオさんが素早く後片付けをするが、殿下はそれにすら気が付かないくらい怒ってる。
殿下は真面目だし妹思いだから怒るのは当然だ。

「父さんは……その事を僕等の父さんは知ってるのか!?」
知らないんじゃないかなぁ?
知ってたら、いくらリュカさんでも怒ってるだろうし……

「知ってるわよ。お父さんには隠し事しないし、その事を含めて恋愛関係では相談に乗ってもらってるから」
知ってんの!? 何で止めないの? 父親として如何なの!?
ってか、それを含めた恋愛相談って……

「あのクソオヤジ、何考えてんだ!」
皆がドン引き状態で佇んでると、ブチ切れた殿下が腰から剣を抜き放ち、猛スピードで室内へと入って行く。
100%リュカさんを探して斬り掛かるつもりだと予想される。

「あの……良いんですか? 殿下を行かしちゃって……」
「どうしようもないだろ……キレたティミーさんを止める事が出来るのがリュカさんだけなんだから。俺等が下手に動いても、痛い思いをするだけだ……」
アニキぃ、そりゃ解ってるけど……

「あの……アルル様が落ち着く様に言えば、殿下も我に返るんじゃないんですか?」
「如何かしらね? ムダかもしれないわよ。 ……それに私もティミーと同じ気持ちだし、止めなくても良くない?」
ダメだ……やっぱりリュカ家の人々は普通じゃない。

そうこうしてると城内(プライベートエリア)から激しい物音が聞こえてくる。
殿下とリュカさんが剣(リュカさんは杖)を交える音。
あ、雷撃が聞こえた……ライデイン(まさかギガデインじゃないよね?)を唱えたらしい。

“ドン”という音と共に殿下が窓ガラスを破って中庭に落下。
空中で器用に体勢を整えると、鮮やかに着地し直ぐさま臨戦態勢。
殿下は自分がブチ破った窓に視線を向ける。

そこにはリュカさんが居り、颯爽と殿下目掛けて飛び降りる。
殿下はリュカさんが着地するタイミングを見計らって斬激一閃!
しかしリュカさんはそれを予測してたらしく、バギマ(風だけ)で空中旋回。

虚空を斬り付けた殿下の後方に回り込み、ドラゴンの杖で竜化!
エビルプリースト戦で化けたドラゴンよりも更に巨大なドラゴンに化けて、殿下を踏みつける。
本気では踏んでないのだろうけど、押さえ付けるのには成功。

「お前、何なんだいきなり!? そんなに王位が欲しいのなら今すぐにでも譲るぞ。父親を殺さなくてもね……」
「そんな物要るか! 僕が欲しいのは常識ある父親だ、この非常識オヤジ!」
殿下……すいません。貴方も十分非常識だと思います。

アローSIDE END



 
 

 
後書き
リュカの娘のひとり、リューナ嬢をピックアップ!
今まで書く事が無かったから、謎に包まれてましたけど、こんな娘です。

次話はフレイをピックアップ!
フレイとはシスター・フレアとリュカとの娘です。
実の姉とは全然性格違うよ。 
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