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首なし屋敷

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2部分:第二章


第二章

「実際にです」
「そうですね。それは確かに」
「そしてです」
 神父の言葉は続く。
「私の名前ですが」
「何と仰るのですか」
「へーシングといいます」
 これが名前だというのだ。
「そして隣にいるのは助手のヴァシェです」
「宜しく御願いします」
 そのヴァシェもまた名乗ってきた。少年のテノールの声だった。
「ヴァシェです」
「わかりました。それでへーシング神父」
「はい」
「あの屋敷の事件を解決して下さるのですね」
「その通りです」
 神父は厳かな声で答えてきた。
「私はその為に来ました」
「左様ですか」
「しかもです」
 神父はさらに話してきた。
「この事件ですが」
「何かお心当たりでも」
「ないわけではありません」
 こう署長に答えるのだった。
「それもあって参ったのです」
「心当たりがですか」
「そうです。ですから余計にです」
「任せて欲しいのですね」
「そういうことになります」
 こう述べるのだった。署長はここで神父がかなり流暢な日本語を話すことに気付いた。日本人のそれと差支えがないまでであった。
「ですから」
「わかりました。それではです」
「お任せ頂けますね」
「事情は後でお話してくれますか」
 条件はつけた。しかし寛大な条件であった。
「事件が解決した後で」
「わかりました。それではです」
「全てが終わった後で」
「お話させてもらいます」
 こう署長に話した。そうしてであった。
「では早速」
「私も」
 そのヴァシェという少年も言ってきた。
「これで」
「お二人だけで充分ですか?」
「充分過ぎる程度です」
 神父はこう署長に答えた。
「むしろです」
「むしろ?」
「この話人が多いと厄介なことになります」
「厄介ですか」
「何しろ相手は人ではありません」
 神父の語るその目が光った。嘘を言う目ではなかった。
「ですから」
「人ではありませんか」
「それもまたお話させてもらいます」
「全てが終わったその後で、ですね」
「はい」
 その通りだというのである。
「その時にです」
「それでは」
 最後にヴァシェが言ってだ。そのうえで二人でその洋館に向かう。洋館の前の首も屍ももう葬られている。ただそこに不気味な洋館が赤い満月を後ろにして聳え立っていた。それ自体がまるで生き物であるかの様にそこにあった。
 その洋館を見てだ。神父はヴァシェに対して言ってきた。彼は神父の後ろに控えるようにして立っている。二人が今いる場所はその門の前だ。
「ヴァシェよ」
「はい」
「感じるな」
 まずはこう告げたのだった。
 
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