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DQNじゃなくてDQMね

作者:PEI
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出鼻を挫く門出

「ぶへぇっ!?」

一瞬の浮遊感のあと、顔面を地面にぶつける俺。
最近顔面を打ち付けることが増えてきた気がしないでもない。

「…っと、ここは――」

ゆっくりと立ち上がり、回りを見渡す。
その場から見た周囲の景色は…

「建物の中?」

更地、と言うには少しばかり整備された石造りの地面。
建物としては機能していないような背の高さほどの壁。
その奥には人が座れそうな木の長椅子が並べられていて、それをたどればこの場の形状が分かるようだが…

「闘技場じゃねぇか」

目の前には覆面被ったムサイおっさんが立ってるし。
その後ろにエビルシャドー×2とマネマネがいるし。

『さぁやって参りましたMB【モンスターバトル】!
それでは早速行ってみよう!レディー、ファイト!』

待てやコラ。俺魔物連れてねぇんだけど?

「どこに潜んでるか分からんぞ!色々やろうぜ!」

テメーも指示だしてんじゃねぇよ殺す気か!

そんな突っ込みをしながらも、突貫してきたマネマネを股潜りにかわす。
つーかMBでマスターに攻撃してもいいの?反則じゃね?

『おおっと!未だに魔物を呼び寄せない挑戦者!一体どうなる!?』

「おいガキ!テメー魔物はどうした!
まさかマネマネが怖くて出せないとか抜かすんじゃねぇだろうな!」

「連れてねえんだよアホンダラぁ!
それくらい分かれやボケナス!」

叫んできた相手マスターに罵倒で返す俺。

『なんと!挑戦者は魔物を連れていない!?
これは有り金半分の罰則でサヨナラか!?』

はっ!?何だその理不尽!
俺の所持金は選別にもらった100Gだけだぞ!

「がっはっはっは!運が悪かったな坊主!
これに懲りたら転移なんてちゃちな真似事するんじねぇぜ?」

………ブチッ

「審判」

『何でしょうか?』

「続行で」

『分かり…はい?』

俺は審判に続行を示し、腰にぶら下げていた木刀を抜く。
そして走りだし、一番近くにいたマネマネを切り刻んでやった。

「食らえ今思い付いた特技!<がむしゃらぎり>!」

縦、横、斜め、切り上げ、きり下ろし、と来て最後に蹴り飛ばすと言う思い付きだったんだけど…

「バカな…マネキチが一撃で…」

そう。一発目の縦斬りでお陀仏してしまったのだ。

「後2匹…お前、飛ぶ斬激を見たことがあるか?」

「お前何言って…」

俺は木刀を帯刀している用に構え、腰を落とす。
所謂居合いの構えな訳だが、こうしないとこの技は発動させられないのだ。(まだまだ未熟だから)

「食らえ…<ギガスラッシュ>!」

一気に抜刀し、目の前を凪ぎ払うように切り裂く。
バチバチと帯電した黄金の斬激が切った形のままに飛んでいき、エビルシャドー2匹を真っ二つにした。

「ひ、ひぃ…」

「はい俺の勝ち」

やり過ぎたかなとは思うけど、理不尽には理不尽で返させてもらう。

『挑戦者の勝利!まさか人の身でありながら魔物に勝つとは、挑戦者は魔物だったのでしょうか!?』

アホ言うな。バリバリの人間だ。

『それでは皆さんごきげんよう!』

「へ?ちょ、連戦は?景品は?」

そして俺はその場から消え去った。









「――で、ここどこだよ」

強制転移から約3分。見知らぬ土地に一人残され、俺は今途方にくれていた。

「大体旅立ちの世界でいきなり闘技場とか聞いたことねぇぞ」

取り合えず今いる場所は草原のような場所。
人っ子一人見えないこの場所で、微かながらに視線も感じる。
敵意や悪意と言うよりも、疑意や観察ともとれるこの感じ…嫌いじゃないわっ!

「取り合えず、仲間探すか…」

そう言って徐に歩き出す。

確か旅立ちの扉で出てくる魔物はスライムかドラキーで主がホイミスライムだったはずだ。
だがホイミスライムはテリーが仲間にしたはずだから居ないわけで、その場所までいけば帰れるよって事なんだろうけど。

「スライム…ふふふ」

諸君。私はスライムが好きだ。
ドラクエ界最弱とされるスライムだが、モンスターズの世界では違う。
最大レベルまであげて配合を繰り返せば、どんなモンスターも最強足り得るのだ。
勿論種族差は出るけどね。

つーことでパーティーはスライム系で統一させよう。
さぁスライムは何処だ。

「じーーー」

「………そうやって口に出しながら凝視するやつ初めて見たぞ」


振り替えれば奴がいた。
黒いフォルムにコウモリの翼をはためかせ、愛着のある顔をしたソイツの名は――

「オイラはドラキーって呼ばれる魔物だ」

いや、知ってるけど。

「オイラ、お前に着いていっても良いぜ?」

俺スカウトしてないんだけど。
つーかコイツやけにフレンドリーだな…何か企んでそう。

「もしよかったら知り合いのところに連れてってやるよ。
そこなら仲間になってくれるやつがいるかもだぜ?キキッ」

魔物ネットワークですかね?

「ふぅん…なら案内してくれるか?」

「ヨシキタこっちだ。キキッ」

こうして先導するドラキーに着いていった。

「訳だが…」

「良くやった同志」
「粋の良いごちそうが来たぞ」
「俺、女がよかったな」
「人間の血なんて久しぶりだぞ」

ワイワイガヤガヤパタパタ…。
一言で言うなら騙された。まぁ予想してたから問題ないんだけど。

「あー、一応聞くんだけど、俺がお前らの餌になるってことで良いのか?」

「その通り!」

「よしギルティ」

―しばらくお待ちください―

「さて、俺の言うこと聞いてもらおうか?」

「は、はい…」

先程まで数十といたドラキー達は、今や一匹になっていた。
何があったかと言えばライディンで消し炭にしてやっただけなんだけど。

「お前、スライムが何処にいるか知ってるだろ」

「ぇ!?は、はい!」

「よし。じゃあそこに案内しろ。そしたら逃がしてやる」

「わ、分かりました!」

はぁ…別に疲れた訳じゃねぇけど、精神的に来るものがあるな…。

「よし、お前の名前はドラこうな?」

「はぇ!?ドラこう…ですか?」

「おう。呼ぶのに名前があった方が良いからな」

「わ、わかりました…」

ドラこう…ドラこう……ふへへへ…とか呟いてるけど、コイツ大丈夫か?




「こ、ここです!」

歩いたのはたった数分。
湖の畔にあるちょっとした広場みたいな感じのところだった。
そこにはかなり沢山のスライムがいるのが分かる。

「人間だ…」
「何しに来たのかな?」
「ドラキーもいるよ?」
「裏切り者?」

ひそひそと囁いているスライム達。
やっぱスライムも人間食べるのかな?

「なぁ!俺のパートナーになってくれるやつは居ないか!」

俺は皆に聞こえるように声を張り上げる。
スカウトとはちょっと違うけど、勧誘するに越したことはないのだ。

「何か怪しくないか?」
「おい、お前行けよ」
「ええ?そう言うならお前だろ?」
「だって怖いし…」
「僕達そんなに強くないし…」
「人間一人なら皆でかかれば勝てるんじゃないか?」

「あー、一応言っておくが、お前たちに危害を加えるつもりはない。
ただ俺はパートナーになってくれるスライムを探してるだけなんだ」

何か話し合いがどんどん怪しくなっていくので、先に釘を指しておこうと思う。
流石にスライムに手をあげるのは嫌だからな。

「…ん?」

ふと、一ヶ所に固まるスライム達から離れた場所に、ポツンと座り?込むスライムか
居るのに気がついた。
見たとこハブにされてるようだが、仲間内にもこう言うのがあるのか?
俺はそのスライムの元へ歩き出した。

「ピィ!?」

怖がられた…つーか鳴き声ピィって…他のやつならピギーなのに。

「君、俺のパートナーになってくれないか?」

俺はなるべく目線を合わせるために座り込み、スライムに話しかけた。
スライムは体を震わせながら恐る恐る口を開く。

「ぼ、僕は皆と違うし…力だってないし…」

「俺といれば強くなれるよ」

「でも、僕は普通のスライムじゃないって…」

「ん?ちょっと動かないでくれよ?」

「え?」

俺は一声かけて目の前のスライムのステータスを見てみた。

シャイニングスライム

HP 20 MP 38

力 7
身の守り 21
素早さ 214
器用さ 104
賢さ 38

特技
スラフィーバー
マネマネ

「マジか…」

「うう…やっぱり「スゲェじゃん」……え?」

「君がいい。君に決めた!俺のパートナーになってくれ!」

「あう…でも…」

困った顔でちらっとスライム達をみるシャイニングスライム。
スライム達は特に気にもとめず、行くなら行ってしまえと言わんばかりの雰囲気だ。

「あの…よろしくお願いします…」

「ああ!じゃあ名前を決めないとな!」

さて何が良いだろうか?
シャイニングスライムなんて聞いたこともないし、スラおとかスラぼうとかは安易すぎる。
初めての仲間、それもパートナーなんだから確実な名前をつけてやりたい。
シャイニング…光…うーん…輝きだろ?…テル…はなんかハゲのイメージがあるし、他になにか…………………………………………よし。

「君の名前はシャインだ!俺はケント!これから宜しくな!」

「シャイン…僕の名前…シャイン………~!よろしく!ケント!」


こうして俺のパートナーが決まった。
後は誰かと戦って強くなればオールオッケーだな!
 
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