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たまかりっ! ~小悪魔魂奪暴虐奇譚~

作者:ぜおぅ
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「ふーん。つまりこういうことだな。普段は信徒どもが入り浸ってるせいで呪殺系の儀式しかできないから、全員揃って遠出しているスキに自分の願いを叶えたくてアタシを召喚した、と」
「はい。私の呪術は、歴代トップクラスの技量だとお母様は仰っていました。でも任されるものはいつもそれだけなのです。他事への力の使用は固く禁じられていて……でも、今なら、と」
「ふむふむ。なかなかいい判断だ」
 とりあえず、脳内状況整理は完了したようです。魔女の過去や現状になどこれっぽっちも興味はありませんでしたが、時間稼ぎのために一通り聞いてみた次第。
「だから結界壊しても呪いが周囲に撒き散らなかったワケか。つーか遠く離れた程度でトラップの効力なくなるとか魔術の腕が知れるぜ。むしろ、離れたら離れた分だけ呪いも強くなるもんだろうに」
「魔女の血も薄れたもんだ」とこぁは情けなさにため息を吐きました。
 基本的に、魔女や魔法使いといった生命体は一蓮托生ケースを好みます。言ってしまえば自爆ストーン系。自分の作品が破壊されでもしたなら、壊した側も巻き込んで、速やかに爆発四散が常道です。
「え……破壊してしまわれたのですか!? どどど、どうしよう……私、結界とか張るのやったことないのに……」
「あーダイジョブダイジョブ。お嬢ちゃんくらい魔力があれば、ちゃんと勉強さえすりゃチョチョイのチョイさ」
「ほんとですか? 良かった……」
 ほう、と息を吐く魔女見習い(格下げ)。
「ホントホント。……で、そろそろ本題に入ろうかと思うんだけど。願いは、本当にそんなんでいいの?」
「そんなんって! わ、私にしてみれば一世一代なんですけど!」
 顔が真っ赤です。本当に真剣で、本当に恥ずかしいのでしょう。
 こぁから見ればくだらなさ100%ですが、そういうものの理解が及ぶヒトから見れば純度100%っぽいのかも? 魂賭けるほどかどうかはともかく。
「自分で声かけてみればいーじゃん」
「そんなっ」
 無慈悲な言葉に青ざめる見習いさん。こぁの言も正しいようでいて、単に裏を知っているからこその大上段にすぎません。見習いさんは当然反発しました。
「そんな勇気があればとっくにしています!」
「言い切りやがった……」
「いいですかこぁ様。私とあの方はその……幼知り合いなんです」
「どっかで聞いたな、その単語」
「私と彼はそれこそ幼稚園時代から知り合いなんです! でも、15年以上同じ空間で育ち続けているのに、話したコトなんか片手の指で数えられるくらいしかありません。これを幼知り合いと言わず何と言うのでしょう!」
「その説明もついさっきどっかで聞いたな……」
 殺害依頼と縁結びという差こそありますが、悪魔召喚という手段にこの言語センス。かなりの似た者同士だとこぁは直感しました。
「まぁヤツもまさか依頼対象がモノホンの魔女だとは思いもよらなかったろうけど……」
「それでですね?」
 こぁの独り言は当然のようにスルーされ、見習いさんが続けます。
「幼稚園の後も小中高大と一貫して同じ学校に入学し、同じクラスになれるようにずーっとお呪いをして、ライバルになりそうな女の子たちをことごとく皆殺しにしてきたのですけれど、それでも私、勇気を出すことができませんでしたの。
 そしてこの度、ついに私たちの大学卒業が目前に迫ってしまいました……。このままでは、世界で最も美しく気高いあの方が、学舎から汚らしい俗世へ飛び出してしまいます。そうなれば、きっと世に溢れる薄汚い牝狐どもに狙われてしまうのですわ。そして、純粋無垢なあの方はコロリと騙されて……ああ、ああ!」
 ギリギリと歯噛みしながら魔女さん(格上げ)。
 絶望の未来でも幻視したのでしょう、目からは冗談と比喩表現を抜いた血涙をはらはらとこぼしております。リアルで見るとエッグイ。
「あーええと。美しさがどうのこうのはともかくだな、あいつそんなモテないと思───」
「あ?」
「ぁ、ぃゃ、なんでもないです」
「そうですの」
 にっこり。
 顔面を鮮血で染めながら、魔女さんは友愛の笑みを浮かべます。
「とにかくですわ。せっかく召喚が成功したのですし、このお願いを聞いていただきたいのです」
「お、おぅ……」
 真新しいタオルでごしごしと顔を拭き洗いつつ、魔女さんが言います。こぁさん押され気味。
「…………ま、いーか」
 しかし、こぁはこぁでめげません。
 話を整理すればとても単純なお話なのですから。
「とにかく、フニャチ……そいつとお嬢ちゃんをくっつけりゃいーんだな? かんたんかんたん」
「本当ですのっ!?」
 なにしろ、もともと彼女たちは両想いなのです。共に声もかけられないヘタレの極地というだけで。
 ならば、順序さえ守ればいいだけの話でした。
「ホントさ。アタシに任せとけばぜーんぶ上手くいく」
「よろしくお願いします!」
「ほんじゃ、早速」
 となると、残すところはひとつだけです。
「契約といこうか」
「は、はい。ええと、血で魔法陣を描いたりすればいいんですの?」
 魔女さんが儀式用の短剣を抜きます。
「バッカおまえ、そんなもったいないことしてどうすんだ。血はちゃんと身体の中を巡らせておけよ」
「はぁ」
 これもよくある勘違いのひとつです。
 魔術の儀式で血がブシャー内蔵べちゃー首スパーンとかありますが、あれは遥か過去の不勉強がカタチとして残ってしまったモノです。
 本来、血や魂といった悪魔に捧げられるものはすべて、『生きた人間』が所持しているからこそ価値があるのです。正確に言えば、体内を巡り、活きている状態に価値があります。外部に漏らしたらダメなのです。
 どんな贅沢な料理でも、地面やトイレの床ににブチ撒けられたら食べる気がなくなるでしょう? それと一緒なのです。吸血鬼が首筋からごっくんするのは、直接吸収が一番美味しいと知っているからです。
「アタシとの契約方法は───これよ」
「きゃああああっっっ!?」
 暗い室内に乙女の悲鳴が木霊しました。さもありなん。
「こ、こここ、こぁ様……? そそそ、それは……??」
「びっぐ☆こぁ」
 魔女さんの視線は、スカートをめくり上げたこぁの股間にぴったりと張り付いてしまいました。剥がれる様子ゼロ。
 それもそのはず、どこからどう見ても女性であるこぁの股間に、光輝くごっつい得物がくっついていたからです。効果音で表すのなら、ポロンでなくボロリ。ジャーンでなくドドンッな感じ。
「ままま、まさか、こぁ様……」
「おう。おまえの処女、捧げてもらうぜ」
「ちょちょちょ、ちょっとお待ち下さい! 先にも話したように、私の純潔は彼に捧げようと……」
「……可哀想になぁ」
「え?」
 こぁの顔に、それはそれはこぁな色が浮かびます。
「お嬢ちゃんの話を真に受ければ、その彼とやらは女性経験なんか皆無なワケだ」
「当然です! 彼に近づく愚か者はすべてこの私が呪殺してきましたから!」
 魔女さんが「えっへん」と大きなおっぱいを揺らしました。
「ということは彼は、童貞なんだろうなぁ」
「そ、そりゃあ……そうでしょうね」
 妙に生々しい単語に、魔女さんが頬をポッと赤く染めました。
「可哀想になぁ。───初めてのセックスで、自信喪失、か」
「え…………え!?」
 食いつきました。
「そりゃあそうだろう? エロ本やアダルトビデオじゃないんだ、初めての男が女を満足なんかさせられるもんかよ。それにお嬢ちゃんまで初モノとくる。痛くて痛くて、そりゃあ胸に刺さる悲鳴をあげるんだろうなぁ、おまえさん」
「そ、そんなワケないじゃない……ですか」
「痛いぞ」
「うっ」
「いったいぞ、最初は。どうしたって。
 なにしろ自分の体に他人の棒っきれ突っ込まれるんだからな。言っとくが、あっちは初セックスの興奮と勢いで、ちゃんとした愛撫とかガン無視で内蔵ブチ破ってのしかかってくるぞ。マジで。激痛なんてもんじゃねーからな」
「うう……っ。で、でもその痛みがあとあと二人の忘れられない思い出に……」
「忘れられなくはなるだろうがな、残念ながらキレイな思い出にゃならねえよ。それにな、相手がヘタだと二度とセックスなんざヤリたくなくなっかんな。痛いだけだし。本当に痛いだけだぞ? 何度回数重ねようが、ヘタクソが相手だと痛いだけなのが延々続くかんな、あっちが上達するか飽きるまで」
「ううう~~っ! ででで、でも! もしかしたら、彼ならいきなり上手だってことも……!」
「七割、だそうだ」
「は?」
「統計で、世の七割の女性が生涯のセックスで絶頂に達したことがねーんだと。キモチ良くなるだけでもハードル高ぇーぞ」
「………………」
 どこで仕入れたのか、現代での性知識を玄人のように語るこぁさん。赤く染まっていた魔女さんの顔が、絶望でみるみる青くなっていきました。
 無理もありません。現実を知らない夢みちゃってる処女ガールが現実を突きつけらればこうもなります。おう、童貞もだかんな。目ェ逸らすなよ。
「そこでアタシだよ、お嬢ちゃん」
「……え?」
「アタシがセックスのなんたるかを教えてやるってんだ。男の悦ばせ方を教授してやる。契約のついでにな」
「で、ですが……結ばれた時に処女を捧げられないと、その……」
「大丈夫、気付かないから」
 本日二番目のこぁスマイルが炸裂しました(一番はパチュリーへと)。
「よく処女がどうのって言うけどな……実際見分けなんかつかないから。ほんのちょっぴり痛がる演技をしてあげてごらん? 男のコは大興奮よ。
 そんでもってお嬢ちゃんがちょっとイッた感じで演出してごらん? 感無量よ? 男の自信マキシマムさ。
 そんでもってちょっとづつ導いてやるんだ、時間をかけてもいい、おまえも相手もキモチ良くなれるようにじっくりとな。そんでやっとこWinーWinってやつだ」
「で、できますかしら、そんなこと……」
 魔女さんの言葉に、こぁは我が意の成功を見ました。
「できる! というかこれからできるようにする!」
 太鼓判を押します。
「あ、あの……こぁ様?」
「なぁ~にぃ?」
「こぁ様は、その……インキュバスやサキュバスの類いであらせられるので?」
「いや別に? というか悪魔ってのは基本的にみんな、おまえら人間の望みを叶えるためにいるんだよ、善悪と規模問わないから代償が高くつくってだけで。
 だから普通は契約者の性別や好みに合わせて性別や形態なんかも変えて顕れるもんなんだ。それをそっちが勘違いして勝手にそう分類しようとしただけで、『悪魔である』以上の区別なんかないさ。
 アタシは(正確にはパチュリーが)このカタチを気に入ってるから変えてないだけ。問題ないだろ?」
 魔女は驚いた表情でその説明を聞いていましたが、最後には納得できたようで「なるほど」とうなずきました。
 彼女にしてみれば、こぁに異性のカタチを取られる方が都合が悪いのでしょう。まんま浮気みたいになりますからね。レズならアリってもんでもない気もしますが。
「で、ではこぁ様! こここ、これはその……あの方のために、なるのです、よね?」
「モチロンさぁ!!」
「信じても……」
「いいんだよ!」
「あっ」
 グリーンだよと続けそうな勢いでこぁが魔女さんを抱き寄せました。そのまま、唇を奪います。
「んんっ、……ちゅ、ぷぁっ! わ、私のファーストキスが……」
「なーに、悪魔との契約だもの。人外との行為なんてノーカンさ」
「そ、そんなものでしょうか」
「そんなものですとも!」
 そして始まるイヤンウフン。
 チョロいのしかいねぇ、とこぁはせっせと腰を振りながら満足気でした。 
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