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真田十勇士

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巻ノ十八 伊勢その九

 巫女もそのことを知っていてだ、周りの者達に言うのだ。
「だからね」
「徳川様はお入れになられますか」
「あの方々をご自身のご領地に」
「そうされますか」
「あの方が敵でない家の人にご領地を見せるのは」
 それは何故かともだ、巫女は話した。
「ご領地の中の整った政をお見せする為よ」
「そしてそれで相手を唸らせ」
「戦う前から戦わせない」
「その為ですね」
「お見せしているのですね」
「そうよ」
 その通りだというのだ。
「だからこそなのよ」
「それもまた、ですね」
「徳川様の深謀遠慮ですね」
「戦は出来る限りせぬ」
「それもまた」
「前右府様に教わったことね」
 信長のそれにというのだ。
「豊かで強い国にはね」
「誰も攻め込みませんね」
「挑んでも負ける故に」
「だからこそ徳川様はそうされている」
「敵以外には」
「そうよ、そしてね」 
 巫女はさらに話した。
「あの方は今の天下を機とされているわ」
「甲斐、信濃に進み」
「そのうえで、ですね」
「その二つの国を手中に収めようとされている」
「左様ですね」
「あの方ならば二国を手中に収められるわ」
 家康のことをこうも言うのだった。
「そしてその中で上田も」
「あの方々のご領地も」
「やがては」
「収められるわ」
 その手中にというのだ。
「そうされるわ」
「ですか、では」
「我等はその徳川様にですね」
「これからも」
「半蔵様の言われる通りにね」
 巫女はこの名前も出して周りに言った。
「そうしていくわよ」
「徳川様にお仕えし」
「徳川様の為に働く」
「そうしきますね」
「これからも」
「そうしていくわ。あと真田の次男殿と家臣の方々は」
 その人達はといいますと。
「おそらく三河にも行くわ」
「その徳川様のご領地にですか」
「赴かれますか」
「あえて敵地に」
「そうされるのですか」
「いえ、まだ敵ではないわ」
 巫女は周りにこの事実を話した。
「真田家にとって徳川家はね」
「確かに徳川家は兵を信濃、甲斐に進めていますが」
「まだ上田にまで至ってはいない」
「それには時間がかかりますし」
「だからですね」
「そうよ、干戈も交えていなければ降る様にも言っていないわ」
 そうしたことは全くしていないというのだ。
「だからね」
「あの御仁が三河に入ってもですか」
「全く問題はない」
「そうなるのですね」
「だから徳川様も」
「今は何もされないわ」
 例えだ、幸村が自分の領地に入ってもというのだ。 
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