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貰った特典、死亡フラグ

作者:一方逃避
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死亡フラグ貰いました。
  6話:平和な日々は望めない。望めばフラグ

 
前書き
マリが依存系、またはヤンデレになりそうな気がする
マリよ、永遠に...... 

 
「ダレン……」

 倒れてから、3時間。わたしのベッドで寝ているダレンはとても苦しそうだ。熱はもう上がってないけど、39度もある。

「ダレン、水飲める?」

 熱がある時は水分をとらないといけないと聞いたことがある。汗をいっぱいかくから脱水症状になるとか。

「マ…………リ、お……れはい……から外……出と……け」

「何言ってるの、そんことダレンが具合悪いのにできるわけないでしょ! あ、ダメだって!」

 ダレンはずっと体を起こしては倒れ、起こしては倒れを繰り返している。まるで、ここから早くいなくなりたいと言っているかのように。

「早……くし……ない…と、皆が」

「だから、ダメだって! ほら、水飲も?」

 一人で起きようとするダレンを支えてあげる。ダレンはずっと同じことを呟いている。皆とはここにいる人達のことだろうか? 支えてあげたダレンの背中は、汗でびっしょり濡れている。やっぱり、水分をとらせないと!

 こくこくと、水を飲むダレンの姿は少しかわいい。こんな時に不謹慎かな。

「はぁ……俺にか……ま……う な……」

「だから、何でそんなこと言うのさ! それにここはわたしの部屋だよ? わたしがいていいし、それにダレンもここにいていいの!」

「ダ……メだ、俺が……ここ……いちゃ」

 起きようとするダレンを、ベッドに押し戻す。こんなことを続けていたら具合がもっと悪くなっちゃう。

「マリ」

「お母さん」

 部屋に入ってきたお母さんは、薬と水の入ったコップを持っている。

「ダレン君はどう?」

「熱はもう上がってないけど……あ、また!」

 起き上がろうとするが、やっぱりダレンは倒れる。何でこんなことをしているのだろう。こんなに動いてたら、余計に汗をかいてしまう。わたしの手もダレンの汗で濡れている。

(ちょっと、しょっぱいかな~……)

「ダレン、ずっと俺はここにいちゃダメだ、早く行かないとって言ってるの」

「そう。でもマリは……ダレン君と一緒にいたいのよね?」

「うん」

 わたし自身も不思議だった。自分の口からそんな言葉が出てくるなんて。

 あれは、ダレンのためにサンドウィッチを作っていた時。その時も、誰かのためになんてことをしているのも不思議だった。お母さんの「もし、ダレン君の親が見つからなかったら、ひきとって一緒に暮らそうと思う」という言葉。それに対して、わたしも自然と「わたしもダレンと一緒にいたい」と言った。

 それは本当に不思議だった。いつものわたしなら考えられないくらい。わたしは人と接するのは苦手だし、しかも相手は会って2日すら経ってない男の子。それにわたしは、ダレンの手当てをしたいと言った。どうしてここまでこの少年に関わりたいと思うのだろうか? もしかしたら、“あのこと”と関係があるんだろうなぁ。 

「マリが一緒にいたいと言うのなら、一緒にいてあげなさい。大丈夫、ダレン君もきっとその内わかってくれるわよ。一緒の部屋で寝た仲じゃない」

「そうだね~、がんばる。あ、ダレンダメだって!」

 ダレンは相変わらず起き上がろうとする。わたし達といたくないのか、と思うとちょっぴり悲しくなってきた。

「頑張りなさい。お母さんは夕飯の準備するから。今日はダレン君にはお粥かしら。マリも少し休みなさいね」

「わかった~」

 まずはダレンに早く具合を良くしてもらわなければ、何も始まらない。

「大丈夫、わたしがずっと一緒にいるよ、ずっと一緒に。だから、早く元気になってね~」

 ベットの上、ダレンの顔の近くに顔をうずめる。そうすると、すぐに眠気はやって来た。








「んふ~」

 わたしは頭の上に何かがある気がして目が覚めた。あったかい、何か。それはダレンの手?

「今、何時だろ?」

 時計を見ると7時半過ぎ。結構寝ていたらしい。それにしても、頭の上にダレンの手があってビックリした。なでられていたのかなぁ~。

「それにしても外、明るいなぁ~」

 最近はもう7時になると外は薄暗くなる。しかし今日は夕日の様なものが輝いている。ゆらゆらと陽炎のように。そして聞こえるのは……怒号と悲鳴!

「何かあったのかな? ダレン、ちょっと行ってくるから動いちゃダメだよ。すぐ戻ってくるから!」


●●


「何かあったのかな? ダレン、ちょっと行ってくるから動いちゃダメだよ。すぐ戻ってくるから!」

 マリの声がする。残念ながら声の方向に顔を向けることはできなかった。すぐに部屋の外へと出ていってしまったからだ。それにしても外が騒がしい。

「蒼……」

『Jud.ご用件を』

「外で……何……起きて……る?」

『何者かによる襲撃。検索作業続行。ドライバーの記憶領内から検索。キーワード検索、第14無人世界、開墾地、開拓者、襲撃。……検索結果、襲撃者フッケバイン構成員“サイファー”と推測』

「な!?」

 サイファー。フッケバインのかなり強い剣士。そうか、ここはサイファーが虐殺する場所で、シグナムが昔来たことがある場所。

(くそっ、何で気が付かなかったんだ!)

 本で読んでると、すぐ忘れそうな小さな情報。だがこの世界では実際に人が殺されてしまう確かな真実!

「皆……助け……」

 ベッドから起きようとするが、もはや力が入らない。なので、転がるようにしてベッドから床に落ちた。

「っ!」

 痛い。そのまま這いずるようにして部屋の出口を目指す。やっとの思いで到達したがドアノブに手が届かない。

 その瞬間勢いよくドアが開いた。

「! ダレン、動いちゃダメって、いやそんな場合じゃない! 早く逃げよ!」

 こんな時、俺はマリを救えるのだろうか……


●●


 外に出てみると、そこはまさに火の海といったものだった。炎が揺らめいている様は綺麗に見えた。皆ががんばって造った家は焼け、人が倒れている。

「だ、大丈夫ですひっ!」

 倒れてい人を起こしてみると、血を沢山流していた。片腕もない。

「誰が、こんな……」

「マリ!」

「お母さん!」

  こっちに走ってくるお母さんは片腕を押さえていた。頭からは血を流している。

「お母さん! 何でこんなっ」

「マリ、早く逃げなさい! ここにいては危ないわ、ダレン君を連れて早く!」

「でも、お父さんは……」

「いいから、早く逃げなさいあなた達だけでも早く!」

「ぐほぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 どこからか悲鳴が聞こえた。ここから近い!

「マリ、行きなさい!」

 わたしは状況がよくわからないまま家の中に入っていた。するとわたしの部屋から大きな音がした。

「! ダレン、動いちゃダメって、いやそんな場合じゃない!早く逃げよ!」

ダレンは起き上がろうとして、ベッドから落ちたのだろうか。いや、そんなことを気にしている暇はない。早く逃げなくては!

「ん、重い……」

 やっぱり、ダレンを支えて歩くのは大変だった。わたしより身長が高いから当然だが、ダレンの体に力が入っていないこともあるのだろう。ダレンはさっきより苦しそうだ。

「何で、あんなことが……」

 お母さんの必死の表情。まるでこのままでは死んでしまうかもしれない様だった。確かに死んでしまっていた人もいた。

「ダレン、大丈夫。わたしが絶対助けるから!」

 今まともに動けるのはわたししか、いない。だったら、ダレンを助けるのはわたし、そうするしかない。

 やっとの思いで、近くの森に逃げたわたし達。ここまで来れば安全かもしれない。そう、思っていた。

「全員殺したかと思っていれば、まだ残っていたとはな」

 目の前にいたのは、日本の剣を持った隻眼の女性。剣には血が付いていた。

「ひっ!」

 女性は段々と近づいてきた。それはまるで、一歩近づくごとにわたし達の死が迫っているかの様だった。

「なるほど。いやに抵抗する銀髪の女がいたがこのためか?まあ、いい」

 銀髪の女? まさか、お母さん!? 許せない! この人がお母さんを、皆を!

「何でこんなことするのっ!?」

「私も別に好きでやっているわけではないが、生きるためには必要でな。不本意なことだが」

 何かこの女を殺せるものを!許せない、絶対に!

 周りを見ると、近くにノコギリが置いてあった。書いている名前はアル・カーター。お父さんの物……。

「ほう、そんな物で私を殺せると思っているのか?」

「許さない、許さない! あぁぁぁぁあぁぁあ!」

 わたしは目の前の女に突進して、ノコギリを振り下ろす。しかし、ノコギリは女に当たるなり、粉々に砕け散った。

「邪魔だ」

「きゃっ!」

 呆然としていたわたしは腕の一振りで飛ばされた。ダレンのすぐ横に。そうだ、ダレンはわたしが守らないと!

「なるほど、さっきから気にはなっていたが、これはおもしろい」

「なに……を……」

「娘、お前の横にいるやつは私と同じ、感染者だ。つまり私と同じ殺戮者だよ」

「感染者って、ダレンはただの風邪………」

「エクリプスウィルスと言ってもわからんか。まぁいい、そいつは連れて行こう。娘、お前は死ね」

 わたしを殺そうと近づいてくる女性。このままじゃ、ダレンが危ない!

「ダレン!!」

 ダレンをぎゅっと抱きしめる。するとわたしの腕のなかでダレンが動いた気がした。

『Start Up』








 誰かが俺を呼ぶ声がする。なぜか顔の周りをが温かく、鉄臭い。視界が段々と安定し来る。熱による体のダルさもあまりない。そして見えてきたのは

「マ……リ? マリ!」

 マリは俺に寄りかかっていた。いくら揺さぶろうとも反応しない。まさか!

「やっと起きたか」

 顔をあげると、そこには見たことがある顔。隻眼の剣士サイファー。

「バイクで来てたのでな。どうやって連れて行こうかと思っていたが、起きたのならちょうどいい。しかし、さっきのには驚いたな」

 こいつは何を言っている? なんでマリを、皆を殺してこんなに飄々としていられるんだ?
 
「お前がマリを、皆を! 殺したのか!?」

「ここのやつらを殺したのは認めるが、その娘を殺したのは私ではない。よく見てみろ、自分の手を」

何を言ってるんだ?ひとまず俺は自分の手を見る。すると俺の瞳に映ったのは、

俺の手の中に、ディバイダー3.14があったこと。そしてその刀身がマリの胸に深々と刺さっていたこと。

「な……こんなこと……」

「大方、殺戮衝動でもあったのだろう。私がやろうとしたらいきなり、剣先が見えたのでな。驚いたが、これでわかっただろう? その娘を殺したのは紛れもなくお前だよ。もはやお前は普通の人生は遅れない、いや感染した時からといった方が正しいか」

 サイファーの言っていることはもはや聞こえない。

 この日俺は、守ると誓った女の子を、俺のことを守ると言ってくれた女の子を、殺してしまった……。 
 

 
後書き
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