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雨音

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第一章

                       雨音
 仙台市で噂、都市伝説と言っていいものが起こっていた。
 夜に雨が降るとだ、その時にだ。
「えっ、女の子が一人で歩いてると?」
「そうらしいのよ」
 天海美奈子がだ、クラスメイトの佐古下優樹菜に話していた。二人は同じ小学校の友人同士だ。
「急にね」
「いなくなるの」
「神隠しに逢うらしいのよ」
「それ本当のこと?」
 優樹菜はその大きな黒い目を不安にさせて問うた。黒目がちの目で唇は小さく奇麗なピンク、黒のロングヘアには赤い大きなリボンがある。美奈子は優樹菜より十センチ位背が高く赤毛をポニーテールにしている。やや切れ長の目で唇は大きい細面だ。
「神隠しって」
「何か噂だとね」
「噂って?」
「拉致されるのよ」
 美奈子は囁く様にして優樹菜に話した。
「それでどっかに売られるらしいのよ」
「拉致ってまさか」
「北朝鮮って言いたいのね」
「あの国がやってるとか?」
「それはまさかと思うけれど」 
 それでもというのだ。
「女の子がね」
「夜に雨が降ってると」
「消えるのよ、傘を残してね」
「本当に消えた子いるの?」
「いるらしいわ、青葉区の子が一人いなくなったらしいのよ」
 美奈子はここで仙台のその区の名前も出した。
「それで今も見付かっていないらしいのよ」
「怖いわね」
「そうよね、攫われてどうなるか」
「本当に北朝鮮に連れて行かれるとか?」
 かなり真剣にだ、優樹菜は美奈子に問うた。
「それかね」
「変な宗教団体に送られるとか」
「そんなことになるのかしら」
「そうかもね」
 かなり不安になっているうえでのやり取りだった。
「何にしてもね」
「怖いわよね」
「本当にね」
 二人でこうしたことを話していた、そして先生もだ。
 生徒達にだ、真剣な顔で話した。
「最近街に変な噂が広まっています」
「夜に雨が降ってる時にですよね」
「女の子が一人で歩いていると何処かに連れ去られるんですよね」
「はい、そうした噂が出ていますが」
 先生は優樹菜達に話した。
「本当かどうかわかりません」
「青葉区の子がいなくなったんですよね」
「傘がなくなったって」
「そうですよね」
「その噂も本当かどうかわかりません」
 先生は生徒達を落ち着かせる様にして話した。
「ですが」
「ですが?」
「ですがっていいますと」
「皆さんは気をつけて下さい」
 くれぐれもというのだ。
「夜に一人で出歩かない様に」
「雨じゃなくてもですか」
「男の子でも」
「はい、少なくともそうして下さい」
 こう注意するのだった。
「まずは」
「そうですか、それじゃあ」
「夜は皆で一緒にですね」
「塾の帰りとかは」
「絶対にお父さんお母さんお友達と一緒に帰って下さいね」
 塾もというのだ、先生つまり学校側もこの噂について否定するのではなく警戒していた。それで実際にだった。 
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