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ドリトル先生の水族館

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第五幕その六

「大きくてあの形なのはね」
「あそこに適合して進化した」
「だから大きかったんだ」
「脂肪も厚くて」
「いつも浮かんでいたんだ」
「普通の海牛類は海の中に完全に入るけれど」
 そしてその中で泳いでいるのです。
「けれど彼等は背中を出して浮かんでいたね」
「それは寒い場所に合わせてだよね」
「寒いからああして外に身体の一部を出して体温も調整していて」
「動かない様にしていて」
「そういう身体になっていたんだね」
「そうだったんだ、身体を浮かんでいたことはね」
 それはというのです。
「彼等の進化だったんだ」
「成程ね」
「ステラーカイギュウさん達も進化してたんだね」
「寒い海に適合して」
「そうして生きていたんだね」
「そうだよ、残念なことに絶滅してしまったと言われているけれど」
 またこのこともお話した先生でした、やっぱり寂しそうに。
「それもまたなんだ」
「進化なんだね」
「そしてその進化はずっと続いていくんだ」
「現在進行形で」
「そうなのね」
「そうだよ、人間も同じだよ」
 他ならぬ先生達もというのです。
「進化していっているんだよ」
「文明だけじゃなくて」
「身体もなんだ」
「そうなんだね」
「うん、日本人もこの百年で体格がかなりよくなったけれど」
 具体的には背が伸びました。
「食生活が変わったせいが大きいけれどね」
「これも進化?」
「そうなるの?」
「大きくなることも」
「それも」
「そう言っていいかもね、進化と言ってもいいし変化と言ってもいいけれど」
 どちらにしてもというのです。
「体格の変化にしてもね」
「進化で」
「今現在起こっているんだ」
「実際に」
「人間にしても」
「そうなんだよ、あらゆる生きものは様々な形で常に進化しているんだ」 
 先生は微笑んでこうも言いました。
「それもまた面白いね」
「深いね、何か」
「そうした状況って」
「何かとね」
「僕達もそうだなんて」
「とはいっても進化しないといけないってこともないよ」
 絶対ではないというのです、進化は。
「そのままでいてもいいんだよ」
「あれっ、そうなんだ」
「そのままでいてもいいんだ」
「絶対に進化しないといけない」
「そういうことでもないんだ
「うん、その場所に適合出来てそのままでいられるのならそれはそれで幸せなことだからね」
 だからだというのです。
「それもまたいいんだ。進化しないといけない時は進化するしね」
「必要なら進化するんだ」
「だからそのままでいいのならそれでいいんだ」
「絶対進化しないといけないんじゃなくて」
「現状維持でもいいのね」
「そういうものだよ、進化イコール正義かというと」
 それは、というのです。 
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