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死者の誘い

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2部分:第二章


第二章

「ワルシャワは」
「うん、女の子だけじゃなくね。この街も」
 これは駆け引きではなく本心からの言葉であった。
「実にいいね、気に行ったよ」
「じゃあその奇麗な場所の何処に行くのかしら」
「そうだね」 
 とりあえず辺りを見回した。
「まずはタクシーを」
 手を上げる。するとすぐに一台の黒いタクシーが目の前に止まってきた。だが妙な形のタクシーだった。
「!?」
「どうしたの!?」
 エミリアはジュリアスが急に怪訝な顔をしたので尋ねた。
「いや、このタクシーだけどさ」
「ええ」
「ワルシャワのタクシーってこんなのだったっけ」
「!?」
「何かイタリアのタクシーと全然違うんだけれど」
「ワルシャワのタクシーも普通の車よ」
 エミリアはそう答えた。
「当たり前じゃない」
「それじゃあこのタクシーは」
 ジュリアスは首を傾げながら言った。
「何なのかなあ」
「何なのかなって・・・・・・えっ!?」
 エミリアもそのタクシーを見て目を丸くさせた。まるで霊柩車の様に異様なシルエットのタクシーだったのだ。
「どちらに行かれますか?」
 運転席から若い男が顔を出してきた。ブロンドに青い目の端整な顔をしている。だがその目には生気はなく肌も蝋の様に白い。まるで死人の様な顔をしていた。
「どちらにでも行きますが」
 彼はそう言って笑った。不気味な、顔の筋肉だけで笑っている笑みだった。笑っている間も目には生気はなく動きもない。ただガラス玉の様に光っているだけであった。
「いや、突然気が変わったよ」
 ジュリアスはその男に不可思議なものを感じてそう述べた。
「左様ですか」
「悪いね、折角止めてもらったのに」
「いえいえ」
 男は恭しい動作でそれに返す。その動作もまた生気の感じられないものであった。
「それではまた」
「うん」
 男とそれを乗せた車は去って行った。ジュリアスもエミリアもその車を見送って何か見てはいけないものを見てしまったような顔をしていた。
「変わったタクシーだったね」
「そうね」
 ジュリアスは場の雰囲気を変える為に軽口を言った。だがエミリアの顔は変わらなかった。
「あんなタクシー見たことないわ」
「そうなんだ」
「生まれてからずっとワルシャワにいるけれどそれでも」
 彼女は言う。
「はじめてよ、あんな変なの」
「じゃあ記念になるかな」
「どうかしら」
 彼女は深刻な、闇に包まれたような顔でそれに応えた。
「そうだったらいいけれど。記念だったら」
「何か場が重くなったね」
 ジュリアスは言った。
「行く場所は明るい場所にしようか」
「何処に行くの?」
「バーに行こう」
 彼はそう提案してきた。
「もうそろそろいい時間だしここでは二人でね」
「お酒で重いものを打ち消すのね」
「そうさ、それにはお酒が二番」
 ジュリアスはいつもの明るい彼を意識して出していた。
「じゃあいいバーを紹介してくれないかな」
「あら、レディーにそれを言わせる気?」
「ワルシャワの味を知りたくてね」
 二人は冗談めかしたやり取りをした。これも意識してである。
「駄目かな、それで」
「駄目って言ったらどうするの?」
 エミリアは言い返す。

 
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