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SecretBeast(シークレットビースト)

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本編 第二部 
  「残されたのは希望?絶望?」

 
前書き
残されたものがなんであれ、人間は生きていく。それは原罪を負う人間の宿命。しかし神は人間をうつむく動物のようには作られなかった。二本足で立ち、空を見上げられるように作られたのである。残されたものはなんであろうと、人間は上を向いて歩いていく。広い広い空を見上げて。 

 
 世界は沈黙した。

さまざまな報道手段がこれを全国に配信した。テレビ、ネット、新聞、ビラ。それらがまるで毒薬のように世界に浸透し世界を沈黙させた。
 各地で恐怖に身を凍らせる人々の姿があった。しかしこの脅威に立ち向かっている勢力があることも知った。そして人々は祈った。この世界のために。その時各地で起こっていた全ての暴動、紛争、戦争、争いは一時的に止んだ。
 そう、その戦いの最中にある者のために。
「全艦、目標二体の巨大生物、これよりこれら二体をコード『シークレット・ビースト』と呼ぶ!これより全艦全機につぐ『シークレット・ビースト』を近づけさせるな」
「高町司令官、それで大丈夫なのですか?相手は黙示録の怪物ですよ?」
「大丈夫、まだ我々にはもうひとつの『神の杖』がある。心配するな」
『おい、高町のあたしの方は準備OKだぜ。いつでも始められる』
「明日香、世界はあなたの手にかかってるわよ、頼んだわよ、将軍」
 空母「いずな」その甲板に一人の女の子がいた。全身を特殊なボディスーツに身を包んだ明日香の手には槍が握られていた。
「司令官、あの娘がもってるあれはなんです?」
「ドルイドの娘にしてかのアーサー王伝説に出てくる賢者マーリンの弟子細川百合が創り出した霊槍いや聖槍ね。大佐、キリストを殺したとされる槍の事はご存知?」
「まさか、ロンギヌスの槍ですか、そんなものどうやって!」
「正確にはそれに極限まで近づけた槍なのよ、それをあそこの馬鹿力の女に一万本ほど持たせたわ」
「一万本!?世界の命運を左右する槍ですよ?そんなバカな!」
「それが出来たのよ。世界中のあらゆる宗派の聖なる儀式を複合してね!!」
「だけどそんな槍でも当たらなければ」
「だから明日香さんにここにいてもらったのよ今から天地終焉のプロローグを全てひっくり返してやるから見てなさい!」
 明日香は今まで自分の特異体質をいつもうしろめたく思っていた。初めて一目惚れした彼の腕を握りつぶしてしまったこと。体育でドッジボールでもやればかならず事故を起こす。だから彼女はその力をセーブする術を覚えた。だが今はそんなことは全て忘れて自分の全てをぶつけられる。二体の「シークレット・ビースト」との距離はおよそ一万メートル。
 現実に考えれば投げた小石で飛行機を撃ち落とすような離れ業だ。だが明日香は笑っていた。自分が全力をだしても勝てないかもしれない敵が一万メートルの彼方にいる。
 私の仕事はその彼方の敵の頭を正確に撃ち抜くこと。彼女は槍を構えた大きく助走をつけて搾り出すように投げた。
 槍は流星のように煌めきながら正確な放物線を描いて獣の頭を射抜いた。獣は血を吹き出しながらゆっくりとその身を崩す。だが明日香の攻撃は止まらない。ボストンバックから新しい槍を取り出す。なぜなら獣には7つの頭があるから。
 無論、相手も無防備ではない赤き竜がその口から炎をくゆらせ始めた。
「!まあ、敵もすんなりやられてはくれませんよね、でもわたくしがなんの手もなしいると思いまして?細川様、出番です!」
『ふう、やはりわたしは一緒にはいけないわね。戻ってきて正解ね。高町さん、あなたの土壇場の考えの転換すばらしいわ』
「ええ!?彼女は伊佐様とともに嵐の向こうへ行ったのでは?」
「ええ、当初の作戦ではそうでしたわ。しかしわたくしは戦中の中にこそ活を見出すタイプですの。よく考えればあの嵐のなかで細川さまの魔術は通用しないかもしれないない。ならばこちらでの盾として役立てられればより効果的ですわ、それで細川様、伊佐様は無事、嵐の向こうへ?」
『ええ、そこまではなんとか』
「よろしいでは作戦に入りましょう」
『防御結界展開。時間はそう長くは持ちませんよ、いいですわね?』
「ええ、十分です。私の将軍は有能ですから」
 赤き竜はものすごい巨大な炎を放った。
 たちまち全戦艦は噴煙に巻き込まれた。赤き竜はにやりとしたが煙が晴れてくにして
自分の思い通りの展開になってないことに戦慄した。
 人間風情が結界なんぞを張り巡らしている。
「世界中から集められた霊的エネルギーを一度に集束させた超結界、簡単には破れない!明日香、今よ!」
「よっと!そら、そらあ!」
 連続して放たれた槍は的確に頭を打ち抜いていく獣は苦し紛れに突進してきた。視界にあるものを全て食いあらすつもりだ。それも海を跳ねるようにしてとんでくる。だがそれを数千万のミサイルが遮る。離脱行動をとっていた戦闘機たちが補給を得て帰ってきたのだ。
 すぐさま悪魔たちと堕天使の軍が割って入る。
 赤き竜も空を駆けて突っ込んでくる。その時だった。バハムートが動いた。リヴァイアサンを睨みつけたまま静止していたあの大魚が動いた。
 赤き竜と獣に襲いかかり暴虐のかぎりを尽くして争った。たちまち、宇宙は巨大生物の闘争の場となった赤き竜はそのとぐろをバハムートに巻きつけ喉元に噛み付こうとするバハムートは荒れ狂って大波を立てて赤き竜の胴体を食いちぎる7つの尾を持つ竜はひるまず牙を向く、獣はバハムートにところ構わず噛み付いてその鱗を引きちぎる。
 しかしバハムートは動じない。獣の歯は鱗にあたりはするが傷つけられず噛み切れないで牙は滑る。
 海よりも巨大なのだ、滴り落ちる海水は、それ一つ一つが大きな滝ほどもあるはずなのに遠くから見るとまるでその滝すら小さく小さく見えてただの流れ落ちる滴のようだ
 あそこで起こっていることはまるで古の神話の最終戦争のようだ。そう神々の戦争。
 明日香の槍もまったく狙いを外さず入り乱れる両者のうち、敵だけを射抜いていく。
「さあ、勝負は始まったばかり、ですが勝敗を決するのは、私達ではない、私達はあくまで陽動。伊佐様たちが彼の者を打ち砕けさえすれば私たちは勝つのですから!!」
  




 
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