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悪魔の操逐

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悪魔の操逐

その日は偶然にも夕立に遭い急ぎながら家へ向かう僕は街の一角で、ある少女と出会った。周りの人々は視線すら送らなかった。しかし僕は彼女が何か違うことに気が付いた…。

明らかに周りの人々は彼女にぶつかりそうでぶつからない。それどころか、彼女の身体をすり抜けていくのだった。

「なっ!?」と僕は驚いた。すると、少女は僕の方を向いて「あら、貴方は私のことが見えるのね。突然で悪いけどその貴方の身体、少し借りていい?」と言ってきた。

僕は「なっ、ちょっと待っ…」突然睡魔が僕の身体を深い闇に引きずり込んでいった…。

目が覚めると僕は病院のベットと思しき場所で寝かされていた。隣には親が心配そうにこちらを見ている。親が僕に気が付くと「先生、戀が、戀が目をあけました。先生、」と叫びながら部屋から出て行った。僕はいつの間にか手を握ったり離したりして、自分の感触を確かめていた。

何分かすると、親が先生を半ば引きずりながら部屋に入ってきた。白衣を着た20代後半と思しき美しい女の先生だった。先生は「戀君、君は2日前に―-―街の一角で急に倒れた、そこは覚えているかな?」と聞いてきた。

僕は声を出して「はい」と言おうとしたら声が出なかった。なので、無言で頷いた。先生はその様子を見て「声が出ない?」と聞いてきたので僕は無言で頷くしかなかった。
先生は無言で何かを考え始めた。何分か考えていると親がしびれを切らして「先生、―――はどうなんですか?」と聞くと「戀は大丈夫です。大丈夫んんですが、『声』が『出ない』ということに引っかかりまして…」と言葉を濁した。「少し戀君と二人きりで話したいのですがいいですか?」と先生は僕の親に聞いた。親は「はぁ、まぁいいですけど…」と少し疑問を持ったが部屋を出て行った。

先生は親が出て行ったのを確認するとドアに鍵をかけて僕のほうを向いた。

「やっと二人きりになれた。ねぇ、私のこと覚えてる?」と先生は聞いてきた。僕はきょとんとしていたら、「じゃあこの姿は?」と言って指を"パチンッ"と鳴らした。すると、先生の周りに何か黒いものが集まってきて瞬く間に先生の身体を包み込んだ。

何秒か経ち、黒いものが消えるとそこには―‐―街で会ったあの少女が立っていた。僕の身体は一瞬で恐怖心にかられ、助けを呼ぼうとした、しかし、声が出ないことに気が付いた。何か物を投げつけたが少女の身体をすり抜けていくだけだった。

少女は僕の横に立つと「やっと捕まえた。あの時急に倒れたからびっくりしちゃったじゃない。まぁ、それでも、君を捕まえれたからよかったけどね」と少女は不敵な笑みを浮かべながら言った。

僕はまだ逃げ場所があるか探していたが少女はじっと僕の方を見ていてまるで『絶対に逃がさない』と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべている。少女は僕の不審な行動を見て「さて、やっと私が見える人がいて身体を失敬しようと思ってたのに気を失って病院に行って運よく再会も出来たことだし、身体を借りるよ。」と少女は言ってさらに僕に近づき身体に触れようとした。

まさに僕の身体に触れた瞬間『バチッ』と静電気の様な音と共に少女はビクッと痙攣を起こして二、三歩後ろに下がった。 僕は一瞬何が起きたか分からなかったが、(これしかチャンスはない、あいつは今は動けないと思うし、こっちは走ろうと思えば走れる。)と思って一気に走ろうとした次の瞬間少女が『キッ』と僕の方を睨んできた。僕はその顔を見た瞬間何かに飲み込まれたような感触に襲われた。何と言えばいいのだろう、急に冷水をかけられ、氷漬けにされた様な...。

「お前、私に、何をした。」少女はこの世のものではないような声で言った。僕は(え、し、知らない、知らないから、こっちに来るな。)と叫びたかった。しかし、少女は1歩、また1歩と私に近づいてきた。僕も1歩2歩と下がっていった。しかし、彼女の方が早かった。
彼女は僕に倒れる様に飛びついてきた。僕はその反応に対処出来ずそれを許してしまった。僕は精一杯放そうとしたがなかなか離れてくれず、それどころか、離れたくない様にギュッと強く掴み、そして離れなくなっていった。
少女は僕に「もう決して…離さない…そして…私…と…同じ…運…命…を………」少女は黒い何かに変わって消えてしまった。





いつの間にか僕は気を失っていたらしく、目が覚めると病院と思しきベットに寝かされていた。隣には親が心配そうにこちらを見ていた。親が僕に気が付くと「先生、戀が、戀が目をあけました。先生、」と叫びながら部屋から出て行った。僕は「何で同じことが繰り返されてるんだ?」すると親が先生を半ば引きずりながら部屋に入ってきた。白衣を着た20代後半と思しき美しい先生だった。僕は反射的にベットから起きて「何で、何でいる。何でここにいるんだよ?」と叫んでいた。親は「すみません、うちのバカ息子が…」と言った。すると先生は「大丈夫ですよー。多分記憶が混乱しているだけだと思うので。」と言った。
更に「記憶が混乱してると思われますので少しカウンセリングしたいので済みませんが少しご退室していただけないでしょうか。」と僕の親に聞いた。親は「いいですよ。」と1も2ともなく承知した。

「ちょっ、待って…」と僕は言ったが親は「あんたは男なんだかもっとしっかりしな。」と言って聞いてくれず、部屋から出て行ってしまった。

先生は親が出て行ったのを確認するとドアに鍵をかけて僕のほうを向いた。

「また、会えたね。アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」と先生、いや、悪魔が哂った。

僕は「黙れ、この悪魔っ…………。」










                                                                    ~ The End ~
 
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