| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ十三 豆腐屋の娘その九

「そして起きようぞ」
「では」
「これより今宵も」
「共に寝ましょうぞ」
「そして起きましょうぞ」
「明日は都を発つ」
 幸村は家臣達にこのことも告げた。
「そしてな」
「大坂ですな」
「いよいよあの地に行きますな」
「果たしてどんな地か」
「楽しみですな」
「うむ、では明日発とうぞ」
 この言葉を最後にしてだった、一行はこの日は寝てだった。朝早く宿を出て都も後にした。そしてだった。
 都を出てだ、その時にだった。
 海野が幸村にだ、こう言った。
「大坂への行き方ですが」
「歩くか船か」
「はい、船を使って淀川を下れば」
 その行き方ならばというのだ。
「大坂まですぐです」
「そう聞いているが」
「はい、船で行かれますか」
「そうじゃな」
 海野に言われてだ、幸村はまずは考える顔になった。
 そしてだ、こう言ったのだった。
「船もよい、しかしな」
「今はですか」
「都から大坂への道も見たい」
「そうされますか」
「船だとすぐじゃがな」
 それでもというのだ。
「道はじっくり見られぬ」
「だからですな」
「ここはじゃ」
「都から大坂への道を見つつ」
「歩いて行きたい、道を知ることも兵法じゃ」 
 こうもだ、幸村は言った。
「今後どの様な戦があるかわからぬしな」
「それでは」
「歩いて行こうぞ」
 これが幸村の考えだった。
「大坂までな」
「では行きは歩き」
 ここで提案したのは霧隠だった。
「帰りは船で如何でしょうか」
「帰りはか」
「陸路も水路も知るべきだと思いますが」
 実際にそうした道を使ってみて、というのだ。
「どう思われますか」
「道は陸だけではない」
 幸村は霧隠の言葉にこう返した。
「それならばな」
「はい、それもいいですね」
「才蔵の言う通りじゃ、そうしよう」 
 幸村は霧隠の言葉をよしとした。
「ではな」
「はい、それではその様に」
 こうしてだった、行きだけでなく帰りの道も決めたのだった。そのうえで一行は都を後にして大坂に向かうのだった。
 その歩きはじめた中でだ、猿飛がこんなことを言った。
「都から大坂までの道は穏やかです」
「道がなだらかなのじゃな」
「はい、それに往来も多くよく治まっております」
「では危険は少ないな」
「左様です」
 こう幸村にも話す。
「ですから安心して下さい」
「そうか、では落ち着いて先に進めるな」
 幸村は猿飛のその話を聞いて笑顔で応えた。
「よいことじゃ、やはり天下は穏やかでなければな」
「ならぬと」
「そうじゃ、乱れておるとじゃ」
 天下が、というのだ。
「往来も出来ぬ、無論商いもな」
「商売人も行き来せねばなりませぬからな」
 根津も言う。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧