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MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士

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001話

「……あれ?」
 
ふと周囲を見回す。まず目に入ってくるのは晴れ晴れとした青空と白い雲、典型的な快晴の空だ。次に飛び込んでくるのは木に地面に生えている草だ。

「ここは一体?」

何と言うか、寝ていた時に唐突に目が覚めたという気分。今まで自分の意識は暗い部屋に中にあったのにいきなり扉が開き部屋に光が満ちたと思ったら目覚めた、そのような感覚に近い。体を起こすとガチャガチャという音が響く、どうやら体に防具があるようだ。黒いスーツのような服装の上を覆うような銀の鎧が肩、腕、太もも、足に付けられている。防御力よりもあくまで機動性を重視しているらしい。

「それにこれは、剣、か?」

腰に刺している一本の剣。芸術品のようにも見える美しさを放ちながらもはっきりとした強さを放つそれは、魔剣と呼ぶに相応しい風貌をしている。それに触れた瞬間流れ込んでくる記憶、知識、経験。昨日行った勉強の内容、1年前に好きな子に告白し振られた事、剣を取ったこと。

「ああそうか……俺、一度死んだんだっけ」

漸く記憶の断片を掬い取る事が出来た彼は草原に腰を下ろしながらこれまでの事を思い出す。自分は何気ない普通の学生だったが不慮の事故で死亡、そして神と名乗る男と会い、生前の善行が評価され転生する事になったらしい。

「それで俺が望んだのは……確か、"英霊ジークフリード"の能力と宝具、だったな」

Fateシリーズに登場するキャラクター、ジークフリード。ドイツの英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』の主人公。悪竜ファブニールを倒した竜殺しの大英雄、その能力を望み、象徴である宝具を望んだ。このような格好をしているのもその影響だろう。

「そして、ステータスの確認能力と成長力の向上、だったな」

自らの力がどれほどの物なのか解るようにステーラス回覧能力、他人にも使用は出来る。そして自らの成長力の向上、強くなりやすくなる事で自らを鍛えやすくするという物だ。早速ステータスを回覧する為に強く念じてみる。

真名(対象)】:ジークフリード
【種族】:『人間』
【属性】:『混沌・善』
【ステータス】:筋力E+ 耐久D 敏捷E 魔力D 幸運E 宝具C

「……低い」

転生準備時に神に言われた事をステータスを見た事で思い出す、英霊を力を持つといっても最初からその力を持てるわけではない。鍛錬する事でその英霊を力を物にする事が出来、最終的にはそれを超える力を持つ事が出来ると。成長力もその為に願った物だ。だが、元のジークフリードのステータスは

筋力B+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運E 宝具A+

となっている、それを知っていると劣化というかどれだけ道のりが険しいのかが良く解る。

「先は長いが、まあいいだろう。取り合えず此処は一体何処なんだ……?」

立ち上がりながら周囲を見回すが草原の美しい景色しか広がっていない、それはそれで美しいが現状の把握は全く出来ない。じっとしていても致し方ないと歩き出そうとするが背後で大きな音がする、振り向くとそこにあったのは自分の鎧とはまた違ったフルプルートの鎧だった。自らの足で立ち、此方に体を傾けている。

「何だ、あれは……?」

それは、唐突に走り出し腕を突き出してきた。明らかに此方に敵意を持った行動、思わず地面を蹴りながら後方にバク宙をしてしまった。

「おおおっ!?」

自らの身体能力の高さに驚きつつ迫ってきた鎧に腕を振るった、反射的に振るった腕は鎧の頭部を捉え常人では有り得ない力で吹き飛び地面に痕を付けながら動きをとめた。男はその力に唖然としながら自分の手を見た。

「………そ、そうか。ランクEといっても常人以上にパワーあるんだよな……」

FateにおけるランクではA・B・C・D・Eの5段階評価でありEとは最低の値を示す、だが1を基準値とするとEが10で1段階上昇するごとに10上昇する為、Eでも一般人を遥かに超える力を持っている事になる。その力を実感しながらも頭上でする拍手の音に耳を澄ます。視線を上げるとそこにいたのは、箒に乗った美女だった。

「想像以上にやるわね、貴方」
「……美女?」
「あらぁんそんな素直な感想述べないでよ、照れちゃうじゃない」

照れる様子など一切見せずに徐々に降下してくる美女、箒から地面に足を降ろし男の前に立つ。

「ドロシーよ、貴方は?」
「……」

さてどうして答えるべきか、転生した時点の生前の名など当に忘れてしまっている。ここはなんと答えるべきかと考えるが決まっている、名など一つしかない。

「ジーク、ジークフリードだ」



「ふぅ~ん、記憶喪失ね~。随分大変な目に合ってるのね」
「まあな、今は記憶を探す自分探しの旅っという所だ」

ドロシーと名乗る美女は草原の真ん中で眠っていた自分に興味を示し、その力を見極める為に先程の鎧を向けてきたらしい。先程の鎧はARMと呼ばれる魔法で特別な彫金を施した、特殊能力を持つアクセサリーで発動させるだけであれば誰にでもできるが、より完璧に使いこなすには"魔力"と"第六感(シックスセンス)"が必要とされる。

「………ねえジーク、私と一緒に来てみない?この先に超珍しいARMが眠ってらしいのよ!」
「珍しいARMか、良いだろう付き合おうとしよう。俺は君の盾にでもなれば良いのかな」
「そういう事♪」
「少しは隠しては如何だ、まあ付き合うが」

彼女が明らかに自分の利用しようとしているのは明白だが、今の自分に行く宛ても目的も無い今言うとおりにするしかない。自分の成長の為にも。

「ねえジーク、その剣ってARMじゃないのよね?」
「こいつか、似て非なる物だ」

ドロシーはジークが腰に刺している剣に興味を示した。普通の剣とは全く違う異質な剣、魔力を帯びながらその内に力を秘めた剣。ARM以外でこれほど高純度の魔力を帯びている事は殆ど無いのだろう。

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)、それがこいつの名だ」
「バルムンク……聞いた事の無い剣ね」
「まあそうだろうな」

適当な会話を続けドロシーとジーク、不意にドロシーのステータスがどれほどの物なのかと気になった。興味本位でドロシーのステータスを回覧してみた

【対象】:『ドロシー』
【種族】:『人間(魔女)』
【属性】:『混沌・中庸』
【精神状態】:一目惚れ
【ステータス】 筋力E- 耐久D 敏捷C 魔力B 幸運C

と脳内に表示されていたが次の表示されていた項目も思わず噴出した。

「どしたの?」
「い、いやなんでもない……(いやなんだよこれはっ!?)」

思わず内心で全力のツッコミを入れた、主に4番目の表示に。精神状態一目惚れとは何とも解り易いが有り得ないだろうと。

「(如何いう事だよ何が如何してこうなってるんだよ!?一目惚れってなぁに俺になの、俺になのか!?)ドロシー、聞いても良いか」
「なぁに?」
「暫くは行動を共にしても良いか?」
「えっいいの!?」

すかさずステータス画面をチェック、すると

【精神状態】:一目惚れ&歓喜

と表示されており完全に惚れられてると自覚するのであった。

「やれやれ……どうなるんだろうな俺の第二の人生」 
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