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変革者

作者:雨の日
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第三話

第三話

翌日
雄太は施設に足を運んでいた

「・・・そろそろ来ると思っていたぞ」

煙草を咥えた曇りの日が入り口に立って此方を睨んでいた
睨んでいた、と言うのは目つき故の御幣だが・・・

「よくわかりましたね・・・!」

なんだか罠にかかったかのような気がして少し悔しい顔をした

「そう怪訝な顔をするな。冗談だ」

こいつを吸うため、と煙草の灰がらを捨てて雄太に歩み寄る

「いきなりだが、まずはボスに会って入隊の手続きだ」

「は、はいっ・・・あ!曇りの日さん!俺の父、健人って・・・」

「あぁ、健人とは同期のよしみだ。隠していて悪かった。きちんと話せたか?」

昨日父と話をして天候荘に行くと決めた時曇りによろしくと言われたのだ
父も、昔天候荘に住んでいたそうだ
父に後押しされた背中に背負ったバックを背負いなおし、深呼吸をして施設の中に案内された


天候荘の一番上の階まで案内される

「着いたぞ。ここがボス部屋だ」

中にはここのボスがいる。そう考えると緊張せずには居られなかった
もちろん、雄太に社会経験などなく、ボス部屋などテレビの世界の話だった

「し、しつれぃしまっす!?」

声が裏返り変なあいさつをかましてしまった
室内は思いの外シンプルで、ボスの部屋と言うよりかはどこかのおしゃれな個人宅一室のような雰囲気だった
しかし奥にある机と、こちらに背を向けて座っているボスの様はここがボス部屋なのだと物語っていた

「・・・よくぞ来た。君が新入りかい?」

クルリと椅子が廻り、思いの外若い青年の顔が露わになる

「え、えと、境 雄太と言います!」

「そうかしこまらなくて良い。私は雷の日。ここのボス、と言えば分かりやすいかな?」

若さとは裏腹に、届く声は落ち着きに溢れ、座っているだけなのにその存在感はすさまじいものだった
と、思っていた其の時・・・

「おいおいおい・・・おま、その口調マジかよっ」

何時からいたのかソファから雷の日とは別の青年が現れた。・・・大笑いしながら

「む・・・?私は何時もこうだが?」

「はははっ!冗談きついぜっ・・はらいてぇよ!」

「・・・ったくお前は少しくらい我慢してくれよ!せっかく新人イビリしてたのによぉ!」

雄太は開いた口がふさがらない
さっきまでの威厳はどこへやら・・・楽しそうに笑うごく普通の青年になってしまったのだ

「いや・・・雷。さすがに俺も引いたぞ」

「そーだそーだ!気持ちワリーわ!くくっ・・だめだ思い出すだけで・・くくくっ」

だんだんと雷の日の顔が赤くなる

「ちょ、ひどいよなぁ新人さん!なんとかいってくれよお!」

突然話題が雄太にまで飛び火して、この状況に一気に引き戻される

「え、えぇぇ!?俺!?・・・えと、威厳あって良かったですよ・・?」

「はははっ!雷、疑問形で返されてやんのぉ!くくっっ」

「あーもうウルせぇ!新人!これから君の教育はここでバカみたいに笑っている雨の日が担当してくれる!質問とかはこのバカにきけっ」

「バカバカうるせっ!」

「お、いきなり雨さんの指導か!・・・新人」

曇りの日が雄太の肩に手を添えた

「死んだな」

「えぇぇぇ!?」

謎の死刑宣告と楽しげなボスたちの会話を耳に残し、部屋を後にすることになった
そして笑いつかれた雨の日が現れる

「さて新人!君の教育係の雨の日だ。まぁ自己紹介とかめんどいんでテキトーだ。んじゃ、ざっとお前のこれからを説明するからついてこいっ」

な、なんか飄々としてるけど大丈夫か、と内心で思いつつ雄太は想いを口に出さず雨の日に付いていくことにした





「・・・で、ここがお前の部屋だ」

小一時間歩きまわされ要点だけを完璧に抑えた短い説明を受け、最後に自室へと案内された雄太は、疲れ切った顔で部屋のベットに座り込んだ

「やっぱここ・・・ひ、広すぎ・・・」

この前中野に案内された時はここまでの施設を紹介されなかったことから考えるに、おそらく中野は楽しみを後に取っておく、的ないきな計らいをしたのだろう

「新人、お前よくここに来たよ。ここでしっかり自分と向き合って力の使い方を学ぶといい」

雨の日が、さっきまでの飄々とした態度を改めまじめな口調で・・

「ま、ここに入った新人に言う決まり文句だけどなっ」

やはり飄々としていた

「雨の日さん・・・今ので台無しですよ・・・」

「ははっ!あ、雨さん、でいいぞ。敬語もそんなにいらね。最初は周りへのポーズである程度敬語がいーけどな」

「ん、分かりました」

雨の日は「これが明日からのお前のスケジュールだ」といってびっしり書かれたスケジュールを・・・なんて事はなく、ざっくり書かれた手書きのプリントを手渡した

「うわっ・・・字きたな・・・」

「ん?なんか言ったか?」

雄太はつい漏らしてしまった本音が聴こえたかと心底肝を冷やしたが、聴こえていなかった様子で、なんとか窮地は脱した

「じゃぁ、今日一日は自由にしてな?なんの施設使ってもいいぜ」

「は、はい・・・」

そう言って雨の日はどこかへ去って行った

「自由にって言われてもなぁ・・・することねぇ・・」

その呟きが聞こえたのか知らないが入り口から突如声が聴こえて来た

「なら、私の仕事手伝ってくれる~?」

中野だ
両手に大量の薬や薬品を抱えて入り口で危なっかしく立っていた

「良いですよ、荷物持てばいいですか?」







「ありがと~お陰で助かったわ!」

荷物持ちだけかと思っていたのだが医務室の掃除やデスクワークの手伝い、その日のけが人の対応までと、正にこき使われてしまった
そして現時刻は夜7時になろうとしていた

「い、いえ・・・良い運動になりました・・・」

差し出されたお茶を一気に飲み干し疲れた体をほぐす

「ふふっ。やっぱり来たの、雄太君は」

「え?あぁ、父に話したら、案外すんなりと受け入れてくれたので・・・この力も制御できなきゃかな、と思いまして」

「偉いわ!そういえば、誰が指導してくれるの?」

お茶のお代わりをもらいながら名前を思い出す

「あーと、雨さん・・・?」

すると中野の目の色が変わった
輝き始めたのだ

「雨様!?いいなぁ!あたりじゃない雄太君!」

「あ、雨様・・・?」

「そうよ!雨様の力、見た事ある・・?」

「な、ないです・・・」

圧迫してくる中野に雄太は少したじたじになる

「んー・・なら一回見ればわかるわ!ほんとかっこいいから!」

「は、はい・・・」

どうやら中野は雨の日の大ファンなのらしい・・・

「っと、ずいぶんと捕まえちゃったわね・・今日はありがと!後は大丈夫だから今日はもういいわ!」

「どういたしまして!俺も暇してましたから大丈夫ですよ。ではまた」

雄太は疲れた体で自室に向かおうとしたが、腹が食事を求めだし、食堂へと行き先を変更した



「お!youは新人か?」

長身でがっしりとした体つきの黒人が白い三角斤を付け、可愛らしいエプロンをした男がぬっ・・と顔を出した

「そ、そうです・・・」

「oh!随分と若いこきたねー!my name is フレディ!君は?」

「ま、マイネームイズ雄太・・」

「ユウタ!よろしく!ここ初めてでしょ?お勧めは特性日替わりテイショクだよ!」

「じゃぁ、それください・・・」

圧倒されて、言われるがままになってしまった雄太をよそ眼にフレディはどんどん話を進めていく

「ユウタ、若いからbigサイズだ!」

そう言った次の瞬間には大盛りの定食が雄太の目の前に出されていた
もちろん、食べきれる量ではない

「ありがとフレディ・・・」

「yes!」

親指を立ててグッドラックサインを出し、次のお客の注文を取りに向かうフレディに感謝となにやら複雑な心情を込めて雄太は空いてる席を探す
幸い、食堂は広大で、直ぐに開いている席を見つけられた

「量・・・おおいな、しゃーない!くったるわ!いただきます!!」

結論だけ述べよう
食べれるはずが無い。


そしてこれから、物語の歯車は音を立てて回りだす――――

 
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