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狸饅頭

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2部分:第二章


第二章

「美味い・・・・・・」
「そらそうやろ」
「美味いでっしゃろ」
 二人はお客の言葉ににこりと笑って話します。
「うちのお店のお饅頭」
「お餅もありますで」
「ほなそれも」
 お客はそのお餅も頼むのでした。そうしてそれを食べてみても言いました。
「これも美味いですな」
「うちの店にまずいものはありますで」
「そうですさかい」
「いや、気に入りました」
 お客は満足した笑みを浮かべて言いました。
「こんな美味しいお饅頭とお餅。また食べさせて下さい」
「はい、何時でもええですで」
「よろしゅうして下さい」
 二人も笑顔でお客に応えます。こうしてお客は満足した顔で帰りました。これがはじまりでした。
 お客はそれから毎日の様に来ました。そのうえでいつもお饅頭とお餅を頼んでそのうえでにこにことして食べるのでした。それが暫く続きました。
 ところがです。ある日急に来なくなりました。秦平もおりょうも馴染みのお客が急に来なくなったのでどうしたのかと首を傾げるのでした。
「何があったんや?」
「病気やろか」
「何もなかったらええどな」
「ほんまに」
 二人はその日も完売してお店をなおしながら。こう話していました。お店の後片付けも二人でして何かと忙しい状況になっているのです。
 ところがです。そこにです。ふと若い男がやって来ました。
「あの」
「んっ?」
「今日はもう終わりですけれど」
「あっ、お客やないです」
 若い男はこう言いました。見れば太っていて目の周りの黒い男です。その男が二人のところに来てそのうえでこう言ってきたのでした。
「わて働かせて欲しくて来ました」
「働きに?」
「うちのお店で」
「そないです」
 そうだというのです。
「それで来たんですけれど」
「それはなあ」
「悪いですけれど」
 ところがです。二人は難しい顔になって言ってきました。
「うちにも余裕がないさかい」
「ですから」
「いやいや、お金はいりません」
 しかし彼はこう言うのでした。
「それはいいです」
「えっ、お金はいい」
「何でまたそんな」
「わてはお金いらんのです」
 だからだというのです。
「それがなくても生きていけますさかい」
「お金がなくても生きていける」
「ほな仙人でっか?」
「仙人でもありません。けどほんまお金はいらんのです」
 また二人に言います。
「そやさかい雇ってくれますか?」
「どうする?」
 秦平がおりょうに対して問います。
「こんなこと言うてるけど」
「そやな。人手は足らんし」
「それでお金いらんっちゅうたら」
「ええんちゃう?」
 おりょうはそれならというのでした。
「それで」
「そやな、それやったらな」
「そうしようか、それだったら」
「お店に入ってもらうか」
「おおきに。それでは」
 こうして彼はお店に入ることになりました。男は真面目に働き本当にお金を欲しがりませんでした。しかも遊びも何もせずただお店の為に働いてくれます。
 
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