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銀魂~Sirius and Antares~

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エピローグ










『必ず…生きて帰って来いよ』

『当たり前ェだろ。なぁ銀時?』
心配そうな表情の青年を、紫色の髪をした青年ーー高杉晋助は口角を少し釣り上げて、当然と言った口調で隣にいた戦友に聞く。

『んなこと決まってんだろ低杉。安心しろ、龍太郎。俺たちゃ絶対生きて帰る。俺たちには、お前らがついてんだから』
銀髪の青年ーー坂田銀時は高杉にはぶっきらぼうに答えるが、青年の方には笑顔で向き直り言う。
当然そんな態度を取った銀時に高杉はブチ切れ、青筋を浮かべて銀時の胸倉を掴む。
『おい銀時、テメェ今なんつった?低杉ッつったよな?ああ⁉︎』

『何〜?高杉くん俺が身長高いの羨ましいの〜?この間、子供にチビって言われたことまだ気にしてんのかよ?』
高杉と銀時は身長差が10センチもある。いくら高杉が食ってかかっても、銀時は上から見下ろす形になるわけだ。他の人の目の前で、自分の恥ずかしい話を暴露された高杉は、顔を真っ赤にして思わず胸倉を掴んでいた手を離す。
一気にバランスを失った銀時は勢い良く尻餅をついた。
『痛ェじゃねェかよ!何すーー』
何すんだテメェ、と言いかけた瞬間、危うく斬られそうになり慌てて避ける。顔を真っ青にして前を見ると、抜き身の刀を片手に高杉がギロリと効果音が出そうなほどの恐ろしい目で、銀時を睨みつけていた。
え、これヤバくね?結構ヤバいやつだよね。うん、ヤバい気がするーーー
銀時がそう思っていると、案の定鬼の形相で高杉が切りかかってきた。
『銀時ィ‼︎』

『ぎゃあああ!ちょ、待てって!タイム!刀はねェだろ⁉︎俺本当に死ぬから!』

『死ねェ銀時ィ!』

『ほんとに殺す気ィ⁉︎』
刀を振りかざす高杉と、必死の形相で逃げ回る銀時。ぎゃあぎゃあ騒ぐ二人を、周囲は笑って見ていた。
ふと青年は思う。見慣れたこの光景は、あと何回見れるんだろうか。あと何回、この人たちと喧嘩ができるんだろうか。あと何回、この人たちと笑い合うことができるんだろうか。白夜叉、坂田銀時。鬼兵隊総督、高杉晋助。この二人は普段はまるで仲が悪く、いつも喧嘩ばかりしているが戦いのときとなるとまるで違う。戦場にこの二人が揃ったとき、それは始まる。呼吸はまるでぴったりで、たった二人で周りにいる敵を次々と倒していく。銀時は全く先が読めない、それも舞うような剣さばきで、高杉は目にも止まらぬ素早い剣さばきで。
援軍が到着したとき、すでに二人以外の者は地に伏していた。






『それじゃあ、行ってくる』


数人の仲間を引き連れて天人の本拠地を目指して、陣営を立ち去りどんどん離れていく二人の後ろ姿を〝彼〝は未だ心配そうな表情で見つめている。
そのとき、肩にポンと手を置かれ、驚いて振り向くと攘夷志士達をまとめる総大将ーー桂小太郎が皆を安心させるような優しい笑顔で、彼に話しかけた。
『銀時たちなら大丈夫だ。殺しても死なないような奴らだからな』

『桂さんは…』

『ヅラじゃない桂だ!…あれ?』
いつにもない青年の真剣な表情に、桂は首を傾げながらも、その落ち着いた瞳で見つめる。
『桂さんはどうしてそこまで信じられるんだ?生きて帰って来るって…』
どうしてそこまで確信を持って生きて帰って来る信じられるのか。隣で笑っていた友が明日になったらいなくなっている。自分がもっと強ければ守れた命があった。ふとした瞬間に、志半ばで息絶えた仲間達の怨念と怒りの声に飲み込まれそうになる。
そんな過酷な日々の中、正気を保っているのは至難の技だった。
青年の問いに、桂は少し驚いた表情を見せたが、やがて銀時たちが去って行った方角を見つめ長髪を緩やかな風に揺らしながら静かに答える。
『何故なのか…はっきりとは俺にもわからん』
意外な桂の答えに、青年は驚いて顔を上げる。あの知的な桂のことだから、何かはっきりとした答えを言うと思っていたのだ。
総大将としての彼は、攘夷志士の最後の砦とも言える。故に、仲間に弱みを見せるようなことは許されない。それゆえ、想像も出来ないような責任も負ってきたに違いない。

だからこそーー彼の言葉には、深い重みがあった。
桂は言葉を続ける。
『だがな、あいつらは俺の大切な友人であり家族でもある。
あいつらが俺達を信じて背中を預けてくれているのに、俺達があいつらを信じてやらなくてどうする』
ーー友人。
ーー家族。
桂の落ち着いた低い声が、青年の心にストンと落ちる。本人でも気づかなかった心の穴をゆっくりと埋めていく。確か桂は、銀時や高杉と幼い頃から同じ師の元で学んだと聞いている。三人が戦争に参加したのも、その師を救う為だと。
青年は何かが自分の志の中を満たしていくのを感じた。
(家族…か)
爽やかな春風が青年達の間を吹ききっていった。










『銀時ィ…もし俺がおっ死んだら…先生を頼む。俺と同じろくでなしにしか頼めねェ』


『じゃあ俺もそのろくでなしに頼む』





『死ぬな』
そう言って二人の侍は周りを取り囲む天人達に向かって駆け出した。互いの背中に、護りたい物を預けながら。
必ず生きて帰ると信じて。
















 
 

 
後書き
ーーはい。ようやくエピローグ、終わりました。エピローグなんて言ってますが、これは主人公と銀時達が出会ってからしばらくたったあとですね。呼び方もどこか、まだ距離がある感じなんで。次話からは、本編に入ります。坂本辰馬が、初めて銀時達と出会うところから始まります。そしてその後に主人公が幕府軍として、攘夷志士達の本拠地に近づくところから始まります。因みに作者は最新ネタバレまで読んでますので、基本的に設定は全て原作通りになります。何人か、オリキャラは登場しますので、ご了承ください。
ネタバレになるところもあるかもしれないので(特に57、58巻)注意です!

大好きな銀魂をどうしても書いてみたいと、始めた小説。
まだまだ始まったばかりですが、何卒先を楽しみにしていただければ幸いです。 
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