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通報してはならない

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第五章

「ファミリーのヒットマンだよ」
「そうだったんだ」
「だから若し君がその時通報をしていたら」
「ファミリーの仕事を邪魔していた」
「ヒットマンが捕まったかも知れないからね」
 それでというのだ。
「君はそうみなされていたよ」
「じゃあその時は」
「君は制裁を受けていた」
 これ以上はないまでに強張った顔でだ、アントニオは良平に告げた。
「そうなっていたよ」
「じゃあ両手、いや両腕を」
「肩からね」
 切り落とされていたかも知れないというのだ。
「下手すれば消されていたよ」
「そうなっていたんだね」
「また言うけれどシチリアン=マフィアは怖いんだ」
 その仕事ぶりも制裁もというのだ。
「本当にやるからね」
「僕は運がよかったんだね」
「とてもね」
 アントニオも友人であり義弟でもある彼のその幸運にほっとしていた。それが顔にもはっきりと出ている。
「その幼馴染みに感謝するんだ、何よりも神様にね」
「神様のお導きだね」
「彼はね、そしてね」
 アントニオはさらに言った。
「通報はね」
「迂闊にはだね」
「したらいけない」
 良平にこうも忠告したのだった。
「いいね、この街ではね」
「僕がファミリーの一員だから」
「そう、変に正義感を出して通報したら」
「僕が大変なことになる」
「僕も同じだからね、だからこの街にいる間は注意するんだ」
「わかったよ」
 良平も誓う顔でアントニオに答えた。
「肝に銘じておくよ」
「君はもう一人じゃないしね」
 結婚、自分の妹とそうしたこともだ。アントニオは良平に告げた。
「わかったね」
「うん、それじゃあね」 
 良平はアントニオに強く約束した、そしてだった。
 彼はニューヨークにいる間はそうした事件を見たり聞いても通報しようとしなかった、そしてすぐに妻を連れて逃げる様に日本に戻りある大学の講師となった。アメリカでの破格の条件を蹴ってまでして。それが何故かは誰にも言わなかった。ただもうニューヨークに帰るつもりはないと言うだけだった。親戚にもニューヨークには行くなと言って。


通報してはならない   完


                           2015・3・21 
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