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モン族の服

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第五章

「あの服がいいって思って」
「よし、じゃあ買ってやる」
「それで着ていいのよね」
「当たり前だ、服は着る為にあるんだからな」 
 明るい笑顔でだ、クアンリーは孫娘に答えた。
「楽しみにしていろよ」
「それじゃあね」
 こうしてだった、チャオルンは祖父にその服を買ってもらうことになった、そして十歳の誕生日の日にだった。
 祖父にだ、ビーズを服の上全体に飾られた服を手渡されてこう言われた。
「これから着ろ」
「今すぐ着ていいのね」
「ああ、着たらな」
 それからともだ、彼は孫娘に満面の笑みで話した。
「外に出ろ、外でだ」
「お祝いなのね」
「それの用意はもうしているからな」
「美味しいもの一杯あるのね」
「それを好きなだけ食え、その服を着てからな」
「それじゃあね」
「着方は難しくないからな」
「普通に着ればいいのね」
 チャオルンはこう祖父に問い返した。
「着方は」
「ああ、それでいいからな」
「わかったわ、じゃあね」
 祖父の言葉に笑顔で頷いてだ、チャオルンは自分の部屋に入って着替えた、そして鏡を見るとだった。その着た服は。
 丈の長いスカートと、体型が結構出ている上着の上にだった。赤とピンク、青に紺、緑に黄色に白に紫に。
 様々な色のビーズが飾られてだった、服のあちこちに横に菱形と帯の模様を何重にも作っていた。上着のところは袈裟で左肩から右脇に流れている。襟のところにはビーズはないがピンクの詰襟が可愛らしい。
 スカートの下にはピンクで白や黄色、緑の帯状と花柄の模様が入ったズボンを穿いている。そして赤いサンダルを履いていて。
 頭には帽子があるが平たく丸い形でだ、そこにもビーズをふんだんに垂らし帽子全体を覆っている。帽子のビーズは赤とピンク、白に緑と紫でこれまた帯と菱形の連なった奇麗な模様だ。
 その服を見てだ、チャオルンはうっとりとした、まるで自分が自分でない様でだ。それで家の外に出て家族の今の自分を見せると。 
 両親がだ、目を見張って言った。
「いいな」
「まるで精霊みたいよ」
「普段から可愛いけれどな」
「今は特によね」
 親バカを出して言うのだった。
「いや、ビーズもきらきらしてて」
「この世じゃないみたいよ」
「というか御前本当にチャオルンか?」
「お姉ちゃんなの?」 
 兄と弟はかなり本気でいぶかしんでいる。
「違う娘に見えるぞ」
「どうにもね」
「私よ」
 その兄と弟にだ、チャオルンはくすりと笑って答えた。
「顔と声は一緒でしょ」
「まあな」
「それはそうだけれど」
「それでもな」
「お姉ちゃんじゃないみたいだよ」
「よく似合ってるぞ」
「本当にね」
 クアンリーとシンルンはにこにことして言って来た。
「その服を選んだのは正解だったな」
「お姫様よりずっと奇麗だよ」
「いや、いい服を買ったな」
「あたしの話をよく聞いてくれたね」
「うん、私もね」
 着ているチャオルンもだ、くるくると動いてビーズがシャララと鳴るのを聞きながら上機嫌で二人に返した。
「夢みたいな気持ちよ」
「そうか、そこまでか」
「嬉しいのね」
「私達にこんないい服があるなんて」
 モン族にというのだ。
「思いもしなかったわ、けれどね」
「その服をだな」
「気に入ったのね」
「凄くね、じゃあね」
「ああ、今からな」
「お祝いよ」
 そのご馳走を食べてというのだ、チャオルンは家族の中に満面の笑顔で入った。ビーズを飾ったその服を着て笑った顔はその服の見事さもあってまさに精霊の様だった。


モン族の服


                         2015・8・25 
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