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モン族の服

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第三章

「本当にね」
「難しいところね」
「具体的にどんな服がいいかっていうと」
「そう着られると」
「困るのね」
「そうなの、どうしたものかしら」
 かなり真剣に考えている言葉だった。
「どんな服がいいかしら」
「折角のお祝いだしね」
「やっぱりいい服欲しいわよね」
「普段着はあるし」
「だから」
「ううん、可愛い服?」
 さらに考えてだ、チャオルンは言った。
「そうした服?」
「可愛い服?」
「日本のドラマとかで出てるみたいな?」
「ああした服がいいの?」
「高校生の人の制服みたいな」
 テレビで出て来る感じのだ。
「ああした服かしら」
「ああした服は高校生になったら着られるわよ」
「中学校でもね」
「だから今着てもね」
「あまり意味ないわよ」
「そうなのね、じゃあ本当にどうした服がいいかしら」
 さらに真剣にだった、チャオルンは考えた。
 その彼女にだ、友達の一人が提案した。
「ここは先生かお母さんに聞いてみたら?」
「相談してもらって」
「それでどんな服がいいか聞いたらどうかしら」
「そうすればいいのね」
「親戚の大人のお姉さんかね」
 クラスメイトはそうした人も話に出した。
「そうした人に聞いて」
「具体的にどんな服がいいか」
「聞いたらどうかしら」
「そうね」
 チャオルンはこうそのクラスメイトに返した。
「それがいいわね」
「そうでしょ、じゃあね」
「先生かお母さんかお祖母ちゃんか」
「親戚のお姉さんか」
「聞いてみるわね」
「そうしてみるといいわ」
「わかったわ」
 チャオルンはあらためてだ、そのクラスメイトの言葉に頷いた。そして実際に担任の女の先生や母親に聞いてみたがだ。
 二人共だ、こう言ったのだった。
「チャオルンちゃんが着たいと思った服でね」
「いいんじゃないかしら」
「やっぱり服はね」
「そうした服がいいわよ」
「ううん、そう言われても」
 二人共服にはあまりこだわらない、チャオルンは相談した後で気付いた。
「何か」
「まあ着たい服を着る」
「それでいいと思うわ」
 二人の返事はこうだった、しかし。
 祖母、クアンリーの妻であるシンルンに聞くとだ、祖母はこう言った。
 チャオルンはシンルンにクアンリーが畑仕事に出ている時に家に入って尋ねた。自分がそのまま年老いて髪が綿の様に真っ白になった彼女に。
 するとだ、シンルンは孫娘にお茶とお菓子を出してから答えた。
「じゃああれだね」
「あれって?」
「うちの服がいいよ」
「うちの服?」
「モン族の服だよ」
 自分達モン族の服だというのだ。
「とはいっても四十年位前、お祖母ちゃんがまだ若い頃の服なんだけれどね」
「それどんな服なの?」
「ミャオ族の人がいるよね」
 このことからだ、シンルンは孫娘に話した。 
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