| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

オズのカエルマン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九幕その九

「どんな木の破片や石の上を進んだり触っても痛くないから」
「だからですね」
「刺が刺さったこともね」
 それこそというのです。
「はじめてだったし」
「それで、ですね」
「うん、驚いてもいたんだ」
「けれどです」
「酷い刺、そして刺さり方が悪いと」
「刺さるんですよ」
「僕でもだね」 
 熊もしみじみとして言うのでした。
「刺さるなね」
「そうなんです」
「絶対ってないんだね」
 熊はこのことも知ったのでした。
「そうなんだね」
「そうです、何でもです」
「絶対というものはなくて」
「熊さんでもです」
「こうしたことがあるんだね」
「そうなります」
「そのこともわかったよ」
 また言った熊でした。
「本当にね」
「絶対のことはない」
 カエルマンは少ししみじみとした口調になっていました。
「僕もわかっておかないと」
「駄目ですか」
「そう思うよ、井の中の蛙だとね」 
 かつての自分のことも思うのでした。
「そうしたこともわからないね」
「そういうことなんですね」
「全く以てね。さて」
 ここでこうも言ったカエルマンでした。
「後はね」
「後は?」
「うん、熊君のことも終わって」
「ここを通られますね」
「これでね」
「僕達迷路を出られますね」
「そして青龍のところに行けるよ」
 目的地にさらに近付けるというのです。
「迷路を抜けて」
「そうなりますね」
「ああ、僕はこれでね」
 熊も皆に言いました。
「自分の巣に帰るよ」
「そういえばどうしてここにいたのかな」
 出口のところにとです、神宝は熊に尋ねました。
「その理由は」
「あっ、それはね」
「それは?」
「たまたまだったんだ」
「たまたま?」
「ここに茸があったからね」
 熊は自分の足元も見ました、今は茸は一つもありません・
「僕茸が好きだから」
「食べる為にですね」
「ここにいたんだ」
 こう神宝にお話するのでした。
「そうだったんだ」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「もうここには用はないよ」
「巣に帰られるんですか」
「それで寝るよ」
 実に気持ちよくそしてのんびりとした言葉でした。
「これからね」
「わかりました、それじゃあ」
「またここに来たらね」
 迷路の森にというのです。
「来てね」
「そうさせてもらいますね」
 神宝も皆も熊ににこりと笑ってです。
 別れの挨拶をしてお互いに手を触り合いました、そうしてなのでした。
 一行は熊の姿が見えなくなってから森を出ました、その前には山が幾つも連なっていました。ケーキはその山を見て言いました。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧