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鎮守府にガンダム(擬き)が配備されました。

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第2部
  第5話 野分の提督観察日記

 
前書き
急にヤンデレを書いてみたくなったんだ☆
のわっちかわいいよドワッ……ドムタイプの方はおかえりください。

次回は居酒屋鳳翔とバーニィ回の何方かでもやるつもりです。
後は花嫁修業を予定してますが、他に何か読みたい話ありましたらご一報ください。
うp主は皆さんの感想を動力源としています。
どしどし感想をお願いしますm(_ _)m 

 
第5話 野分の提督観察日記

9月28日
鹿島第1024鎮守府
エインヘリアル艦隊 旗艦リンドヴルム

茹だる様な暑さが続く日本の九州。
ここ鹿島第1024鎮守府も例に漏れず、未だ蝉の大合唱の只中にあった。

「失礼致します」
「提督〜?」

節電中の貼り紙の貼られたリンドヴルムの蒸し暑い通路の中、とある一室……エインヘリアル艦隊の提督執務室と言う名の艦娘の溜まり場に、2人の少女が姿を現した。
エインヘリアル艦隊所属の艦娘、不知火と夕立だ。

2人はこの部屋の主、神宮司一葉准将への報告書を山の様に抱えて、中を覗く様に顔を出した。

「今は留守の様ですね」
「え〜? 提督のクッキー食べたかったっぽい〜」

2人は抱えた報告書を机に置くと、背伸びをしながら部屋を眺めた。

今現在、一葉の艦隊に所属しているのは深海棲艦である戦艦棲姫、空母ヲ級、戦艦ル級。
戦艦三笠、駆逐艦曙、野分、不知火、夕立のみであり、後に志願した野分が仮専属で秘書艦に就任している。
普段なら秘書艦である野分がこの部屋に、余程の事が無ければ常に控えている筈なのだが……。

「野分ちゃんも居ないっぽい」
「あの娘は根が生真面目ですから。
恐らく提督と一緒にいるでしょう」
「流石お姉さん、野分ちゃんの事ならなんでも知ってるっぽい」
「なんでもは知りません、あの娘は性格が普段から滲み出てますから、分かりやすいだけです。
……あら」

ふと、不知火の目に一冊の本が写った。
部屋に置かれた野分の机の上、diaryと書かれた本だ。

「これは……日記?」
「野分ちゃんの日記っぽい?」

普段は鍵がかけられているのだろう。
南京錠が開けられた状態で日記の横に置かれている。

「ちょっと気になるっぽい」
「……だからと言って勝手に…」
「でも不知火ちゃんも気になってるっぽい?」
「…………否定はしません」

チラチラと夕立の持つ日記に視線を送る不知火に、夕立が日記を手渡した。

そして、観念したかのように肩を落とし、夕立と共に日記の中に視線を落とした。


◉◉◉

9月5日
晴れ

私は駆逐艦野分。
今日着任したばかりの新米艦娘。
これから毎日日記を付けようと思う。
ずっと憧れていた人の姿になれたのだから、これ位は許されるはずだ。


艦だった頃から憧れていた人間の姿になれて嬉しい反面、古閑艦長や守屋艦長が見たらどんな顔をするのか、ちょっと複雑だ。

新しい司令官は神宮司一葉提督というらしい。
階級は准将で、歳は28。
28歳で准将、なかなか腕の立つ方みたい。
艦隊の人達に聞いてみたら、皆揃って「提督は素晴らしい人だ」と爆笑しながら言っていた……何故?
まぁ、私達艦娘を酷使する様な人ではないらしい。

それと、着任早々秘書艦に任命されてしまった。
私としては、三笠さんや不知火姉さんが適任だと思っていたけど…。
でも任命された以上、司令のサポートを完璧にこなさなくては。


◉◉◉


「結構普通っぽい?」
「まぁ、日記ですから」

じわじわと滲み出る、アテが外れた感を噛み締めながら2人は再び日記に視線を落とした。


◉◉◉


9月10日
晴のち曇り

今日でエインヘリアル艦隊配属となって5日が過ぎた。
段々とだけど、この艦隊の事がわかってきた。

この艦隊は日本帝国では無く、地球連邦という国家に帰属する艦隊だそうだ。

今日は鎮守府近海で友軍艦隊が襲われたと一報を受けて、ここ鹿島鎮守府の第1艦隊と、エインヘリアル艦隊旗艦リンドヴルムの対潜護衛任務の命を受けて、初陣を飾った。

けれど、私と第1艦隊の出番は無く、1個艦隊規模の深海棲艦をリンドヴルムが単艦で壊滅させてしまった。

運悪く私は敵駆逐艦の魚雷を一本、右舷艦尾に受けてしまったが、リンドヴルムの工兵隊の方々のお陰で事無きを得た。
鹿島鎮守府へ帰投したのち、一葉司令が付きっ切りで入渠ドックに居てくれた。
正直嬉しい気持ちと、上官に要らない心配をさせてしまった気持ちで複雑だった。

次の出撃では完璧に任務を遂行出来る様に、訓練量を増やさなくてはいけない。


◉◉◉


「野分ちゃんすっごく優等生っぽい」
「言ったでしょう、あの娘は生真面目なんです」

更に日記は進む。


◉◉◉


9月12日
曇り後雨


今日は息抜きと慰安を兼ねて、市街視察、という名目で司令官と2人で街へ出た。
初めて着る服と、初めて見る街並みは、とても新鮮だった。
かつての大日本帝国の名残を残しつつ、西洋文化を積極的に取り入れた街は、50年前とは比べ物にならない位だ。
そこで司令官と一緒に食べたクレープという西洋菓子は格別に美味しかった。
あの頰がとろけるようなクリームと果物の酸味、そして柔らかくももっちりとした食感が堪らない。

運悪く悪天候に見舞われ、帰りのバス停で足止めを食ってしまった。
雨に濡れた司令の後ろ姿に不覚にも見惚れてしまった。
雨に濡れて張り付いた服と、浮き出た身体のラインが、とても煽情的だ。


◉◉◉


9月14日
晴れ

最近、司令の事で頭が一杯だ。
一昨日の雨に濡れた提督の姿がふと頭に浮かんで、なかなか離れない。

秘書艦として気を引き締めなければならない一方、司令との時間を独り占め出来ることが嬉しくてたまらない。


◉◉◉


9月15日
曇り後晴れ

司令が普段からゆっくり食事を取っていただけないので、提督室で野分が食事を用意する事にした。

得意料理のビフテキをお出ししたら、司令は大層喜んで下さった。

その夜、不覚にも執務中にうたた寝をしてしまった。
気付いた時には司令のベッドの上で、暗い部屋の中、司令が1人で書類とにらめっこをしていた。

「1人で大丈夫、野分は休め」

との司令の命令でそのまま休む事になってしまったが、鼻腔を擽るベッド一杯の司令の匂いに、高鳴る鼓動が鳴り止まなかった。


◉◉◉

「……えっと……」
「……」

何やら日記の内容がおかしくなってきた。
正確には14日辺りから。

なおも、日記は続く。


◉◉◉


9月17日
晴れ

艦隊戦の訓練中に足首を挫いてしまった。
砲雷撃戦に移行する際、舵取りを誤り、曙と接触してしまったのだ。
最初はなんともなかったが、訓練が終わる頃になると真っ赤に腫れ上がってしまった。

司令は訓練中、何も仰らなかったが、訓練が終わると真っ先に飛んで来て心配してくれた。
野分はなんともないと執務に戻ろうとしたが、「捻挫を甘く見るな」と司令のお叱りを受け、俗に言うお姫様抱っことやらでドックまで連行されてしまった。

ドックの総監督をしている工作艦明石さんの話では、捻挫が悪化してしまっているが、骨や靱帯に影響は無いとの事。

司令に抱きかかえられた時、怪我をして心底良かったと思ったのは言うまでも無い。


◉◉◉


9月19日
曇り

今日は鹿島鎮守府の艦隊と合同の協働任務があった。
と言っても、野分は司令のサポートが主だった為、積極的に動く事はなかったが。

司令と鹿島鎮守府の艦隊に所属する艦娘の皆さんはとても中が良い。
戦艦金剛さん、扶桑や軽巡の球磨さんや多摩さん、空母加賀さんが筆頭だ。
特に上記の方々はボディタッチが多くて困る。
危うく魚雷を至近距離から叩き込みそうになる。
司令も困っているのに。


野分の司令なのに。
なんでそんなに笑っているんですか。
なんで野分だけに笑ってくれないのですか。


◉◉◉


9月21日


正直に言います。
私は司令が好きです。
ええ、likeではなくLoveです。
この世の誰よりも愛しています。

司令の好きな物も、好きな色も、好きな味も、好きな時間も、知っています。
癖や仕草も知っています。
何を食べたかも、何を考えているかもお見通しです。
なのに、なんで野分を見てくれないのですか?
いえ、語弊がありました。

なんで野分だけを見てくれないのですか?

司令は最近、曙ばかり気に掛けていますね?
独りで居るのは良くない、それは理解できます。
艦隊行動に支障が出る事も、解ります。

でも、それでも、〝司令が他の娘と笑っている〟のを見ると、心臓を抉り取られるような気分です。

苦しくて苦しくて、夜も眠れません。

ねぇ、教えて下さい、司令。


◉◉◉


9月23日
晴れ

今日、曙と喧嘩になりました。
司令がわざわざ心配してくださっているのに、曙は司令の手を払い除けて……。

気付いた時には曙の顔を全力で殴り付けていました。
私はやり過ぎだと司令に叱られてしまいました。

でも当然です、司令の好意を無碍にするなんて。

私がこの世の誰よりも欲しているモノを拒絶するなんて、許せるわけないじゃないですか。
なんでそんなに哀しい顔をするんですか、司令。

貴方の為にしたのに。


◉◉◉


9月24日
晴れ

今日は快眠から覚めて気分がいい。
昨日はお叱りを受けた後、司令から真面目に秘書艦をやってくれているご褒美にと、なんでもしてくれると言って下さったので、一緒に司令のベッドで寝て頂きました。

司令の腕枕は至高でした。
司令が寝静まった後、司令を起こさないように何回も■■をしたのは、内緒ですよ、司令?

司令は気付いてないでしょうが、このベッドで寝る度、■■をしているのです。
いつも起きる度に■■の後片付けが大変ですが、司令を愛するが故、なんですよ。

司令、私の愛しい司令。
貴方が私を見てくれる日まで、ずっと側に居ますからね。
寝ている時も、食事をしている時も、執務中も、散歩中も整備中も会議中も視察中も休憩中もお風呂中も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も


◉◉◉


「……」
「……」

余りの筆圧の強さに破けたのか、途中で途切れたページと、所狭しと貼られた提督の写真が顔を覗かせる日記を、夕立は静かに閉じた。

不知火も夕立も、嫌な汗がダラダラと全身を伝って衣服を濡らした。

そう、これは見てはいけないモノだったのだ。
ここで踵を返し、日常へ戻ればいい。
今なら誰もこの日記を見た事を知らない。

「私達は何も見なかった、そうですね」
「うん、何も見なかったっぽい」


「へぇ、何を見なかったんですか?」


「それは勿論野分のにっ………………き……」

瞬間、部屋の中が凍り付いた。
嫌な寒気が2人の背後から吹きつけてくる。
まだ夏だというのに、カタカタと身体が震えた。

「なんていけない姉さんでしょうか。
妹の日記を盗み見るなんて……。
そうは思いませんか、夕立さん?」
「あ、あ、あああああ……」
「不知火姉さん、〝野分〟の日記を勝手に見るなんて、そんな事……赦されると思ってるんですか?」

すらりと背後から2人の顔に手袋をはめた手が伸びてくる。
手は2人の頰や顎を撫でながら、ゆっくりと眼球の前で止まった。

「は、……ひぃ…………」
「の、のわ、のののわき……ちゃ……」


「他人の日記を盗み見るような目なんて、必要ア リ マ セ ン ヨ ネ ?」


「「ひぃぎゃあああああああああああああああああああああああああッ‼︎」」


その絶叫は艦内に留まらず、鎮守府中に響いたという。


◉◉◉


深夜 リンドヴルム
提督執務室

「しかし、おかしな事もあったもんだ、なんで部屋の前で泡吹いて突っ立ってたんだ、あの2人?」

今日の提出された書類をあらかた片付けた俺、神宮司一葉は、野分の淹れてくれた紅茶を飲みながら、疑問を口にした。

昼過ぎ、鎮守府中に響いた絶叫の後、執務室の前で棒立ちのまま気絶していた不知火と夕立が発見され、一時騒動となった。

2人の意識が回復した後で問い質したものの、何があったのか記憶が全くないそうだ。
身体的に問題も無く、白昼夢でも見たのだろうという結論に至り、その場で解散となった。

「きっと怖い夢でも見たんですよ」
「怖い夢……ねぇ……」

野分が紅茶のお代わりをカップに足しながら言った。
ま、身体的に問題がなかったのであれば、深く追求する必要も無いだろう。

「ん? 野分、紅茶の淹れ方上手くなったな」
「え、本当ですかっ⁉︎」
「ああ、凄く美味いよ。
香りもいいし、リーフもきめ細かい。
喫茶店で出る紅茶より好きだよ」
「ありがとうございます、司令っ!」

紅茶を褒められた野分が嬉しそうに笑う。
最近は表情が硬くなっていた様に思っていたが、そうでもなさそうで安心した。

「さて、今日は久しぶりに早く片付いたし、早く寝るかな」
「あ、あの……野分、お伴します」
「え? あ、いや……まぁいいか」
「ありがとうございます、司令」

ベッドに横になると、野分が傍に潜り込んでくる。
そのままベッド脇のスイッチで電気を落とし、眠りについた。


「クスッ……(ぺろ)」


その時、野分が意味有りげな嗤いを浮かべながら舌舐めずりをしていたのに、俺は気付かなかった。 
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