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黒魔術師松本沙耶香 天使篇

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14部分:第十四章


第十四章

「そうしているのよ」
「ふん。どうやら我等のことを知ってか」
「既にだというのだな」
「人は貴方達を知ることができるのよ」
 こうも言ってみせた沙耶香であった。今彼等は公園の中と外で睨み合う形になっていた。そのうえで言葉を交えさせているのである。
「色々な方法でね」
「そして戦うこともできるというのだな」
「そうだな」
「そうよ。言いたいことがわかっているのね」
 応えながら微笑んでみせる。それからであった。
「それじゃあ」
「来るか」
「やるというのだな、我等と」
「ならばだ」
「どうも貴方達の様な存在ばかりが相手だと」
 今度は薔薇を出してきたのであった。紅の薔薇でまずは彼女自身を取り囲んでみせてきている。
「退屈になってくるわね」
「我等を愚弄するというのか」
「愚弄はしていないわ」
「では何だというのだ、今の言葉は」
「嘘は許さんぞ」
 言いながら言葉にさらに殺気を込めてきている。本気で怒ってきているのがわかる。
「その様なことを言っておきながら」
「言い逃れをするわけでもあるまい」
「私は今まで言い逃れをしたことはないわ」
 余裕に満ちた微笑で返した沙耶香だった。
「そんなことはね」
「では何だ、今の言葉は」
「愚弄でなければだ」
「真実よ」
 それだと言ってみせたのだった。
「真実を言ったまでよ」
「真実だというのか?」
「それが」
「そうよ。ではまた言うわ」
 その右手の紅薔薇を己の顔の前に悠然と出しながらの言葉だった。
「貴方達は異形の者としては」
「ふむ、何だというのだ」
「その者達としてはだ」
「誰かの下にいる立場ね」
 こう彼等に言うのだった。
「精々下士官といったところかしら」
「それだというのか」
「我等が」
「それも伍長といったところね」
 その辺りだというのであった。そしてこうも言ってみせたのだった。
「若しくは兵士ね。その辺りね」
「それでどうだというのだ?」
「我等が」
「貴方達の上には将校がいるわね」
 軍に例えた話がさらに続けられていく。
「兵士も下士官も将校が指揮するものだから」
「ではその将校はだ」
「どなただというのだ」
「あら、自分で言ったわね」
 異形の者のうちの一人の言葉に反応を見せたのだった。
「今自分で。よかったわ」
「何、自分でだと?」
「言ったというのか」
「そこでどなたと言ったわね」
 それだというのだ。その告白は。
「普通ならここで誰かと言う筈ね」
「くっ、まさか」
「そこから察したというのか」
「誰も上にいないのならそう言う筈。けれど今どなたと言ったわ」
 このことを指摘するのだった。その言葉は鋭くそれ自体が鞭の様であった。
「それこそが貴方達の上に誰かがいる証拠ね」
「おのれ、そこまで察するか」
「この人間、どうやら」
「言っておくけれど頭には自信があるわ」
 実際に自信に満ちた笑みも浮かべてみせた。
 
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