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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦十日目(1)×無頭竜潰しでの詳細報告

九校戦も最終日を迎えた。今日から行われる競技はモノリス・コードの一種類のみとなり、九時から決勝トーナメント第一試合は十時から第二試合。午後一時から三位決定戦となり、二時から決勝戦が行われる予定となっている。三時半から表彰式と閉会式となり、五時には競技場における九校戦が全て終了となるが、七時からパーティーが開かれる。

開会前の懇親会と違って、閉会後のパーティーは本当の意味で各学校の親睦会ともなり得る。このパーティーは毎年少なからず、遠距離恋愛カップルが誕生する位だと聞いている。高校生同士の交流だけでなく魔法師社会の有力者と面識を得られる機会であり、特に三年生はその両面でこのパーティーを楽しみにしている者も多い。トーナメントに勝ち上がった四校にとっては、それも全て試合が終わってからの事。

各校とも既に慌ただしい動きは無いが、選手もスタッフも静かに決戦の場を待っていた。第一高校の天幕も例外ではなく、目を閉じて泰然と座る会頭中心に、ある者は緊張した面持ちで、ある者は逸る心を懸命に抑えながら選手もスタッフも一試合目の呼び出しに備えていた。

十文字克人、辰巳鋼太郎、服部形部の三選手であり、技術スタッフの中には五十里の顔も見える。少し離れた場所で、真由美・摩利・鈴音・あずさと言った生徒会を中心とする幹部の面々。花音を始めとする二~三年の選手もいたが、入り切れなかった者は応援席で選手の登場を今か今かと待っている。

その一方で朝起きたら既に響子、深夜、真夜、深雪の姿は無くて鍛錬時にはいたのだった。昨夜は少々激しかったのもあったが、昨日の任務で活躍した者達もいつも通りに鍛錬してから事務連絡などは無かったので朝鍛錬を終えたとしても、全員整列してから敬礼となった。

「昨夜の者達はご苦労であった。既に知っていると思うが、無頭竜は潰したのでもう問題を起こす者はいないだろう。今日が最終戦とも言えるが、無事に終わらせるように警戒は怠るなよ?それでは諸君の職務を全うしつつ、今日が最後の朝鍛錬での事務連絡である。解散!」

「織斑少将に敬礼!これにて九校戦での朝に行う事務連絡を終了する」

そう言ってからの俺らは、朝鍛錬を終了後にトレミーにて風呂を入ってからブリッジにて昨日の詳細を聞いたのだった。あの後俺らが退散してから、公安警察やら国際警察がガサ入れをしてから証拠品を集めていた。

段ボール何個か運んでいたが、一番の証拠は加害者である無頭竜幹部らを中心として取り調べをしていたと聞いた。コンピューターシステムに記録されていない極秘帳簿の類を没収した事と、俺が聞き出した首領の名前や住んでいる場所やらを情報として流したので大活躍をしたと言ってもいい。

「昨日は本当にお疲れ様でした一真さん。久々に私と深夜と真夜が作った手作り朝食を食べながら、風間隊長をお待ちなさいな」

「そうさせてもらうよ響子。ではいただきます」

玄信の部屋に来ていた俺に対して、響子は昨日からの今までやって来た事のお礼として今日の朝に作ったと言える料理を食べていた。部屋の主である風間少佐は、どこかの誰かの密談に出掛けていたので戻ってくる間にお礼という二度目の朝食を食べていた。

俺は結構食べる方なので、手作り料理を食べてからデザートを食べていた所であった。昨日までの九校戦についてや今後の事についてを会話しながら、飲み物を飲んでいた所で四人が戻ってきた。

「お待たせしまい申し訳ないですな織斑少将」

「いやいい。待っている間に響子手作り料理を食べていたからな。それより幸典はどうした?」

「大型輸送車に乗せている無頭竜幹部らとジェネレーターの引き渡しを行っている。山中軍医少佐として、自白剤を持ちながら取り調べをしているそうですよ」

響子は立って敬礼で、俺は座りながら敬礼していた。玄信と烈は正面に座り、連は俺らの隣に座り、繁留は俺の隣に座った。

「昨夜は本当にご苦労様でした」

挨拶も簡略化してから、そう切り出した烈だった。

「やっと警戒心を強くしないで済むので、任務から解放された気分だ」

「私と烈も聞いていましたが、流石は一真様ですな。殺害されたかと思いきや生きているのですからな」

「昨夜は貴重な実戦データが取れたので、僕としては良い実験材料にはなりました。直線で約千二百メートルで、あの距離で対人狙撃が出来る長距離魔法のデータは中々手に入らない。超長距離精密射撃が本来のスタイルで、OTH(over the horizon)狙撃も熟す一真さんにとっては物足りない距離だとは思うけど、僕にとっては満足の行く観測結果だった」

ちなみにOTH(over the horizon)とは水平線狙撃をも熟す事であるから、俺にとってはどんな距離であったとしても超長距離射撃はお得意である。

「まあそういう事なので、昨夜の土産については国際警察や公安と内情からも予想以上に満足していたそうだ。一真さんは任務を果たしたのですから、これにて任務を終えてからしばらくはご自由となりますな」

「犯罪シンジケートのトップや幹部らの情報に、それ程の価値でもあったのか?」

昨夜相手に電話をして、長々と証拠を語らせた事であった。まあこの後黙秘であったとしても、既に話したので黙秘をしても意味が無い。

「織斑少将も知っての通り、無頭竜がただの犯罪集団ではない。『ソーサリーブースター』についてはどのくらい知っていますか?」

「フェルトから聞いた通りなら、簡単に言うなら魔法増幅装置だろうね。起動式を提供するだけでなく、魔法式の構築過程を補助する機能も持つデバイスの一種。魔法師が、本来持っているキャパシティを超える規模の魔法式形成を可能にする事もあり、通常デバイスとは異なりブースターは、一つの特定の魔法のみに対応しそれぞれ使用できる魔法は異なると聞いている」

俺が語ったが、魔法も魔法式という『信号』を魔法師から対象物のエイドスへ出力するプロセスを含むから、増幅という概念と全く無縁なモノとは言い切れない。魔法式の出力プロセスは、イデアという単一情報プラットフォームの中における情報の移動であり、魔法式という信号が魔法師と対象物の間を物理的に移動する訳ではない。魔法師が構築した魔法式を、一体どこかで増幅するというのか・・・・まずそこから疑問でもあった。

「まあその通りなんだけど、普通の意味での増幅ではなく魔法式の設計図を提供するだけでなく設計図を元にした魔法式の構築過程を補助する機能を持つデバイス、と表現するのかな?ブースターというより増設メモリーの方が分かりやすいと思う。俗称が本質を表現していない何て珍しい事ではないが、無頭竜はソーサリー・ブースターの供給源なんだ。道具は製造原料に問題がありまして、真っ当な企業では同じ物は製造出来ない。国家でもバレた時のリスクが高すぎるので、ソーサリー・ブースターは事実上、無頭竜の独占供給源状態となっていたんだよ」

「ソーサリー・ブースターの製造と供給を停止させる為に、ターゲットに関しての情報が欲しかった訳か。アレはこの世界に存在してはならない禁忌のアイテムだろうが、無論俺らCBや繁留らも使いたくないもんな。デバイスの中枢部品である感応石の製造方法については、詳細も含めてミレイナとフェルト頼む」

『了解です~。そもそも感応石とは想子(サイオン)波動を電気信号に変換して、電気信号を想子(サイオン)波動に変換する合成物の事ですぅ~。分子レベルから化学的に合成し、ネットワーク構造に発達させた神経細胞(ニューロン)を結晶化となって製造するです~』

『ネットワーク構造の違いによって変換効率が決定される為、重要なのはニューロンの持つ物質的な特性ではなくネットワーク構造のパターンであるとも言われています。現在の所、人造ニューロン以外の素材から感応石の製造に成功したという例はまだ報告にはありませんね』

端末から聞こえたトレミーブリッジにいたミレイナとフェルトによって、感応石についての説明されていた。まあ俺は現代魔法については余り詳しくないからか、主に蒼太や沙紀らが説明するが、ここにはいないので代わりに説明させた。

「ま、その通りなんだけどブースターの中枢部品は、人造ニューロン以外の素材から製造された感応石で『それは人間の脳であり、魔法師の大脳ですね』その通りさ。動物の脳細胞を使用した場合、脳内に残留する想子(サイオン)の所為で使用者との感応が成立しないんだ。人間の脳細胞を使用した場合も同じ何だけど、無頭竜は魔法工学の常識を覆したのさ」

『通常の感応石と機能的に全く同じという訳ではありません。一つのブースターは一つの特定魔法しか使用不可となりますが、使用出来る魔法は個々のブースターによって異なります。パターン化されたと言っても、製造時の残留思念によって使用可能となる魔法のバリエーションか種類が変わってくると推測されています。製造過程で同じ種類の強い感情を与えると、同じ種類のブースターが出来上がるらしいですよ』

「・・・・それを例える感情なら、脳を摘出する直前に大きな苦痛や恐怖を与えるとかなら蠱毒の原理かと」

「それについては一真さんと同感出来るよ。ブースターは蠱毒の技術基盤から発展したものなんだよ。僕達は魔法を武器として魔法師を軍事システムに組み込む事を目的とする実験部隊だけど、魔法師を文字通りの部品にするつもりは無い。まあCBは主にISやMSとオートマトンを持っている部隊構成だけど、僕らは魔法師であってここにいる皆も下士官・兵卒を含めて部隊構成員のほとんどが魔法師であり、織斑少将の言うポンコツジェネレーターというのはまだ許せるかもしれないけどブースターは製造も使用も絶対に認める訳にはいかない」

「そういう感情面を抜きにしても、魔法師のキャパシティを拡張するブースターは軍事的にもとても脅威だ。北米情報局(NAIA)も同じ見解で、内情に協力を求めていたらしい。壬生も随分と感謝していたようですぞ織斑少将」

「織斑家は最早十師族でなくとも、後ろ盾にはここにいる独立魔装大隊や零家・四葉家・七草家と私である九島烈がいる事なので安心して下さいませ」

「そうさせてもらうよ。と言う事で俺はそろそろ失礼させてもらう、そろそろ始まるからな」

そう言ってから説明会を終えたので、投影型端末をポケットに入れてからホテルにある部屋から急いで応援席に向かったのだった。なお烈も途中まで歩いていたが、VIPルームに向かったがそこには深夜、穂波さん、真夜がいたので一緒に観戦をしていたのだった。 
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