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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第29話:思い出のバカンス……反感を買います。

(グランバニア城・王家のリビングルーム)
オジロンSIDE

『ふん、よく聞け。我々が要求する身代金は……“500000000(ゴールド)”だ!』
あまり利口ではないと感じていたが、ここまで思い切りの良い馬鹿が犯人だとは想像できなかった。
思わず隣で事態を見詰めていたティミーと目が合ってしまう。

彼もワシと目が合うと、肩を竦めて苦笑いだ。
「これではあの二人に敵わない。良いように弄ばれて、最後には地獄で反省会でしょうね……」
全く同意見だな。

現在こちらでは、MH(マジックフォン)の死角でこの喜劇に出演する予定の俳優陣がスタンバイしてる。まるで演劇の舞台袖だ。
ティミーもワシも普段着ないような厳かな服に身を包み、王子と大臣らしさを醸し出そうと努力している。

先程この舞台袖に入ってきたリュリュも、誰かに借りた豪華なドレスを着てリュカからの合図待ち状態だ。
それにしても……誰に借りたのか、随分と胸を協調した衣装だな。
しかもサイズが合ってないのか、胸が溢れんばかりに盛り出している。
ティミーを初め男共の視線を釘付けにしている。

「もーティミー君、さっきから胸ばかり見てるぅ。エロ王子ね」
「ふざけんなよ……そんな胸を強調したドレスは、お兄ちゃん許しませんよ! 一体誰が用意したんですか? 後で褒……叱らねば」

「私の服よ……悪い?」
この喜劇の舞台で或るリビング中央では、リュカとウルフが切々と犯人等に高額すぎる身代金の用意不能を説いているが、舞台袖ではビアンカ殿が息子の言葉に気分を害している。

「母さんのドレスだったんですか……通りで」
「“通りで”何?」
「ビアンカさ~ん……サイズが合いませ~ん。胸が苦しいで~す、でもウエストはユルいです」

「腹立つ娘ね! その乳片方切り落として、腹に巻けばバランスとれるんじゃないの……私が切ってあげましょうか!?」
リュリュの一言に手近にあったナイフを握り座った目で返答するビアンカ殿……

「ジョ、ジョークですよぉ! お父さん譲りのユーモアじゃないですかぁ」
「貴女の父親は、私の体型を馬鹿にしないのよ。なんせラブラブだから……貴女と違って」
ビアンカ殿の体型は幾分も貶される要因は見当たらない……だが、リュリュのスタイルと比べてしまうと、流石に見劣りする。

「母さんは何時までも綺麗ですよ。常に“血の繋がりがなければ……”と悔やむ毎日ですから」
「貴方の場合は、私との血の繋がりではなく、リュカ(父親)との血縁でしょ。その隣に居るナイスバディーな妹との……」

「困りましたねぇティミー君。私は眼中にないんですけどねぇ?」
「知ってるさ……でも、それを口に出して僕に言うんじゃない! 傷付くだろ」
嫁に睨まれているのも気にせず、最近は言うようになったティミーだ。

「ごめんあそばせお兄様。傷付いてしまわれたのなら、何時までもお綺麗なお母様の胸に抱き付いて、慰めて戴いたら宜しいでしょう」
「「最近、性格悪くなったんじゃない?」」
リュリュの反応に思わず二人(ビアンカ殿とティミー)は同じ台詞を呟いた。

「あ、お父さんから合図だ! じゃぁ私行ってくるぅ!」
二人の呟きが聞こえたのか分からないが、テーブルの下から送られるリュカの合図を見てリュリュは大きな胸を揺らしながら舞台中央へ駆けだして行く。
アレがリュカの血筋なのだろう。

オジロンSIDE END



(ルクスリエース・バンデ号)
ウルフSIDE

『お前……5億(ゴールド)がどれだけの量なのか解ってるのか?』
言ってやった感を纏い満足げに胸を反らす犯人に対し、リュカさんの呆れ返った返答がMH(マジックフォン)から聞こえてくる。

予想以上の馬鹿さ加減に、俺もリュカさんも勝利を確信してる。
何せ5億と犯人が言った瞬間、流石のリュカさんも鼻で笑ってしまったくらいだから。
まぁ興奮してる犯人には、気付かないレベルでの嘲笑だったけどね。

『確かに先日貨幣の一新を実行した。だが、それにしたって5億は大量だ! お前等そんな大量の紙幣を運べるのか!? いやそれ以前に、そんな大量の紙幣がこの短期間で用意されてると思ってるのか?』

「馬鹿野郎、既に世の中には出回ってる紙幣だろ! 俺等を騙そうったってそうはいかねーぞ!」
『馬鹿は貴様だ! 既に世の中に出回ってるって事は、国庫には僅かしか残ってないって事だろが! ちょっと頭を使えば直ぐに出てくる答えだ……やっぱり13(ゴールド)で手を打てよ、な?』

「打つ訳ねーだろ! 5億(ゴールド)つったら5億(ゴールド)だ!」
『だからねーんだよ、そんな大金ねーんだよ!』
平行線……リュカさんと犯人の話し合い(怒鳴り合い)は平行線だ。このままではまた犯人が人質に対して危害を加えそうな発言をする、そう思った時……

『ウルフ様ぁ~!!! ご無事でいらっしゃいますか?』
「うぉ!?」
MH(マジックフォン)の死角から突如巨乳美女が姿を現した。

ご紹介しよう、彼女こそ私のフィアンセで或るリュリュ姫様だ。
サイズの合ってないドレスを身に纏い、撓わな胸を大きく揺らし、悲壮感を滲み出しながら我らの視界に入ってきた。

予想を遙かに超える衣装での出演に、流石に声を上げてしまったのだが、犯人等も彼女の胸に意識を持って行かれた為、誰も気にとめなかった様子だ。
それにしても……凄い胸だな。

「リュリュ様、私は無事でございます。彼等は紳士的で、危害を加えるような事は致しておりません」
『あぁ良かったですぅ……私はウルフ様の事が心配で心配で』
祈るかのように両手を胸の前できつく握るリュリュさん……更に胸を強調させ、(ヤロー)共は目を離せなくなる。俺もね!

『お父様、ウルフ様は無事に戻ってこられるんですよね!?』
『リュリュ……今その事で彼等と大事な話をしているんだ。邪魔をしてはいけないよ』
MH(マジックフォン)のビジョンでは、リュカさんがリュリュさんの肩を抱き締め、画面外に居る誰かに合図を送る。

『父上、ウルフ殿が囚われたというのは本当ですか!?』
するとティミーさんがオジロン大臣とユルメイド(スノウさん)を引き連れ颯爽と現れた。流石モノホンの王子様……格好いいなぁ。

『誰から聞いたんだよ?』
『リュリュが泣き叫びながらこちらに向かっていたんです』
『殿下……どうやら囚われてるのはウルフだけではない様ですぞ』

騒がしくなったグランバニア城側で、忠臣面したオジロン大臣が顔を強張らせてティミーさんにMH(マジックフォン)を見るよう指さす。
『なんて事だ……ウルフ殿、そちらば無事なのかい?』

「はい殿下。彼等は紳士的で我々に危害を加える事は……」
俺はティミーさんに現状を答えながら、チラリと犯人に視線を向ける。
犯人も俺の視線に答えるように黙って頷き、危害を加えない事を約束する。
まぁそう仕込んだんだけどね。

『リュリュは部屋に戻ってなさい』
俺がこの交渉にとって重要人物であると言う事と、お色気オッパイを皆に知らしめたところで、リュリュさんの出番は終了。
ユルメイド(スノウさん)に手を引かれつつ、我らの視界から退場していった。ちょっと残念。

『それで父上……彼等の要求は何ですか?』
『13ゴー「彼等の要求は5億(ゴールド)の身代金です殿下!」
アホ全開の王様が勝手に“13(ゴールド)”と言うのを阻止するべく、殿下の問いかけに割り込む形で答える。

『5億(ゴールド)!? そんな無茶な……』
『だから予もそう言ったんだよ。13(ゴールド)で手を打てって……』
『陛下……5億の要求なのに、13(ゴールド)で手を打つはずがないでしょう』

アホ王に良識的な家臣が対応。
我が儘いっぱいのアホ王は、この状況に膨れっ面。
そろそろ値切り交渉に突入かな?

『もういいよ。コイツ等は不可能な金額を言って、国家を困らせてるだけのテロリストだ! どうせ人質は皆死ぬんだから、武力行使しちゃおうよ』
我が儘で考える力のない馬鹿が行き着く結論に到達したアホ王。
それを聞いた犯人は、恐怖を感じ取ったらしく覆面から覗く目に怯えが窺える。

『馬鹿な事を言わないで下さい父上。大切な国民の命を危険にさらす事は出来ませんし、何よりウルフ殿を失えば我が国家に多大な損失を与えます。……それにリュリュが悲しむ』
うんうん……俺は超重要人物だよ。犯人等も他の人質を盾にするより、俺一人を盾にした方が効率的だと思ってるはず。

『そんな事言ったって、5億もの大金は無いじゃん!』
「いやいや陛下……今無くっても、何とか用意する事は出来ませんか?」
普通に考えれば5億もの大金を用意するのは、国家であっても大変な事。即ち時間が膨大にかかるって事。

『そりゃ税金の徴収を待てば5億くらいは集まるけど……先日徴収しちゃって各機関に配分しちゃったから、次に集まるのは1年後だぞ。待てるのか1年も?』
「あのー……1年待てる?」
俺は遠慮がちに犯人に問いかける。

「待てる訳ねーだろ!」
だよね~。
解ってて聞いたんだ、俺もリュカさんも。

『あの……こういうのは如何でしょうか。現在城にある金を全て集めて、それを身代金として支払うというのは』
良識的な大臣が折衷案を提示する。

「現在城には幾ら程あるのでしょうか?」
普段であれば国庫に1千万~2千万(ゴールド)の資金が用意されているが、本当の事は言わないだろうな。

『至急確認してきましょう』
オジロン大臣が俺の言葉に反応し、慌てた様子でMH(マジックフォン)の画面から消えて行く。
それを見計らい俺はMH(マジックフォン)の画面を消し、犯人に話しかける。

「見ての通りあの二人は良識的な人物だ。でもオジロン大臣は小心者で、殿下の威光に隠れてないと発言も出来ない。陛下に武断的な決定をさせない為にも、殿下を敵に回してはダメだ。あの方を味方にしてる限り、身代金は支払われるし皆の命も保証される」

「だがお前が居れば早まった事は出来ないだろう」
嬉しいねぇ……俺を超重要人物だと認識してくれた。
だが残念。アホ王には通じないんだよね。

「俺もそう思ってた……だが陛下は見捨てる気でいる様だ。如何やら娘に手を出した事が気に入らないらしい……全てをアンタ等(犯人)の所為にして、娘に手を出した俺を抹消したいらしい。あれだけの美女だからね、父親だろうが我慢できないんだろうよ。俺の死に悲しむ娘を、慰めるフリして……」

「ちっ……とんでもねー国王だな」
この会話はMH(マジックフォン)を通してグランバニア城へも聞こえている。
みんな怒ってないと良いなぁ……

ウルフSIDE END



 
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