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K's-戦姫に添う3人の戦士-

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1期/ケイ編
  K14 I LOVE YOU SAYONARA


 ケイを置いて緒川と共にエレベーターに乗った未来は、内心、不安でいっぱいだった。

「はい。リディアンの破壊は、ケイ君のおかげで最小限に抑えられています」

 緒川は通信機で弦十郎に現状報告をしている。

「これから未来さんをシェルターへ案内します。――それと司令。カ・ディンギルの正体が判明しました」

 これには驚いて、未来もつい緒川の言葉を待った。

「物証はありません。ですが、カ・ディンギルとはおそらく――」

 続く言葉は聞けなかった。
 エレベーターの天井が凹み、壊され、エレベーターの中にケイが落ちてきたからだ。

「きゃああ! ケイっ、ケイ!」

 未来はケイを何とか抱き起こした。
 出血こそ少ないが、体中が痣だらけだ。一体どんな凶敵と戦ったらこうなるのか。

 とっさに悲鳴が出かけて呑み込んだ。代わりに、縋るように、膝に寝かせたケイを強く抱いた。

 壊れたエレベーターの天井から降りて来て緒川の首を捉えていたのは、金蘭の鎧を着た女――櫻井了子と瓜二つの女だったのだから。

「こうも早く悟られるとは。何がきっかけだ?」
「塔なんて目立つ物を、誰にも悟られることなく建造するには、地下へと伸ばすしかありません。そんなことが行われているとすれば――特異災害対策機動部二課本部、そのエレベーターシャフトこそ、カ・ディンギル。そして、それを可能とするのは…っ」
「……漏えいした情報を逆手に取って、上手くいなせたと思っていたのだが」

 エレベーターが停まり、ドアが開いた。

 緒川は体をひねって金蘭の女の手から逃れると、懐から抜いた銃で女を銃撃した。だが女は何のダメージもないように立ち、宝石が連なる楔を放ち、緒川を拘束した。

「緒川さんッ!」
「未来さんっ……ケイ君を連れて、逃げ…っ」

 ――碧の光線が女の背中を撃った。

 女は光線に貫かれはしなかったが押され、楔に捕えていた緒川を落とした。

 ケイが横たわった態勢のまま片手でプリズムレーザーから中粒子ビームを撃ったのだ。

「まだ意識が残っていたか。さすがワタシが鍛えてやっただけはある」

 ケイは這いずってエレベーターから出ると、プリズムレーザーを杖代わりに立ち上がった。だがすぐに苦痛を呈して膝を突いた。

「イヤよ、しっかりして! ケイ!!」
「わ、かって、る……この、程度で、くたばれるか…よ!」

 未来は急いでケイの傍らへ行き、ケイの腕を肩に回させた。ケイは未来の肩を痛いくらいに掴んで立ち上がった。

「麗しいな。最愛の妹を利用してきた者を守ろうというのか」
「利用、だと…くっ…?」
「何故、二課本部がリディアンの地下にあるのか。聖遺物に関する歌や音楽のデータを、生徒たちを被験者にして集めていたのだ。もちろんその中にはお前の妹も含まれている」
「――――」

 プリズムレーザーを一払い。それだけでレーザー砲は碧に光るサーベルへと変形した。
 彼が両目に宿すのは、強い敵対の意思。その対象は金蘭の女。

 ケイは腕を震わせながらレーザーサーベルをふりかぶり、歌った。

「『俯かない 諦めない』…っ『pray Your Destiny』…! 『突破するんだ』! 『心のmaze』! 『そして』!! 『Your Future』!!」

 歌うほどにレーザーサーベル碧の刃の明滅する間隔が短くなっていく。
 ケイはそのレーザーサーベルを×字状に振り抜いた。
 碧に光る斬撃が女へと飛び、命中した。

 斬撃は女だけでなく通路の壁、天井、床さえも斬り抉るほどの威力だった。大きな煙が立って、未来はつい目を閉じて顔を逸らした。
 そして、もう一度目を開けて顔を上げた先で、女は立ったまま胴を×字状に抉られのけ反っていた。

「やった、の?」
「…まだ、だ…」

 女の、抉れていた部位が、塞がっていく。

「何回やっても、ああして、っ再生、するん、だ…俺じゃ、勝て、なかった…」
「当然よ。お前の纏うそれは、太陽の威を借るただのレンズ。神威にはあまりに程遠い。聖遺物と数えるもおこがましき兵器よ」

 ケイは再びレーザーサーベルを上段にふりかぶった。

「戯れに付き合うのもここまでだ」

 女が宝石の楔を無造作にこちらに投げ放った。
 直後、未来は横から突き飛ばされて通路の橋に転がった。結果として、楔に殴り飛ばされて床に叩きつけられたのは、ケイだけだった。自分を庇ったのだと分からない未来ではない。

 今の一撃でケイのギアは完全に解けた。

 女がこちらへ歩いてくる。――ケイに今度こそ引導を渡しに来る。

「やめてぇ! その人は、その人だけは…わたしの…ッ!」

 その時だった。倒れたケイと、歩いて来る女の間の天井が、瓦礫を落として大きく割れた。

「待ちな、了子」

 砂煙の中から立ち上がったのは、二課司令である風鳴弦十郎その人だった。

「ワタシをまだその名で呼ぶか」
「女に手を上げるのは気が引けるが、3人に手を出せばお前をぶっ倒す」

 弦十郎が両の拳を構えて腰を落とした。なぜかは分からないが、その構え方を見て、未来は響を思い起こした。

「調査部だって無能じゃない。米国政府のごていねいな道案内で、お前の行動にはとっくに行きついていた。後は燻り出すため、あえてお前の策に乗り、あえて守りに向かないケイ君を残し、他の装者を全員動かしてみせたのさ」
「陽動に陽動をぶつけたか。食えない男だ。だが! このワタシを止められるとでも!」
「応ともッ! 一汗掻いた後で話を聞かせてもらおうかッ!」

 ここでぽかんとなりゆきを見守っていた未来も我に返った。急いで起き上がり、倒れるケイに駆け寄った。
 しかし今度は、何度名を呼んでもケイが目を覚ますことはなかった。 
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