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ハルマゲドンだ

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第一章

                        ハルマゲドンだ
 いきなりだ、世界中のテレビに。
 十二枚の漆黒の翼を持つ顔はいいがやけに陰のある男が出て来てこんなことを世界に宣言した。
「私はサタンだ、これから世界を滅ぼす」
 最初誰もがこれは何のバラエティ番組だと思った、だが。
 今度は六枚の翼を持つやはり顔はいいが眩いにも程がある男が出て来て彼もまた世界に対して宣言した。
「私はミカエル、世界を守る」
 彼は彼で言うのだった、そして。
 二人は共にだ、世界にさらに言うのだった。
「我が悪魔達が世界を制するのだ」
「世界は我々天使が守る」
「私の配下の魔王達に従え」
「私が神に授けられた天使の軍勢を信じるのだ」
 こんなことを言うのだった、そして唐突に。
 二人はそれぞれテレビから姿を消した、最初は誰もが呆気に取られてだ。そしてこんなことを言ったのであった。
「何のジョークだ?」
「今のは何だ?」
「テレビ局の悪戯か?」
「サタンだのミカエルだの」
「あまりいい番組構成じゃないな」
「脚本書いたの誰なんだ」
「下手な脚本だな」
 こう話すのだった、だがすぐにだった。
 この放送が世界同時でしかもそれぞれの国の言語に合わせていることがわかりだ、一つのテレビ局の冗談ではないことがわかった。
 しかもだ、南極点においてだ。
 そのサタンだのミカエルだの言う者達が出て来た、しかも二人の姿はそれぞれ二百メートルを優に超えるものだった。
 その巨大な姿を現してだ、二人はまた言った。
「世界最終戦争の時ははじまったのだ」
「神の審判の時がな」
「人間達は選ぶのだ」
「悪魔か神か」
 何故か息を合わせて言う二人だった。
「そなた達の選択肢は二つ」
「生きるか死ぬかだ」
 どちらかにつけというのだ。
「悪魔につけば悪いことはないぞ」
「神に従えば幸せになるのだ」
「さあ、私を選ぶのだ」
「私を信じるのだ」
 二人でそれぞれ世界に言うのだった、南極点でも。ここにおいてだった。
 世界の人々は本当にサタンとミカエルが出て来て彼等に言ってきていることがわかった、ここに至ってようやくだった。
 彼等は自分達の事情を理解してだ、こう話した。
「ハルマゲドンか」
「これからハルマゲドンが起こるのか」
「あのヨハネ黙次録みたいなことがか」
「これから起こるのか?」
 こう話すのだった。
「まさかな」
「本当に悪魔とか神様がいてな」
「ハルマゲドンやるなんてな」
「しかも二者択一か」
「どっちか選ばないといけないのか」
「悪魔か神か」
「どっちか、か」
 人々は自分達が置かれている状況をようやく理解したのだ、だが。
 人々は二人がそれぞれ言う要求についてだ、こうも思うのだった。
「いきなりそう言われてもな」
「世界が滅亡するとか」
「ハルマゲドンとかな」
「救済だの何だの」
「急に言われても」
「困るんだけれど」
 これが彼等の本音だった、それでだ。
 人々はこの話がキリスト教の話なのでだ、とりあえずだった。
 そのキリスト教の中でも最大勢力であるローマ=カトリック教会の総本山でありキリスト教といえばここになるバチカン市国にお願いしたのだった。 
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