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元虐められっ子の学園生活

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目玉競技って何か意味深…

参加することに意義がある。
近代オリンピックの父である、ピエール・ド・クーベルタン男爵が演説で取り上げ、
広く知られた言葉である。
私はこの言葉を大変疎ましく思っている。
近来、この言葉は強制参加の謳い文句として誤用されているが、私はこの誤用に含まれたことがない。
まるでこの言葉が意思を持ち、恰も「貴方は例外です」と告げているように感じてしまうのだ。
何で私だけ、と。思うことは少なくはない。
人は見かけだけで判断することが大半であるが、それでもこの場合は酷いものだと異議を唱えたい。何故なら仲間はずれは嫌なのだ。
仮にそれが当たり前で、尚且つ世界の常識であるのなら、私は論争の準備も事欠かない次第である。
結論を言おう。
私は仲間外れや外見的な差別に異議を唱える!




体育祭当日。
奉仕部のメンバーは運営委員に設置されたテントにて、その日の進行様子を見ていた。
予想していた様に、各種目で憎き葉山が活躍して白組の点数を底上げしていっている。
その為、対する赤組は何とか食らいつくように点差を縮めていくが、中々に追い付けないのが現状だ。
やはりと言うか、次第にやる気が無くなっていく赤組の面々が、女子に囲まれている葉山を見つけては睨む形で憎しみを盛り上げているようだった。

「貴方が鳴滝先輩ですね」

「ん?」

そんな中、じゃんけんに負けた俺が雪ノ下達の飲み物を買いに行こうと自販機の前に立ったとき、背後からハスキーな声が聞こえて振り返った。
見れば背の低い感じの女子が立っており、勝ち誇るような顔をしていた。

「だったら何だ」

俺は再び自販機に向き直り、指定された飲み物を買うことにする。

「いえいえ。ただ葉山先輩の妨げ足り得る人物を拝見しに来ただけですよぉ?」

葉山の妨げ…なるほど。つまりこの女もアイツの勢力と言うことか。

「そりゃご苦労だったな。
さっさと帰れよ。その葉山先輩とやらが待ってるんじゃねぇのか?」

こう言う輩とはあまりに関わらないのが吉であると俺の経験が告げている。

「もしかして嫉妬してるんですか~?怖い外見してかわいいところがあるんですね」

「可愛いねぇ…初めて言われたわ。
んで?それだけだったら早く行けよ。俺ってば結構忙しい方だから」

「じゃあ一つだけ聞きますけど、貴方は葉山先輩とどういう関係なんですか?」

何だこいつ。いきなり意味のわからん質問してきやがって。
もしかして海老名と同じ想像でも働かしてんのか?

「元虐めっ子と虐められっ子の関係だな。つーかそんなこと聞いてどうすんだよ?葉山にでも告げ口する気か?俺はそれでも構わんが」

「別に告げ口とかはしませんけど…」

「あっそ。用件はそれだけか?だったら俺は行くぞ」

俺はそれだけ言って缶を持ち、歩き出す――

「じゃあその顔の傷も葉山先輩に付けられたんですか?」

――前に足を止めた。

「てめぇ…何処かで見たのか…」

無意識に目が鋭くなる。

「ひっ……い、いえ…ネックウォーマーで隠してるから…傷でもあるのかな…と」

つまり、かまをかけられたと言うことか。

「……傷があるのはその通りだ。アイツが付けた傷じゃないがな…」

「そうですか…すみません、軽率でした」

「そう思うなら早く戻れ。もうすぐ女子競技の時間だ」

「あ、はい」

急いで戻っていく女子生徒。
何がしたかったのかは分からないが、強ち悪いやつではないのかもしれない。
そう思いながら運営委員のテントへと歩いていった。


「――遅い。何処で油を売っていたの?飲み物を買ってくると言う簡単な作業すらまともにこなせない木偶の坊立ったのかしら?木偶の滝君」

運営委員のテント。
いざ戻ってみれば即座に罵倒が飛んでくる始末だった。

「いや、これには深い訳があってだな…」

自販機の前で売ってましたとは言えない。
正直に言うことは美徳なのかもしれないが、ここで正直に言ってしまえば更なる罵倒が飛んでくるに違いない。
嘘はあまり好きではないが、ここは身を守るために使うしかない…!

「なら、何故こんなに遅くなったのかしら?」

雪ノ下は腕を組んで冷たい目線を向けてくる。
俺の一挙動すら見逃さないと言うその目は、明らかな『疑惑』を投げ掛けている。

「せ、先生と話してたんだよ」

「あら、どの先生かしら?名前で言わなければ分からないのだけど」

「あ、あー…最近物忘れが激しくてな…忘れちゃったと言いますか…な?」

「あら、貴方の頭はそんなことすらも忘れて足舞うほどに単細胞だったのね?認知症かしら?」

やばい、どんどん土坪にハマっていく…!
比企谷と由比ヶ浜は近寄らないように距離おいてるし!
仲間がピンチだぞ!助けろー!

「ほら、何かいってみなさい。
そこまでして隠そうとする理由は何かしら?」

ずい、と一歩詰め寄ってくる雪ノ下。
こうなれば最近呼んだラノベの主人公を灯影するしかねぇ…!
………確か女の子と話すときはまず服装を誉めるんだよな?

「そ、それよりもその格好は似合ってるよな!雪ノ下の可愛さを一層際立たせているし!」

「っ……そんなことで言い逃れが出来ると思ってるの?」

……ん?ちょっと揺らいだ?
もう少し続けてみるか…。

「いや、これは本心だよ雪ノ下。
確かに普段では見られない格好だが、下手なドレスとか礼装を想像するよりよっぽど綺麗だ」

「~~~~っ!??!?」

き、効いてるぞ!
よぉし!更に畳み掛けて――

「(おい鳴滝、もうやめとけ!」
「(何だ比企谷!このままだと俺は罵倒を浴びせられまくるんだぞ!回避するためには仕方ないことなんだよ!」
「(だがそのやり方は不味い!もしぼろが出たら更にひどい目に合う!」
「(しかし今更じゃないのか?!ここで引いても結局罵倒じゃないのかっ!」
「(だからひどくなる前に止めておけ!
このまま行けば女子全員を敵に回すぞ!」

女子全員を敵に?ふっ…そんなの今に始まったことじゃない。今更そんな事で俺が怯むと思っているのか?

「二人とも…」

「(兎に角、俺はまだやめるわけにはいかないんだ!」
「(よく考えろ!」

「聞こえないのかしら?」

「(考えた結果がこれなんだ!もうどうにもならない!」

「た、確かにどうにもならないな…」

急に比企谷が通常の声で話し出した。心なしか、何かに怯えているように見える。

「おい、どうしたんだ……よ…」

比企谷に問いかけようとしたところで肩を引かれる。顔だけ振り替えればビックリするほど雪ノ下だった……!

「比企谷君は…まぁ良いでしょう。でも鳴滝君、貴方はダメよ。

(――なんでだよ。比企谷も仲間に入れてあげようよ。)

先程からまぁ好き勝手に言ってくれたわね…そんなに暴言を吐かれたいなんて、自虐趣味でもあるの?痛々しいわね。

(――――そんな趣味は断じて持ち合わせていない。)

だいたいさっきの言葉で私を騙せるとでも思ったのかしら?

(――――結構動揺していたと記憶しているが?)

だとしたら笑わずにはいられないわ。貴方の頭は何時から芸人のような軽んじた内容に様変わりしたのかしら。

(――芸人の頭は脳内お花畑とでも言いたいのか?
全国の芸人に謝ってこいよ)

ついでに言えば貴方が表面上誉めてくれた服装に関してだけれど、私はこの服装を好ましく思ってないの。
これは大将を勤めるに当たって仕方なく着ているものであって、仕方なく着ているものなの。
それすらも考慮できない時点で貴方の考えが浅はかであることを示している上にどうしようもなく哀れみを誘うようで滑稽でしかないわ。
もっと付け加えるのなら、貴方が買ってきてくれた飲み物だけど、もともと次の競技の前には飲んでおきたかったものなのだけど、競技の合間に飲もうと考えていた私の予定を崩してくれた事に少なくない怒りを覚えているわ。
私の貴重な時間を潰してくれた貴方はこの事についてどう考えているのかしら?」

もう、言われたい放題である。

「確かに、俺はお前を傷つけてしまったのかもしれない。
正直に言えば俺は油売っていたことに間違いはないんだ」

「ついに認めたわね。それで?何か申し開きがあるのかしら?」

「ああ。今回は全面的に俺が悪い。特に言い訳にお前の服装を誉めてしまったことが俺としては良くないことだと思っている」

「そうね。逃げるために嘘の言葉を並べるのは愚かな行為だわ嘘滝君」

「ぐ…だ、だがその騎士甲冑が似合っていないかと言われれば俺は真っ先に似合っていると言える!何着ても似合うと言うわけではないが、普段見られない雪ノ下が見れたことは得したと言うものだろう!」

もう何言ってんのか解らなくなってきた。
大体あと数分で女子競技始まるし、討論しててもしょうがないと思うんだよなぁ…。

「…そ、そうやってまた逃げるつもりなのでしょう。
同じ手を二度も使うなんて……でもまぁ、今はその嘘に騙されてあげる」

後で覚えてろっていうやつですねわかります。

「100対150…この競技で私たちが勝てば30点が加算されるわ。そして次の競技で貴方達が勝てば赤組の逆転優勝。この意味がわかるかしら?」

「イ、イエス・マム!」

わかった。わかったからその冷たい目線を止めてください雪ノ下さん……。

「ならいいわ。でも、負けたら言うことを何でも一つ聞いてもらうから」

「ナニソレコワイ」

そう言い残して入場門に歩いていく雪ノ下。
もう後がない…どうするマジで…!

「比企谷…マジで勝たなくてはならなくなった…!」

俺は比企谷の肩を掴み、頼みの綱を引き寄せる。

「怖い、怖いから分かったからまず落ち着け」

「この際何でもいい…どんな手を使ってでも勝ちを掴みとるんだ…!
勝てば官軍負ければ屍…死せばもろとも…比企谷、殺るぞ!」

「おいこら待て待て!もろともって俺を巻き込む気かお前!?」

「…………………………………そんなことはない」

「その糞長い間は何だったんだ」

相手は葉山のグループが殆ど。
となれば必然的にラフプレーをしてくる可能性は否めない。と言うことはこっちも相応にラフプレー出来ちゃうことになる。

「俺の命のため、犠牲になりやがれ葉山…!」

「お前、今までで一番怖い顔してるからな…?」

比企谷。君は作戦を考えなさい。








『さぁ、体育祭もいよいよ大詰め。
現在は白組が優勢、我らが葉山隼人がこれまでに多くの点を入れてくれています!』

『続いては体育祭の目玉競技、千葉市民騎馬戦!略して千葉戦だぁっ!』

アナウンスに気合いが入っているのか、盛り上がるように言葉を並べる葉山グループの馬鹿三人。聞いている限りでは葉山を誉めたいように聞こえなくもない。

グラウンドには紅白が別れるように陣形を組み、開戦の合図を待ちわびている。
緊迫した空気を出しているなか、テントの方でも似たような空気が流れていた。

「この際赤組の女子が負けてしまえばさっきの脅しは無効に…となれば俺は晴れて自由を勝ち取り心身共に救われることに……?」

「おい、それはそれでどうなんだよ…。
これで応援してなかったと知られればそれこそヤバイ状況に「頑張れ赤組っ!」…現金なやつだな…」

俺は死にたくないんだよ…!

”ブォォオッ”

『ワアアァァァ!』

平塚先生が角笛らしき物を吹き、戦いの火蓋が切って落とされる。
大将騎はそれぞれに三騎。
時間切れ、もしくは大将がいなくなればその場で終了となるルールだ。
白組の大将は葉山グループの金髪と海老名、そして沙紀さん。
赤組は雪ノ下に由比ヶ浜、城廻先輩となっている。

とりあえず開戦した訳だが…

「ぶっちゃけ騎馬戦の描写が書けないのでアニメ見て想像を働かせてください」

「おいちょっと、何言ってんの!」

だって書けないんだもん…。 
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