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真田十勇士

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巻ノ五 三好清海入道その七

「その者がよいと言えばな」
「それで、ですか」
「迎え入れたい」
 こう言うのだった。
「拙者としてもな」
「では」
「それで弟殿は何処におられる」
 幸村は清海自身に問うた。
「山奥の寺で修行中とのことじゃが」
「近江の東の。美濃との境のです」
「寺にか」
「入りそこで武芸も仏門も学んでおります」
「そして忍術もじゃな」
「はい、拙僧と同じく弟も忍術を身に着けております」
 他の者達と同じくというのだ。
「身のこなしも相当です」
「左様か。どうもな」
 海野は清海の言葉に首を傾げさせつつこう言った。
「御主の弟となるとな」
「こうした者だと思うか」
「うむ、破戒僧にしか思えぬ」
「いやいや、それでもな」
「それでもか」
「弟は違う」
 その三好伊佐入道はというのだ。
「わしとは正反対に生真面目でのう」
「修行に精を出しておるか」
「そうじゃ、だから安心せよ」
「ならよいがな」
「まあとにかくこれからはわしも一緒じゃ」
 幸村達と、というのだ。
「共に旅を続け上田にも参ろうぞ」
「おそらく攻めて来るのは徳川家」
 幸村はその目を強くさせて言った。
「その強さは相当なもの」
「はい、徳川家康殿といえば智勇を兼ね備えた方」
「兵を動かすことにも秀でておられます」
「しかもその家臣の方々も猛者揃い」
「兵も強いですな」
「容易な相手ではない」
 幸村は四人にも答えた。
「攻めて来れば難しい戦になる」
「しかしですな」
「敗れる訳にはいかぬ」
「そうですな」
「お家を守る為にも」
「うむ、何としても徳川家の攻めを凌いでじゃ」
 そしてというのだ。
「守りきる」
「ですな、例え難しい戦でも」
「敵が強くとも」
「滅びる訳にはいきませぬから」
「絶対に」
「勝たねばならん、我等はな」 
 幸村は己の家臣達に強い言葉で言った。
「敗れれば滅びるからのう、しかしじゃ」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「殿、何かありますか」
「真田家は小さい、その石高は十万石」
 幸村は家臣達に自身の家の石高も話した。
「拙者の禄も少なく御主達にもそれぞれ十石出せるのが精々じゃ」
「石高が低いので」
「だからだと仰るのですか」
「そうじゃ、それでもよいか」
 与えるものが少なくとも、というのだ。
「徳川家、そして次の天下人となられるであろう羽柴家ならな」
「十石どころかですか」
「遥かに多くの禄を出せる」
「そう仰るのですか」
「そうじゃ、御主達程の猛者ならば十石どころではない」
 それより遥かに多くの禄を貰えるというのだ、その働き次第で。戦働きがそのまま褒美として与えられるからだ。 
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