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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦八日目(4)×本物の人間と偽物であるドウターとの区別に千葉家の兄妹喧嘩

決勝トーナメントの組み合わせ発表されたが、準決勝第一試合が第三高校対第八高校で第二試合が第一高校対第九高校となった。予選リーグの成績は、一位・三高、二位・一高、三位・八高、四位・九高。大会規定通りなら、準決勝は三高対九高・一高対八高になるはずが既に決着付いたので特例が発動された事で自動的にそうなったらしい。俺らの出番は第二試合だが、三高の試合を観戦しないとどう攻略するかが策を練るのに一番いいからだ。

少し早い昼食となったが、俺と深雪は手ぶらでホテル前に戻ってきた。昼食は既に予約してあるホテル内のレストランで摂る事となったが、テントで食べればいいのにと思うかもしれんが落ち着いて食事が出来ない程な展開となっていた。

レオと幹比古も誘ったので、一度自室に避難後に誰かを向かわせると言っといた。ほのかは一緒に来たそうな顔をしていたが、ほのかに誘発されて他の同級生も付いて来るという顛末があったから、雫に頼んで止めてくれた。色々な視線を振り切るかのようにして、ホテル前に着いたのはいいとしてドウターがいる予感がした。

「お兄様」

「分かっている、この波導はホテル内にドウターがいるな『一真様』どうした?蒼太」

「ホテル内の男性トイレ内に本物と思われる者を発見致しましたが、如何致しましょうか」

「やはりか、本物と偽物だと気配や波導が違う。なので、俺らは人間に紛れ込んでいるドウターを攻撃後に本物を来させるように手配しとけ」

ホテルのロビーに入ったら、如何にもドウターですと言っていい程な分かりやすかった。ロビーの一角にて、恥じらいにほんのりと頬を染めていた摩利が立っていて、隣にいる年上の男性?がいたがアイツだな。十歳違いないが、二十歳前後と言っていい程だった。摩利に年上の恋人がいたという事実は、随分前から知っていた俺ら兄妹だが違和感を覚えた俺らでもある。

中背というより長身の部類、俺より僅かに背が高い程度で身近にいるその手の専門家がいるのか。俺ら二人には、細身の引き締まった身体がアスリート体型ではなく武術・格闘術の類で鍛え上げたものだと一目で理解した。

顔だけだと美男子に見えるが、摩利の器量も中世的である美少女で恥じぬものだからお似合いのカップルにしか見えなかった。俺は空間から鞘ごとある剣を取り出してから、ホテルの従業員が俺の手にしたモノを理解したのか、それともここにいるほとんどの者が記憶共有者だからなのか。剣を抜こうとした俺に向かってくる反応があった。

「織斑様、これは一体何事ですか?」

「あそこを見ろ、一見人間に見えるが中身はドウターであり鬼だ」

「なるほど、だったら我々は見ているだけにしときます」

「どうやらここにいる者ら全員そうらしいので、避難はいいのでもしものために対ドウター戦の準備だけをしとけ」

「畏まりました」

九校戦なのか、あちらこちらで有名人を見るが方面には有名人である事を知っていた。俺らが見ている間に何やら兄妹喧嘩が始まりそうだったが、その中にエリカと摩利がいる。だが二人とも擬態しているドウターだと言う事を知らずに喧嘩をしていた。

「次兄上!何故このような所にいらっしゃるのですかっ?」

エリカが次兄上と言ったので、あれは二番目の兄上であり『千葉の麒麟児』とも言われている千葉修次。防衛大学校に在籍中でありながら、三メートル以内の間合いなら世界でも十指に入る達人と噂されている魔法白兵戦法の英才だと聞いている。

普通ならエリカにとって自慢の兄貴なはずだが、尋常な剣幕となっている。アイツは千葉家の中では異端視されているとも聞いているし、エリカが『正統』に拘る性格とも思えない。俺らが見ていたとしても、それを気にせずにエリカが兄へ食って掛かっていたがすぐ傍にいる摩利を視界に入っていない。

「兄上は来週まで、タイへ剣術指南の為のご出張のはずです!何故ここにいらっしゃるのですか!」

「エリカ・・・・少し落ち着いて」

エリカはすっかり頭に血が上っている様子だった事だが、いつも他人や世の中をどこか傍観している雰囲気だったが為に今の状況は珍しい場面でもあった。千葉修次が宥めようとしても、今のエリカにとっては逆に火に油を注ぐかの如くだった。

「これが落ち着いておられましょうか!和兄上ならばいざ知らず、次兄上がお務めを放り出すなど、昔であれば考えられませんでした!」

「いや、だから落ち着いて・・・・僕は仕事を放り出して来た訳ではなくてね・・・・」

千葉修次はその武名に似合わず気が弱いという部分を見せていたので、優しい青年に見えて公衆の面前で収まる気配のない妹の興奮を前にして、ただの言い訳でしか聞こえないように思った。

「ほぅ・・・・そうですか。では、タイ王室魔法師団の剣術指南協力の件は、私の思い違いだと仰るのですね?」

「いや、それはエリカの言う通りなんだけど・・・・無断で帰国した訳ではなくて、ちゃんと許可はもらったというか・・・・」

「そうですか。日本とタイの外交にも関わる大事なお務めを中断しなければならなかったのですから、さぞや重要なご用事なのでしょう。その大切な大切な緊急のご用事で帰国された兄上が、何故高校生の競技会の会場になどいらっしゃるのです?」

声のトーンがマシになったのか、反比例してエリカの機嫌は斜め上に行く程に見えた俺と深雪に蒼太。証拠としては、彼の顔が引き攣っていたがドウターは本物と偽物にすり替えて、人間社会に浸透しようとしている。なのでドウターも少しは知恵を持ったかのように思えたが、それは前回もあった鬼が元人間だと言う事だと思った。

「いや、外交ってそんな大袈裟な・・・・任官前の士官候補生同士の親善交流で、大学生の部活の一環みたいなものなんだけど・・・・」

「兄上っ!」

「はいっ」

「学生レベルの親善であろうと部活であろうと、正式に拝命した任務ではありませんか!疎かにしていい理由などございませんっ!」

「はいっ、仰る通りです!」

おいおいあれは何ていう光景なんだよ、世界で十本の指に入る猛者か強者が妹の方が格差が上というのも、あまり見たくない光景だな。少し離れた所には、美月がオロオロとしていたのを見た深雪が駆け寄ってからこちらに来た美月だった。

「一真さん・・・・エリカちゃん、どうしちゃったんでしょうか?それとなぜ剣を持っているのですか?」

「エリカは八つ当たりをしているんだろうな、それとこれに関しては後々分かる事だ」

何となく分かっている織斑兄妹=織斑親子だからなのか、兄妹喧嘩をしているようにも見えるしすぐそこに恋人がいるからかもしれん。

「兄上、まさかとは思いますが、この女に会う為に、お務めを投げ出したのではないでしょうね?」

「いや、だから投げ出したのでは・・・・」

「そのような事はお訊きしていませんっ」

兄の言い訳をピシャリと遮ると、今まで無視していた摩利を一度ジロリと見てから視線を戻していた。

「全く嘆かわしい・・・・千葉の麒麟児ともあろう兄上が、こんな女の為にお務めを疎かにされるなんて・・・・」

「・・・・エリカ、あたしは一応、学校ではお前の先輩になるんだがな『こんな女』呼ばわりされる覚えはないぞ?」

今まで沈黙をしていた摩利は、ついに我慢が出来ずに口を挟んだ状態となったがエリカは無視をしていた。というか視界にすら入ってないので、摩利の言葉は完全に耳には入っていない状態だ。

「そもそも兄上は、この女と関わり始めてから堕落しました。千刃流剣術免許皆伝の剣士ともあろう者が、剣技を磨く事も忘れて小手先の魔法に現を抜かして・・・・」

「エリカ!」

あのドウターは性格や容姿を真似ているので、コンピューターでも誤作動を起こすくらいの完璧ではあるが、ドウターだとすぐ分かってしまう俺らにとっては鬼かドウターにしか見えていない。千葉修次にとって禁句だと言う事も分かっていたかのように、気弱な態度から気迫が籠った叱責にエリカはビクッと身体を震わせた。そろそろ俺の出番だなと思い、深雪と蒼太はエリカと摩利の確保を頼むと伝えた。

「技を磨く為には常に新たな技術を取り入れ続ける必要がある。僕がそう考えてそうしたのだから、摩利は関係ない。今回の事も、摩利が怪我をしたと聞いて、僕がいてもたってもいられなくなっただけだ。摩利は来なくても良いと言ってくれたんだぞ。それでなくとも先刻からの礼を失す言動の数々は、千葉の娘として恥を知るのはお前の方だ。さあエリカ、摩利に謝るんだ」

唇を噛み締め、黙り込んだ事でそろそろだと思い、俺はエリカとドウターの間に入った事で摩利は蒼太が確保し、深雪はエリカを確保した。

「なかなかの演技、上出来になってきたじゃねえか。ドウター」

「蒼太さん!一体何を『あれは偽物であって、本物の千葉修次は先程男性トイレにて発見されました』何だと!あれが偽物のシュウ?」

「だから一真君や深雪がそう殺気だっていたのかー、でもこれが偽物だと言うなら本物はどこにいるのよ?」

「何をする!せっかく本物を叩いたから、近づけたのに!『本音が出たな』・・・・しまった!」

逃げられないようにしといたので、従業員や国防軍の者達が銃器を向けていて本物の千葉修次を連れてきた事で、そいつが偽物だと判断した摩利とエリカだった。ドウターは最近人間社会に紛れ込もうとしていたので、それぞれの者らが監視をしていた訳だがまさかここにも出現するとは。

俺は剣を鞘から抜いた後、金色の刃が出て来たと思いきや、エリカや摩利にも見えない速度で斬り込んだので偽物だった千葉修次は消滅した。本物は他のCBメンバーによって保護されたので、会話を聞いていた本物はエリカに言う事なく摩利の近くに行った。俺らと美月は、エリカを落ち着くようにしてから俺らが昼食をするレストランへ向かった。

「全く、最近のドウターは人間社会に浸透しようとしていた。あれがいい例えだが、本物と偽物だと分からない程になっていたが俺らの眼からは偽物だと分かる」

「なるほどね、そういえばさっきの事も盗み聞きしちゃったからこうやって奢っているのよね。ホントに一真君は何でも分かるんだね~」

「まあな、美月もオロオロしていた様子だったがあれがまさに夫が妻の尻に敷かれたような感じだ。兄の方が偉いとも言うが、立場的には逆だったな」

「兄妹喧嘩を越えているように見えましたから、どうしようと思ってました」

「お兄様は何でも分かるから、きっとお兄様がエリカ側だったとしても同じ事を言うに違いないわ」

そう言いながらだったが、摩利の恋人がエリカの兄であり俺もエリカも同じ事を思ったのか。あのバカ兄貴は摩利に誑かされたと思っているので、深雪でも情けないとか腹立たしいと言っていた。世界的な剣術家だからと言って、憎まれ口でもバカ兄貴と言ったとしても自然的だと思われる。

「一真君だから修次兄貴の事を知っていてもおかしくないわね」

「エ・リ・カ。私達の前だからと言って、呼び方をわざわざ変える必要性はないわよ。修次兄上なのでしょう?」

「あ~っ、それはもう忘れて!あんなのあたしじゃないって!」

ホテル内にあるレストランなので声を荒げていたが、ここにいるのは俺達ぐらいしかいないが一応防音結界を張っておいた。そしてエリカは頭を抱えながら、フォークをポテトに刺して食べていた。エリカ的には育ちの良い言葉遣いをするのは、とても恥ずかしいのだろう。

「まあまあ。エリカは修次さんの事が大好きなのよね」

「・・・・・」

硬直したのはエリカだけではなく、美月もだったが深雪が投下した冷凍爆弾は流石の俺でも凍りついたがよくよく考えると、深雪が言った事が事実だとも捉える事が出来るからなのかもしれん。

「・・・・違うっ!」

「エリカ、一応言っとくがここはホテル内のレストランだと言う事を忘れるなよ?でも深雪の意見には賛成だな、それにしてもエリカがブラコンだったとは」

「あ、ごめん一真君。あー・・・・一真君でさえそう言われちゃうと、もう言う言葉が見つからないよ」

そう言いながらだったが、今度から本物と偽物を区別する事が出来る俺特製のお守りをエリカに持たせた。首にかけておけばいいモノを空間から取り出してから、本物と偽物と区別できるもんだと説明してからドウターという破滅する生き物は最近だとヒト型の鬼となる存在になってきた。美月にも同じもんを渡してから、第三高校の準決勝までには間に合うように食べていたのだった。 
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