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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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デートの時間(2016/03/30 一部修正)

 
前書き
今回はバカテスをモデルにしている上、主人公カップル以外のカップリングもある意味成立させました。 

 




【視点:樹】



暗殺旅行を4日前に控えた今日。俺は有希子、悠馬、片岡の3人と一緒に椚ヶ丘最大のテーマパーク―――椚ヶ丘グランドパークにやって来ていた。

4人だけで椚ヶ丘グランドパークにやって来たのには、勿論理由がある。まず、ここの株主である俺がプレミアムペアチケットを2枚手に入れたのがことの始まりであった。

ペアチケットという名称から分かる様に、俺が手に入れたのは1枚で2人がテーマパークを利用できるチケットだ。つまり、俺と有希子が使うだけなら、1枚で事足りたのだ。

普通なら2人で2回行くという選択肢もあるんだが、今回に限っては使用期限が暗殺旅行の日程とも被るということもあって、実質的使用期限が手に入れてから4日しかなかったんだ。

結果、E組の誰かにもう1枚のプレミアムペアチケットを譲ろうと思った訳なんだが、その話をクラスでした時―――


「それじゃあ、普段皆の面倒見てる磯貝と片岡が行けばいいんじゃね?」


陽斗のこの一言により、急遽A・T訓練を休みとしたこの日に、4人一緒に椚ヶ丘グランドパークに行くことになったんだ。

そして、現在。正に椚ヶ丘グランドパークの入口でスタッフにチケットを見せ、俺達はテーマパークの中に入ろうとしている訳なんだが―――


「「いらっしゃいませ!椚ヶ丘グランドパークへようこそ!!」」
「………一体何やってんだ?渚、茅野」
「「「……………」」」


俺達がチケットを渡そうとしたスタッフは、何故か渚と茅野だった。有希子達もこの2人がいると思ってなかったこともあって、呆然としている。


「渚?茅野?人違いではないでしょうか、お客様」
「私達はこのテーマパークで働く名も無き従業員です」
「いや、名も無き従業員っておかしいだろ!まるでテーマパークの従業員に名前が無いのが普通みたいな言い方しやがって!世界中のテーマパーク従業員に謝れ!!」
「ちょっ!イッキ、落ち着け!キャラ崩壊してるぞ!!」
「お客様、どうかされましたか?」
「………龍之介、お前までここスタッフの制服を着て何をしてる?」
「龍之介?何のことでしょう?自分はこの椚ヶ丘グランドパークのスタッフです」
「……そうか。飽く迄白を切るというのなら」


俺はそう言い終えるとスマフォを取り出し、龍之介のスマフォへと電話をした。すると―――


「おっと!手が滑りました!!」
「………そこまでするか、普通?」


龍之介はそう言うや否や、懐から取り出したスマフォを近くの噴水へと投げ込んだ。普通ならあり得ない行動に俺まで唖然としてしまった。しかし、そんな俺達の反応など気にも留めず、龍之介は話を続け始めた。


「お客様、当テーマパークのチケットはお持ちですか?」
「は、はい」
「これでいいですか?」


有希子と片岡が預けていたチケットを龍之介に見せると―――


「おお!これは期間限定のプレミアムチケット!」
「アルファよりブラボーに緊急連絡。標的(ターゲット)を確認。ウェディングシフトの準備を始めて。確実に仕留めるのよ」
「おい、後ろで茅野がトランシーバー使って不穏当な会話をしてるぞ!」
「っていうか、ウェディングシフトって何だ?」
「あっちのスタッフのことはお気になさらず。ただ、プレミアムチケットをお持ちのカップルには、ウェディング体験をして頂く特別企画があるだけです」
「頂く!?頂けるじゃなくて、頂くって今言い切ったよな!?こっちに選択権は無しの強制イベントなのか!!?」
「プレミアムチケットをお持ちのお客様には特別サービスの記念写真を撮影させて頂いております」
「無視か?俺の発言は完全無視なのか!!?」
「お、落ち着いて!イッキ君」


龍之介に掴み掛ろうとする俺を必死に止める有希子。そんな俺達の前に新たなスタッフが現れた。


「………今度は岡島と三村か?お前ら、そんな黒子みたいな格好して、こんな所で何やってんだよ?」
「俺達はこのテーマパークに雇われた記念撮影専門のカメラマン」
「お客様方の知人とは縁も所縁もございません」
「……もういい。お前らがスタッフと言い張るなら、もう何も言わん。で、記念撮影だったか?どうすればいいんだ?」
「カップルらしい写真を1枚撮らせて頂きます。彼女さんは彼氏さんの腕に抱き着いて下さい」


岡島の最後の発言で悠馬と片岡が狼狽していたが、有希子は狼狽することなく俺の腕に抱き着いて来た。ファーストキスの一件以降、有希子はかなり大胆になって来た様に思える。

そして、記念撮影を終えると大して時間を待つことなく写真が現像された訳なんだが、その写真は―――


「……何だ、この写真?」
「サービスの特殊加工でございます」


俺と有希子がハートで囲まれ、「私達、結婚します」の文字が書かれた結婚報告はがきの様なものだった。悠馬と片岡も渡された写真が同じ様で、赤面して固まってしまっている。


「この写真は記念としてパークの記念館にも飾らせて頂きます」
「「何の羞恥プレイだ!正気か!?」」
「それではお客様方、記念撮影も終えましたのでウェディング体験に移りたいと思います。女性の方々には色々と準備がございますので、私を始めとした女性スタッフがご案内を。……皆の者、出合え出合え!!」


茅野がそう言うや否や、見覚えのある女性スタッフが多数現れ、有希子と片岡を連れ去って行った。って、ちょっと待て!!


「有希子と片岡をどこに連れ去った!?」
「落ち着いて下さい、お客様」
「お客様方にもウェディング体験の為、着替えて頂きたいと思います」


今度は渚と龍之介がそう言うや否や、見覚えのある男性スタッフが多数現れ、俺と悠馬はあっさりと拘束され、テーマパーク内にあるチャペルの控室らしき場所に連れ込まれた。


「お客様方にはこの控室にある服に着替えて頂きます」


その控室に用意されていた服は結婚式で新郎が着るタキシードだった。俺と悠馬は顔を合わせ、一度頷き合うと逃亡を図ろうとするが。出入り口を見覚えのある黄色いタコに塞がれてしまった。


「って、何であんたまでここにいる!この黄色いタコ野郎!!」
「タコ野郎?私はその様な者ではありません。今回のウェディング体験で神父役を務める(コロ)神父です」
「イッキ。もう諦めてウェディング体験っていうのに参加するしかないみたいだ」
「………ああ。もう諦める以外の選択肢が残されていない。」


俺と悠馬は溜息を一度吐くと、用意されていたタキシードに着替え、チャペルへと移動した。そして、待つこと数分後。チャペルの入口が開き、女性スタッフに拉致られた有希子と片岡が姿を現した。


「「……………」」


2人の姿を目にした俺と悠馬は言葉を失った。それは薄いピンク色のウェディングドレスを着た有希子とミントグリーンのウェディングドレスを着た片岡が余りにも綺麗だったからだ。


「ヌルフフフッ!両新郎も両新婦に見惚れているみたいですね。それでは雰囲気も出ている所でウェディング体験を行いたいと思います。体験者の希望次第では、そのまま入籍して頂いても問題ありません」
「「いや、大問題だろ!!」」


2人に見惚れたいた俺と悠馬は、(コロ)神父の発言で一気に目が覚め、同時にツッコミを入れてしまった。いや、別に有希子と結婚したくないって訳じゃないし、養っていける自信も俺は十二分にあるんだけどな。

この後、ツッコミ所満載のウェディング体験が行われ、俺と有希子に至ってはE組の全員が見ている前で近いの口付けまでさせられ、恥ずかしさの余り俺は有希子を姫抱っこした状態でチャペルから逃亡。

新郎新婦の格好でテーマパークを回るという、微妙な1日でダブルデートを終えることとなった。


 
 

 
後書き
今回、杉野君がショック死してもおかしくない回でしたね。(笑)

ちなみに磯メグのカップリングは、王としての道(風×荊)からも実は決まっていたりもしました。

 
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