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K's-戦姫に添う3人の戦士-

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1~2期/啓編
  K6 白蛇聖少女


「ネフシュタンの、鎧」

 風鳴サンが呆然としたって感じで呟いた。ネフシュタン? 何だそれ。

「へえ? ってことはあんた、この鎧の出自を知ってんだ?」
「2年前、私の不始末で奪われた物を忘れるものか。何より……私の不手際で奪われた命を忘れるものかッ!」

 2年前? っていやぁ……まさか響ちゃんが行ったツヴァイウィングのコンサート?
 「私の不始末」って言った。オイ。じゃあ何だ。あの会場で響ちゃんが死にかけたの、この人、この人たちのせいってことなのかよ!

 風鳴サンが刀を、白いバトルスーツの子が鞭っぽいものと杖を、構えた。

「やめてください、翼さん!」

 響ちゃんが風鳴サンにしがみついて歌を中断させた。

「相手は人です。同じ人間です!」
「「いくさ場で何を莫迦なことをッ」」

 ハモったよこの人たち。この時点で付いて行けねえ予感がバリバリするわ。

「むしろ、貴女と気が合いそうね」
「だったら仲良くじゃれ合うかい!」

 戦いが、始まってしまった。
 てか速すぎて視えねえんですけど!? お二人、本当に人間!?

「と、止めなきゃっ」
「待てって響ちゃん! 割って入ったらおれらみたいな素人、ボコボコにされるだけだぞ!」
「でも、でもっ」

 風鳴サンが地面を滑って転がった。白い子に吹っ飛ばされたんだ。

「のぼせ上がるな、人気者! 誰も彼もが構ってくれるなどと思うんじゃねえ。この場の主役と勘違いしているなら教えてやる。狙いは端っからあいつを掻っ攫うことだッ!」

 ――響ちゃんを?
 白いの。お前は今、おれの地雷を全力で踏み抜いたぜ。

 どんな手品か、白い子の杖からノイズが出て来た。でも手品のタネに興味はねえ。
 4体の塔みたいなノイズが吐いた粘液。んな汚えもんを響ちゃんに浴びせるもんかよ! プリトウェン、傘状展開で防ぐ!

「啓! わたしはいいから翼さんを助けに行って!」
「嫌だ!」

 白い子は風鳴サンと戦いながらも杖からどんどんノイズを出して増やしてくんだ。どいつが響ちゃんを襲うか分かんねえのに、おれが響ちゃんから離れられっか!

「姉ちゃんの言うこと聞けないの!?」


 ――「姉ちゃん」と、言われて。
 おれが響ちゃんに逆らえるわけがない。


 ビリビリ鉄球が風鳴サン目がけて打ち出される。

 でえい、ままよ!

 おれは風鳴サンと白い子に走ってった。
 間に入って念じる。出ろ、プリトウェン!

 バリアサークルが展開されて、鉄球を受け止め……重っ! 何だよコレ、ノイズなんか比べ物にならねえ重さじゃねえか!

「どけ、立花弟! 潰されたいか!」
「ご冗談!」

 ここでどいたら響ちゃんの中でおれの株大暴落だろうが。

「ハッ。ビビってたんじゃねえのかよ!」
「響ちゃんが狙いなら話は別だ!」

 おれが護るって約束した女の子。一度死んだに等しい子。だから響ちゃんにだけは絶対手出しさせねえ。もう二度と、あんな生活には戻さない。

 了子サンは言った。プリトウェンは盾の聖遺物だ。防ぐ、守る、が主体で、サポートに徹しないなら有効打は一つ。

 バリアサークルを右腕に貼りつかせる。即席グローブを装着して、白い子をまっすぐ――

「防御は、最大のぉ……攻・撃ッ!」

 殴った。

 防ぐんじゃなく、ぶつける。プリトウェンが何物も通さない盾なら、逆にその硬度を利用して、おれ自身が格闘技で戦えばいい。ナックルやレガースにしたプリトウェンなら、普通のキックやパンチでもダメージは普通以上が期待できる。

 期待できる、はず、なのに!

 普通のノイズなら一発KOなのに。この子のアーマースーツ、全身タイツに見えて実は白い面がびっしり蛇の鱗で覆われてる。通るわけねえだろ、こんなん反則だ! 風鳴サンが腹パンされただけで吹っ飛ぶはずだ。

「それで終わりかァ?」

 はっ。やばい。待った。おれがいるの、白い子の懐――

「なら吹っ飛びな!」
「ガッ…あっぐ! か…は…っ」

 蹴られた。腹だ。派手に吹っ飛んだなって自分でも分かる衝撃だった。
 は、腹痛ぇえ…! クソ、何で腹には装甲ねえんだよ。

 吹っ飛ばされた先には風鳴サンがいて、もろにぶつかって、二人仲良く芝生にダイブしちまった。

「どきなさい!」

 風鳴サンはおれを突き飛ばして立ち上がると、またでかいブレードを構えた。守ってやったのに礼もなしかよ。いや礼が欲しいからじゃなくて響ちゃんに言われたからやったんだけど。

 おれもどうにか立ち上がって、風鳴サンに並ぶついでに無理やり肩ぶつけてやった。

「おれが防御しますから、あんたは攻撃に専念……」
「よけいなお世話よ!」
「じゃあ目の前でやられんなよ! 後味悪ぃだろうが!」

 もうエセ敬語も使ってらんねえ。

「ハッ。仲間割れかよ」
「剣の我が身に仲間も何もない!」

 こっちを見もしねえでやんの。マジで見捨てたろかこの女。


            「 Gatrandis babel ziggurat edenal―― 」


 響ちゃん? その歌、何だよ。今までのとちが……





 目の前の白い女の子との闘いもやだけど、啓と翼さんの言い争い、聞いてらんなかった。

「……めて……やめてよ」

 憧れの人と弟がギスギスしてるだけでもやだったのに。何なの、もう。
 未来との約束は破って。啓は相変らず翼さんに突っかかって。
 もう…ふたりが争うの、見たくないよ…

 ごめんなさい、奏さん。せっかく奏さんが救ってくれたのに、わたしはどうしようもない意気地なしでした。


           「 ――Emustolronzen fine el baral zizzl 」


 あなたが最期に奏でた旋律。これでどうか、わたしの大好きな二人の衝突が止まりますように――






 その歌が聴こえた時、きっと最も驚いたのは私だ。


              「  Gatrandis babel ziggurat…  」


 絶唱。奏が最期に歌った唄。シンフォギア装者を激しく損ない、最悪、死に至らしめる破滅の旋律。
 それを、立花響が口にしている。

「その唄を歌ってはだめだ――!」
「え? え、え? 何」

 ええい。この際、立花弟への説明も、本人が何故詞を知っているかの疑問も無視だ。立花響を止めなくては。


             「  Emustolronzen fine el,――zizzl  」


 くっ、間に合わない――!

 炸裂する歌エネルギー粒子。広がる衝撃波に吹き飛ばされた。 
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