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ポイイェーラ

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第五章

「そうしたことをここでもですか」
「驚かれると思ったのですが」
「日本では普通ではないですがあるので」
「驚かれないですか」
「はい、そこまではです」
 至らないとだ、明日香は答えた。
「そうです」
「そうですか、それは意外ですが」
「これからはじまるお祭りはですね」
「彼等も参加します」
 女装した村の若者達もというのだ。
「あのスカートはポイイェーラといいまして」
「皆着ていますね」
「この村の服です、普通のインディオのスカートより長いです」
 そのロングスカートを見ながらの言葉だ。
「インディオのスカートは普通は膝丈ですが」
「ロングスカートですね」
「そうした独特のものです」
「この村独自の刺繍が入っていて」
「そうです、しかもお祭りなので」
「派手な刺繍が入っていますね」
「普通のポイイェーラよりも」
 飾られているというのである。
「そうなっています」
「そうですか、ですが」
「ですが?」
「女装自体には驚いてないですが」
 それでもとだ、明日香はファンに言うのだった。
「どうして女装しますか?」
「求婚の為らしいです」
「結婚の申し出、ですか」
「はい、何でも娘達を守る親の目を女装して誤魔化す為に」
 つまり悪い虫と思われない為というのだ、こうした親の目はペルーの高い場所にあるこの村でも同じだというのだ。
「それで、です」
「女装して女の子に化けて」
「それで求婚したのがはじまりだとか」
「そうなのですか」
「それが村の若者の間に広まってです」
「そして残って」
「今はこうしています」
 村の祭りの伝統になったというのだ。
「そう言われています」
「そうだったのですか」
「最初にはじめたその若い人が誰かは知りません」
 ファンもそこまでは知らなかった。
「ですがそれでも」
「それでもですね」
「今では村のこのお祭りの伝統になっています」
「そうですか、では」
「これからそのお祭りがはじまります」
 ファンは明日香ににこやかな顔で話した。 
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