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ドリトル先生と森の狼達

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第一幕その八

「いつもの動物の皆がいてトミーと王子も一緒ですから」
「そ、そうですか」
「はい、僕のことはご心配なく」
 日笠さんの寂しさをこう解釈して言うのでした。
「今回も皆に迷惑をかけてとなりますのね」
「そうですか、それはいいですね」
 日笠さんは残念そうに応えるしかありませんでした。
「皆さんがいてくれるのなら」
「僕は果報者ですね、友達に恵まれていて」
「他のことにも恵まれているのでは」
「そうですね、最近お金も必要なだけあっていいお家もあって美味しいものもたっぷり食べられて」
 本当に気付かない先生です。
「幸せ過ぎますね」
「もっと幸せになれると思いますが」
「いやいや、これ以上の幸せはないですよ」
「幸せに際限はないかと」
「あるんじゃ。あまりにも幸せですと」
 どうかとも言う先生でした。
「何か悪い気がします」
「先生は無欲なのですね」
「よく言われますね、そのことは」
「もっと欲を出されては」
「それが元々あまりそうした気持ちがありません」
 無欲さも先生の美徳のうちの一つです、先生はあまり何かが物凄く欲しいと思うことがない人なのです。
「欲を出そうという気持ちは」
「そうですか」
「権力やそうしたものについても」
「地位もですね」
「はい、全く」
 地位も権力もです、先生が最も興味がないものです。
「むしろ今の様に教授に迎えられて」
「先生に相応しいお立場だと思いますが」
「いえいえ、尊敬される程偉くはありません」
 ご自身では強くこう思っているのです。
「ですから」
「尊敬されることもですか」
「望んでいませんし」
「欲もですか」
「感じません」
「そうなのですか」
 本当にです、残念そうに言う日笠さんでした。
「また今度お願いしますね」
「奈良にですね」
「ご一緒に行きたいですね」
「そうですか、では」
「では?」
「お寿司のお話が出ましたので」
 それで、とです。先生はこう日笠さんに言いました。
「お昼にお寿司をどうでしょうか」
「お昼に一緒にですか」
「はい、どうでしょうか」
「いいのですか、私と」
 日笠さんは寂しいお顔から一転して明るいお顔になって先生に確認しました。
「その、お寿司を」
「はい、食べに行きませんか?」
「それでしたらいいお店があります」
 復活でした、まさに。
 日笠さんはさっきまでとは全く違って生き生きとして先生に言うのでした。
「八条百貨店の義経というお店です」
「あっ、千本桜の」
「はい、そこから名前を取っています」
「そうですか、やっぱり」
「そこのお寿司をです」
 完全に日笠さんのペースで言うのでした。
「食べに行きましょう」
「ではお昼に」
「そうしましょう、やっぱりお寿司はいいですね」
「素晴らしいお料理です」
 先生はお寿司も大好きなので言うのでした。 
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