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ロンパウ

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第五章

「パイワン族の女の人が着ているんだ」
「今は着てないですね」
 見れば村の女の人達は洋服だ、彼等が着ているのと同じく。
「そのロンパウは」
「そうなんだ、けれど」
「けれど?」
「民族衣装としては残っていて」
「お土産で、ですか」
「売っているんだ」
「そうなんですね」
 ここまで聞いてだ、女生徒も納得した。そして。
 その値段を見てだ、残念そうに言った。
「高いですね」
「まあ木彫りよりはね」
「ちょっと買えそうにないです」
 学生の手持ちの小遣いではというのだ。
「これは」
「まあ次にここに来たらね」
「買えばいいですね」
「そうしたらいいよ、ただ僕はね」
「先生は?」
「実は娘に頼まれてるんだよ」
 先生は苦笑いで生徒に話した。
「このロンパウを買って来てくれって」
「あれっ、先生って娘さんおられるんですか」
「いるよ、奥さんもね」
 しっかりと、というのだ。
「奥さんは一人、娘もね」
「一人ですか」
「上に息子もいるよ」
「お兄さんですね」
「どっちもいるよ」
 こうしたことがというのだ。
「男の子も女の子もね」
「お子さんは二人ですか」
「それでその妹、下の子がね」
「このロンパウをですか」
「ネットで見て買って来てくれって言われてるんだ」
「それで今からですか」
「買うよ」
 やれやれといった顔での言葉だった。
「これからね」
「そうですか、じゃあどうぞ」
「うん、ちなみに買うのは僕のお小遣いでだよ」
「家のお金じゃないんですか」
「女房がこうしたことに五月蝿くてね」
 やれやれといった顔での言葉だった。
「それでなんだ」
「大変ですね」
「学校の先生の仕事と同じだけね」
 夫、そして父親の仕事は大変だというのだ。そうしたことを話してだった。
 そしてだ、先生はそのロンパウを買ってだった。
 生徒達を引率して村のあちこちを見学させてだった、学校まで帰って。
 家に帰ってだ、部屋で漫画を読んでいた娘に行った。
「買って来たよ」
「あっ、あったのね」
「うん、ロンパウはね」
「そう、じゃあ持って来て」
 娘はその切れ長の目でこう言った、黒髪をロングに日本のアイドルグループで人気のある女の子の様な髪型にしている。唇は小さいピンクでやや面長だ。
 身体は小柄で家の中なので上下ともジャージの色気のない格好だ。その格好で父に何でもない顔で言った。
「早速ね」
「はい、これだよ」
 先生は娘にリュックから一つの袋を出した、そのうえでこう言った。 
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