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美しき異形達

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最終話 ピクニックその十一

 どの少女達も自衛隊以外の仕事を考えていた、そして。
 その話を受けてだ、伯爵も穏やかな声で応えた。
「自衛隊だけが仕事じゃないからね」
「だからいいんだな」
「悪いことはないよ」
「だよな、じゃあな」
 それならとだ、また言った薊だった。
「あたし大学出たらバイクの会社に入るよ」
「操縦するのかな」
「操縦もいいし他のことやるのもな」
「オートバイに関わっていきたいんだね」
「ああ、だからな」
 それで、というのだ。
「バイクの会社に務めるよ」
「将来の夢が出来たのかな」
「ああ、それで結婚してお母さんにもなるよ」
 こうも言うのだった、薊は。
 そして他の少女達もそれぞれの道について思いだ、語った。
「私は学校の先生に」
「探偵として独立したいわ」
「お寺の奥さんになると思うわ」
「旦那様をお迎えして家業を」
「お医者さんに」
「黒蘭ちゃんと一緒に漫画描いていくわ」
「姉さんと一緒に」
 それぞれの夢を語る、そして裕香もだった。
 薊を見てだ、微笑みつつ言った。
「図書館で働きたいけれど、薊ちゃんとはね」
「あたしとはかい?」
「ずっと一緒にね」
「ああ、友達でいような」
「うん、これからもずっとね」
「あたし達皆友達だよ」
 薊の法もだ、笑顔で応えた。
「これからもな」
「うん、何があってもね」
「人生はこれからが長いっていうね」
 智和はここでだ、しみじみとした口調で言った。
「今僕達は十代だけれど」
「その通りだよ、人生は二十五歳で暁ともいうからね」
 伯爵も智和に応えて述べた。
「まだはじまりにもなっていないよ」
「じゃああたし達の戦いは」
「そう、ほんの一時のことでね」
「これからなんだな」
「まだはじまってもいないのだよ」
 薊にもだ、伯爵は穏やかな笑顔で話した。
「激しい戦いがあったけれどそれでもね」
「そうか、じゃあこれからは」
「長い人生を思う存分楽しむんだよ、人間として」
 穏やかな微笑みのままはまさに父親のものだった。
「いいね」
「そうさせてもらうな」
「私はずっと君達を見ているから」
 こうも言った伯爵だった、少女達に。
「背中のことは気にしないで生きていくんだよ」
「そうか、じゃあな」
 薊は伯爵のその言葉にこの上なく嬉しそうな笑顔になった、そして。
 空の方を見てだ、こう言った。
「楽しく生きていくな」
「長い人生をね」
「そうしていくか」
「それじゃあ薊ちゃん」
 裕香が薊に言って来た、ここでまた。
「帰ったら宿題しましょう」
「ああ、英語のリーダーの」
「それしよう、一緒にね」
「量多いからな」
 だからだとだ、薊はこのことは少し困った感じで述べた。
「二人じゃないとな」
「うん、ちょっと大変な量だから」
「昨日と今朝はピクニックの準備で忙しくてな」
 宿題が出来なかったというのだ。
「それをね」
「ちゃんとしてからね」
「ああ、そうしような」
「宿題はしっかりしないとね」
 智和もこう言って来た。
「学業は怠らず」
「さもないといいことないからな」
「成績はね」
「これでも大学に行こうと思ってるからな」
 だからだというのだ、そしてだった。
 薊は宿題のことも思うのだった、学業の方も。そのことを話してそうしてだった。戦いを終えた少女達は楽しい時間、長い人生のはじまりとも言えるその時を過ごして満面の笑顔になっていた。


最終話   完


美しき異形達   完


                          2015・4・4 
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