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美しき異形達

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最終話 ピクニックその八

「木が多いと嬉しいんだ」
「それで日本の山が好きか」
「うん、木が多ければ多い程ね」 
「じゃあ日本の山はどれでもか」
「好きだね、六甲の山もね」
 こちらもというのだ。
「今も楽しんでるよ」
「ううん、確かに空気は奇麗ですけれど」
 裕香は智和のその話を聞いてだ、その首を少し傾げさせてそのうえで彼に言った。どうにも微妙な顔になって。
「麓に住むのはいいですけれど山の中には」
「住みにくいよね」
「寒いですし何よりも不便です」 
 裕香はここでも自分の故郷のことを話した。
「平地にいた方がずっと」
「山は時々入るものだっていうんだね」
「はい、ずっと住むにはあまりよくありません」
 それが山というものだというのだ。
「他の場所に行き来するだけでも大変ですから」
「それはわかるよ、昔から山に住む人はあまりいないからね」
「山姥とかですか」
「山姥は実際には人を襲わなかったよ」
「そうなんですか」
「山姥、山爺やそうした山の妖怪は実は山窩だったと言われているんだ」
 智和はこうした人達の名前をだ、裕香に話した。
「聞いたことあるかな」
「若しかしたら、っていう人達が実家の傍にいるとか」
「聞いたことがあるんだ」
「何か見たことがある様な気も」
「それは凄いね、まだおられるとは聞いていたけれど」
「私もちらりとだけで」
「山窩の人達のことはまだまだ謎が多いんだ」
 日本にはいるがだ、研究はまだ不十分で風俗文化について不明なことが多いというのだ。それはルーツについてもだ。
「それでその人達が言われていたんだ」
「山姥や山爺ですか」
「他にも結構いるけれどね」 
 山の妖怪達はというのだ。
「他にも修験者やアイヌの人達も妖怪になっているみたいだね」
「天狗とか鬼ですか」
「鬼は漂白者だったとも言われているよ」
 具体的にはコーカロイド説もある、血を飲んでいたというのは赤ワインだったのではないかというのだ。
「酒呑童子とかね」
「何か凄い説ですね」
「可能性は少ないけれどそうであった可能性はあるよ」
 例え僅かでもというのだ。
「日本の山には妖怪も多いけれど」
「その妖怪の正体は山にいた人達ですか」
「様々な理由でね」
「山窩の人達以外でも」
「犯罪者が逃げ込んだり山賊だったり世を捨てた人だったりね」
 山にいた者は様々だったというのだ。
「その修験者の人もいたしね」
「何か山にはですね」
「沢山の人がいたんだよ」
 実際にというのです。
「そうした人達がね、山姥とかになっていたんだよ」
「けれど人を獲って食べたりは」
「しなかったよ」
「やっぱりそうですよね」
「山姥は妖怪で人知れぬ人達は色々と言われるものだからね」 
 このことは現代でもそうだ、知らないということはそこから恐怖が生じやがて偏見になっていく。このことは山窩についても同じだったのだ。
「だから山姥もね」
「人をち食べる妖怪になったんですね」
「それと安達ヶ原の話があったね」
「それって」
「うん、鬼婆の話がね」
「それと合わさってですか」
「そう、山姥は人を食べるとも言われていたかもね」
 こうしたこともだ、智和は話しつつだった。
 少女、伯爵と共に山を登っていった。そして。 
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