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美しき異形達

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最終話 ピクニックその六

「山もいいよな」
「そうなのよね」
「暮らすには寒いにしても」
 それでもとだ、薊も緑の山々を見つつ言った。
「いいところだよ」
「そうよね、空気が奇麗っていうのはね」 
 向日葵もにこにことしている。
「それだけでいいことよね」
「ああ、空気は奇麗で自然は豊か」
「山もいい場所よね」
「その山を楽しむのがピクニックだしな」
「私達充分楽しんでるわね」
「本当にな、現在進行形でな」
 楽しんでいること自体もだ、薊は楽しんでいた。
 そのうえでだ、薊はこうも言った。
「どんどん先に登ってもっと奇麗なもの観ような」
「そして頂上に言って」
 桜もピクニックを現在進行形で楽しみつつ述べた。
「食べるのですね」
「お弁当な」
「お握りを」
「桜ちゃんもお握りだよな」
「はい」
 弁当はそれだとだ、桜は薊に笑顔で答えた。
「それです」
「皆お握りみたいだな、やっぱりな」 
「そうですね、皆さん本当に」
「じゃあお握り食う為に」
 頂上に登ろうとも言った薊だった、そして実際に先頭に立ってどんどん先に登っていく。その薊に後ろからだった。
 菫がだ、こう声をかけた。
「あまり先に行ってもね」
「急いでもか」
「ええ、よくないわよ」
 こう言うのだった。
「ゆっくり楽しみましょう」
「山は逃げないか」
「景色はね」
「それもそうだよな」
 薊は菫の言葉に頷いてだった、実際に足の速さを緩めた。そのうえでだった。
 あらためて景色を見回しつつだ、こうしたことを言った。
「急いでもいいことはないよな」
「ええ、ゆっくり楽しんでこそよ」
「それがいいよな」
「ゆっくり歩いてゆっくり楽しんで」
 鈴蘭はにこにことしつつ先に進んでいる。
「そして頂上でね」
「たっぷり食うか」
「そこはたっぷりなのね」
「ああ、皆で腹一杯食おうぜ」
 足の速さを緩めつつもだ、薊はまだ先頭を歩いている。
 その先頭を進む彼女にだ、黒蘭も声をかけた。
「この景色はね」
「ああ、どうしたんだよ」
「ええ、漫画に描きたいわ」
 そうしたいというのだ。
「何時かね」
「それいいよな」
「旅行で見た関西のあちこちも横須賀も」
 そうした場所もというのだ。
「何時か描きたいわ」
「背景とかでか」
「背景も大事だから」
「背景もいいと確かにな」
「漫画はより映えるわね」
「確かにな。漫画はキャラが第一でもな」
「背景も忘れてはならないわ」
 黒蘭はその辺りもわかっているのだ、それで薊にもこう話すのである。 
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