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美しき異形達

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最終話 ピクニックその一

                  美しき異形達
                最終話  ピクニック
 二学期になった、そのはじまりの日にだった。
 薊は同じ部屋の朱美と伸子にだ、笑って言った。
「またはじまったな」
「ええ、学校がね」
「はじまりましたね」
 二人は制服に着替えていた、そのうえで薊に答えたのだ。
「二学期が」
「長い夏休みでしたけれど」
「本当に長かったな」
 薊は自分の夏休みを振り返って述べた。
「それで色々あったよ」
「薊ちゃん二回旅行行ったのよね」
「関西回って地元にも帰ったよ」 
 朱美にも答えた。
「あそこにもな」
「そうよね」
「ああ、面白かったよ」
 戦いのことを隠しての返事だった。
「どっちもな」
「それは何よりね」
「旅行っていいですよね」
 伸子も言って来た。
「色々なものを観られて」
「食えてな」
「先輩関西の美味しいものも」
「かなり食ったよ、冬にまた行きたいな」
「そうされて下さいね」
「さて、じゃあな」
 ここでまたこう言った薊だった。
「学校行こうか」
「ええ、ただね」
「二学期の最初の日は」
 その日についてだ、二人は言った。
「どうしてもね」
「嫌ですよね」
「また授業がはじまるって思うと」
「そう思いますよね」
「だよな、あたしもだよ」 
 薊もそう感じていた、だがだった。
 薊は二人にこうも言った、その言った言葉とは。
「けれどそれがいいよな」
「いいの?」
「そうですか?」
「だってさ、学校に行けるってことは普通に生きていることだろ」
 そのことの何よりもの証だからだというのだ。
「それっていいことだよな」
「そう言うのね」
「日常がいいって」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「いいと思うぜ」
「成程ね」
「そういえばそうですよね」
 二人で薊のその言葉に頷いた、そして。
 それぞれの制服姿をチェックしてだ、朱美が言った。
「二人共いい感じよ」
「ああ、先輩もな」
「奇麗ですよ、制服姿」
「うふふ有り難う、じゃあね」
「ああ、朝飯食ってな」
「学校行きましょう」
「今日の朝御飯はお豆腐と和布のお味噌汁と」
 まずはこれだった。
「ハムエッグ、お漬物、納豆ね」
「納豆いいよな」
 納豆があるち聞いてだ、薊は実に嬉しそうに言った。
「朝にあると違うよな」
「そうなのよね、朝の納豆はね」
「凄く嬉しいですよね」
 朱美も伸子も納豆について笑顔で語る。
「腹持ちもよくて」
「美味しいですし」
「身体にもいいから」
「言うことなしですよね」
「そうなんだよな、関西じゃ納豆食わないって聞いたけれど」
「それは昔よ」
「昔のことですよ」
 二人は薊にすぐにこう答えた。 
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