| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

球技大会の時間・2時間目(2016/03/28 タイトル変更&一部加筆修正)

 
前書き
本来は杉野君の回なのに、杉野君が完全に空気になってます。

ごめんね、杉野君。 

 



【視点:樹】



今日は空も雲一つない快晴。絶好の球技大会日和だ。つい先程、男子組野球トーナメント決勝戦がA組の勝利で幕を閉じ、今からE組と野球部のエキシビションマッチが始まる。

エンドのE組とか普段から見下してる癖に野球部は気合十分。全力で俺達を潰そうとしている。ってか、弱者と見なしている相手を全力で潰しにかかるって、大人気ない三下臭が半端無いな。

試合開始前に両チームの選手が整列した時も、野球部の主将が友人に対して、自分のエリート観をドヤ顔で語る辺りも三下としか思えないしな。

外野からは小馬鹿にする様な野次を飛ばされる。そんな中で試合は始まった。俺達E組男子にとって唯一の救いは――――


「皆、頑張って!」


女マネを務めてくれている有希子が応援してくれていることだろう。1番打者、正義もやる気が出た様で、バッターボックスで1球目は様子見で見送ったものの2球目はバントで転がし、難なく一塁に辿り着いた。

その後も渚、悠馬が正義に続き、あっという間にノーアウト満塁。そして、4番打者の友人が今までやっていたバント作戦ではなく、ヒッティングで球を外野まで飛ばし、E組が3点先制した。

この流れのままならE組の勝利は確実。だが、野球部がE組相手に先制点を許したせいで、1回表で椚ヶ丘学園のラスボス・理事長が監督代理として出てきた。

野球部側のベンチ付近で野球部が円陣を組み、理事長が指示を出す。どういった指示を出したかは、ゲーム再開と同時に判明した。

5番打者である俺がバッターボックスに立つと、野球部全員が内野に集まった極端な前進守備についた。


「………ちょいタイム。理事長先生、エンドのE組とか俺らのこと散々見下しといて、こんな明らかにバッターの集中を乱す作戦を取るとか、大人気ないと思わねぇの?
ってか、ほぼ素人で構成されているチーム相手にこんな作戦を取るのが、エリート野球部のやる野球な訳?」
「文武共に優れた者であれば、この程度で心を乱したりはしない。それに獅子は兎を狩る時も全力を出すものだ」
「ふ~ん、そういう考え。んじゃ、もう1つ確認」
「何かな?E組の南君」
「俺が打った球がこんな前進守備をしている野球部の顔面に当たって、そいつが病院送りになったとしても、その責任はこの作戦を指示した理事長先生が取ってくれんだよな?」
「……その時は私が全ての責任を取ろう」
「そう。んじゃ、試合再開と行きましょうか?」


俺は理事長との会話を終えると、ヒッティングスタイルでバットを構え、野球部主将が投球モーションに入ったと同時に、俺も片足を地面から浮かした振り子打法のモーションへと入った。

投げられた球は中学生レベルを凌駕する球速だった。しかし、振り子打法と剛の秘打法・破竹による融合打法からすれば大した球でも無く、難なく打つことができた。

ヒットした球は一塁前方にいる野球部員の顔を紙一重で通り抜け、ファウルボールとなった。念の為言っておくが、態とファウルボールを狙ってみた。

そして、当然のことながら投手の球速を超える返球に反応できなかった部員は、顔の横を通り抜けたものが何か理解した瞬間、青ざめていた。


「ファ、ファール!」
「悪い悪い。俺、打った時のコントロールが悪くってさ。こんな前進守備されてたら、運が悪いと返球がお前らの誰かの顔面に当たるかもしれねぇんだ。あっ、顔面じゃなくて肩とかに当たることもあるかも。
ちなみに俺の返球速度は200km超えてるって、うちの担任に言われたことあるから、直撃したら再起不能の病院送りに成るかもな。野球選手って、肩を痛めたら選手生命絶たれるんだろ?」


俺がそう言うと、野球部全員が顔面蒼白となり、最初にいた前進守備の位置から後ずさり始める。まぁ、中学生とはいえ好きでやっていることをやれなくなるとか言われたら、誰だってビビるわな。


「そら!次の球投げて来いよ、三下投手。俺が格の違いって奴を教えてやる」


自分達が威圧する側だと思ってた奴らが、逆に威圧される側に回れば、一気に立場が逆転する。野球部主将から投げられた二球目は、今まで見た球の中で最も遅く秘打法を使うまでも無いものだった。

が、俺は理事長の教育理念に沿う行動を取ることにし、今度はリズム打法と抜刀術の様な構えから静の秘打法・空蝉の融合打法を使い、金網へと球をめり込ませた。当然のことながらこれはホームラン扱いとなり、E組は1回表で5点先制することとなった。

その後も投手である野球部主将は、俺達に5点も先制されて調子を崩してしまい、更に急速が遅くなったことで、俺と友人以外でもヒッティングで打てる様になり、1回表でE組が10点取り、コールドゲームとなった。

途中、理事長がタイムを出し、野球部主将に何かしらの洗脳処置を行おうとしていたが、既に本能的に勝てないことを察してしまった者には、それも意味がなかった様だ。

っていうか、俺らが守備側になったとしてもホームランを打たれない限り、俺が縮地を使えば殺センセー程ではないにせよ、鉄壁の守備になるから、結果的には5‐0で俺達の勝利だった訳なんだが……

それにしても、この野球部メンタル弱過ぎだろ。いや、俺が脅し交じりなこと言ってたせいもあるけど、挫折とかしたことないのか、って本当に思った。

色んな意味で強い奴ってのは大なり小なり挫折ってのを経験してる奴だと思うんだけどな。ちなみに俺は人間関係っていうもので挫折を経験したことがあったりする。

取り敢えず、こんな感じで球技大会は終了した。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧