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Dead!?お笑い部。

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第3話 辛辣な雨と降りしきる涙

「よーし、新生お笑い部、始動だ!」
「「「「おー!!」」」」
 米田(ヨネダ) 砂種(ジャシュ)の音頭に合わせて、4人は手を大きく振り上げた。
「……で、お笑い部はいいけど、この部って何するの?」
 暮家(クレイエ) 智野(トモノ)は少し冷静になって尋ねた。
「そりゃあお前、お笑い部っつったらお笑い部よ」
「大会か何かにも出るのか?」
 塚見(ツカミ) 一男(カズオ)はポケットから折りたたみ式のハリセンを取り出した。
「形なら入ってる」
「ありだな」
 砂種は深く頷いた。
「だが、お前がツッコミになるかは分からないからな」
「……今時のお笑いって、ハリセン使うのか?」
 付石(フイシ) 夜騎士(ダークホース)は渋い表情をした。
「使うさ。アマなら」
 砂種はフフと笑った。
 今日、未来に向けて、大きな1歩を進みだした。
 こんな素晴らしい日が毎日のようにくればいいのにと思った。
 だが、現実は無情にも、全てを踏みつぶしていく。


「よーっし、今日の活動はこれで終わり」
「おつかれー」
「あー疲れたー。これからみんなでコンビニ行かねーか?」
「買い食いとは、それが教師の前でする話カレー?」
「はは、まー大目に見てくださいよ先生」
「しょうがないカレーねぇ」
「……って先生」
 砂種は急に立ち止まった。
「何カレー?」
「その語尾、何ですか?」
「へっ!?あ、あの、これはだね、そ、その実家が農家でよく大根役者ーなんてウドの大木みたいなやつらに言われててそれでえーっとあーっと……クソガァ!」
 そう叫びながら、シリコン製の偽物の顔を脱ぐと地面に思い切り叩きつけた。ビチッという鮮魚のような音がする。
「めんどくせぇ!ああそうだ、いかにも、俺は、カレー唯一化身、妹尾鶏(マイオドリ) 平目(ヒラメ)だ!」
「お前、先生をどうした!」
 砂種がズイと前に進み出た。
「どうしたと聞かれて答える悪人はいない!だが俺は正義の味方だ、特別に教えてやろう。あいつは俺の特製スパイスの材料となった」
 平目は誇らしげに言った。
「ふざけんなてめぇ!先生を返しやがれ!」
 砂種は平目に掴みかかろうとしたが、智野達3人は砂種を取り押さえた。
「落ち着いて米田!」
「うるせぇ!これが落ち着いていられるかってんだ!」
「今の俺達じゃあいつに勝てない」
「勝てる勝てないなんてやってみなくちゃ分かんねぇだろ!」
「……米田君、アレを見るんだ」
「アレって!……」
 砂種は夜騎士の指差した方を見た。
『今日もお兄さんお姉さんと一緒に、ダイジョーブ体操したい人ー!』
「はぁああぁぁぁあぁぁああい!!!!」
 グワォッ
「グッ!」
 砂種は咄嗟に顔を手でかばった。
「……ただものじゃ、ねぇな」
 砂種は体の空気を絞りだすようにフーっと息を吐いた。
「ダイジョーブ体操紅蓮項第23式、ガラムマサラトルネード!」
 平目の回転が茶色い粉末をまき散らし、その粉末が火の粉となり、炎の嵐になる。
「グワアァ!」
 砂種はその場から離れるので精一杯だった。一応、みんな避難は出来たようだ。
「っ!部室が!」
 智野が珍しく叫んだ。
 炎の嵐は部室を撫で壁を食い勢いを増していく。
(俺はまた、失うのか……)
 砂種が守っていきたいお笑い部、その仲間達の集う、この学校。 
(俺はまた、何も出来ないのか……)
「……まだ、出来ることはある」
 夜騎士は独り言のように呟いた。
「あるに決まってる!」
 そして、吠えた。
「付石……」
 砂種は虚ろになりかけた目で夜騎士を見た。
「……僕が囮になる。その内に、みんなでやつを止めてくれ」
「だが、そんなことをしたらお前は無事では済まないぞ?」
 一男は夜騎士を一瞥した。
「いざとなったら……」
 夜騎士はそう言うと少し思案気な顔をして、まるで春風の元にいるかのように微笑んだ。
「……なんか頼む」
「付石!」
「つべこべ言っている時間は無いぞ!」
 夜騎士はそう言うと駆け出した。
「ちょ、待っ……」
「付石 夜騎士はここだああああ!」
 夜騎士を見つけた平目は、戦闘態勢に入る。
「ダイジョーブ体操睡蓮項第139式……」
(今だ!)
 砂種達はもう片方の出入口から部室に雪崩れ込む。
 砂種達は前を向いて走る。見えているのは平目だけ。夜騎士のことは、見ていない。
「ターメリックブレード!」
 黄土色の剣が、夜騎士の方向へ向く。
 なんだ、
 見てるじゃねーか。
 砂種は心内で苦笑しながら、不思議と落ち着いていた。
 そして、黄土色の剣が夜騎士を貫いたと同時に、

 意識が、飛んだ。


 思い出した。
 僕は
 僕は……
「……ハッ!」
 彼は目を覚ました。
 辺りを見渡しても、地面しか無い。
「そうか……みょうがを食べさせられて、僕は……」
 彼はゆっくりと立ち上がり、土を払った。
 何も無い地を鋭い眼差しで見つめながら、彼は降ろされたはしごに捕まる。
(……今日の晩ご飯は漢方薬かな) 
 無理に作った笑顔を乗せて、今日も呑気にマンボウはプカプカ浮かぶ。 
 

 
後書き
仏の顔も三度まで、そんなことわざほっとけ!俺は怒る。怒らずにいられるか!絶対探しだしてやる、怪盗ノキューブ!そして、胡蝶さんもついでに、俺達が助けだしてみせる!次回、Dead!?お笑い部。『虚夢の中の饗宴』。朝ご飯は富豪のように食え!


ガラムマサラがガチで「熱い調味料」だそうでびっくりしてる。     by作者 
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