| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第23話:てんてこ舞い……舞ってる暇があるのなら、仕事して下さい

(グランバニア城・外務大臣執務室)
アルルSIDE

「あうぅぅぅ~……仕事が……書類がぁ……」
新任外務大臣補佐官の前に決済を迫られた書類が山積みになっている。
「ほら……嘆いてばかりじゃ終わらないわよ、リュリュちゃん」
私は外務大臣の秘書官としてティミーを補佐してたノウハウを教えるべく、彼女に新たな書類を手渡した。

「え~まだあるのぉ……」
彼女はウンザリした表情で書類を受け取り目を通す。
するとキラーパンサーのプックルが入出してきたのが目に入る。

「あ、おはようプックルちゃん」
「ウガゥ」
リュリュちゃんはプックルの存在に気付くと笑顔で挨拶をする。女の私でも見取れる笑顔で。

リュカさんの仲間モンスターの中で一番の古株である(プックル)……
その影響力は大きく、城の兵士等ですら一目を置いている。
そんな彼がワザワザリュリュに会いに来る……忙しいのだから後にしてもらいたいわね!

「ガウガゥ……」
「ああ、いいのいいの。昨日の事は気にしてないから。何時もの事でしょ(笑)」
プックルが何を言ったのか解らない……でもリュリュちゃんには理解できたらしく、普通に会話が続いて行く。
彼女(リュリュちゃん)・リュカさん……それとマーサ様の3人だけは、全てのモンスターと会話する事が出来る。凄い血筋ね。

「それより……プックルちゃんも子供達と遊んであげなよ。任務も重要だけど、可愛い子供を優先しないと……私みたいな大人になっちゃうゾ!」
「プギャー!」

自覚のあるリュリュちゃんの言葉に、あからさまな動揺をするプックル……
自虐的な事を言ったリュリュが悪いのだが、彼女の父親に仕える者としては、その態度は如何な物だろうか?
少し落ち込むリュリュちゃんを見て思った。

「ほら……何時までもお喋りしてると終わらないわよ」
放っておくと長くなりそうだったので、仕事を催促する形で切り上げさせる。
プックルも理解してくれた様で、私を軽く見詰めるとそのまま退出して行った。

「あうぅぅ……助けてはくれないのねプックルちゃん?」
「ほら、これ! この書類もさっきのと同じ様に処理すれば良いのだから、片付けちゃいましょう」
そう言って、たった今手渡された書類をリュリュちゃんに差し出した。

「あ、どーもユニちゃん」
書類を持ってきたユニさんに挨拶をしながら、リュリュちゃんは受け取った書面を嫌々眺める。
ウルフの下に居る者は、皆が忙しいと思っていたのだが、どうやら城内の事を管轄するユニさんは例外らしく、リュリュちゃんの態度を微笑みながら眺めている。

「あの……思ったんですけどぉ……この書類も、さっきの書類も提出期限が来週なんですけどぉ~……後回しにしませんかぁ?」
「来週にはウルフはバカンスで居ないのよ。政務の中心に居るウルフが居る内に決済しないと大変な事になるでしょ」

そうなのだ……グランバニアは何処も彼処も大忙し。
政務の中心人物が10日程バカンスに出る為、その前に片付けねば仕事が大幅に滞る。
あと3日でウルフに決済させなければ、次のチャンスは更に10日後になる。

「何でこんなに忙しいんですかぁ!? 私まだ初心者ですよ! 手加減して下さいよぉ……」
「だから……あと3日でウルフがバカンスに行くから、誰もが仕事を前倒しで進めてるのよ。お父さん(リュカさん)の為だと思って我慢しなさい」

以前の私の仕事ぶりを見てるリュリュには納得いかないのだろうけど、現在の仕事量は私が処理してた時の5倍以上だ。
文句の一つも言いたくなるのは解るが、聞いてやる程暇じゃない。
父親の名を出す事で口を封じる。

「くっ……だ、大体……何で今のタイミングでバカンスに行くんですかウルフ君は!?」
「貴女の父親が、このタイミングでバカンスに行く様に旅券を与えたからよ」
愚痴りたい気持ちは良く解る……でも、それを封じるのも私の仕事。

「………」
ぞんざいな私の言葉に、頬を膨らませ書類を睨むリュリュちゃん……
あぁ、可愛い!

「ふふふふふっ」
突然ユニさんが私達(主にリュリュちゃん)を見て笑い出した。
「ごめんなさい……でも可笑しくて」
滑稽なのは解ってるけど、目の前で笑われるのは、ちょっと……

「あのねリュリュ様……リュカ陛下はウルフ殿の事を考えて、今の時期に旅行へ行く様に指示したのよ」
ウルフの事は考えてただろうけど、私達の事は考えてなかったようね。

「違いますよアルル様。リュカ陛下は私達の事を蔑ろにした訳ではありません」
顔に出てたかしら?
考えを読まれるなんて……

「ウルフ殿はああ見えて真面目なんです。与えられた仕事を実直に(こな)して行く真面目な子なんです。でも、それだと(いず)れ身体を壊しかねないでしょ? リュカ陛下はそれを心配して、この忙しいタイミングで旅行へ行く様仕向けたんです。そうすれば今後自らの意思で、休みを調整し旅行等に行く事が出来る……それをウルフ殿に教える為に今のタイミングでバカンスを決行させたんです」

「なる程……つまり、仕事の分配等の事柄を身をもって体験させ、それを今後に生かさせようって訳だねユニ」
「はい殿下。リュカ陛下は先の先まで見通して、色々計画を実行してるんです!」
なる程……普段のいい加減野郎を見てると忘れがちだが、意外と深慮遠謀な人物だったわね。

「がんばろ……仕事……」
ユニさんとティミーの言葉を聞き、リュリュちゃんも仕事に専念しようと態度を改める。
それを見たユニさんは軽く頷き自分の職場へ戻っていった。



そして暫くの時間が経過し……
「リュリュ……それが終わったら、この書類を軍務大臣に渡してきてよ。そしてそのまま休憩してきなさい」
「あ、はい殿下」

休憩できると思い、ルンルン気分で出かけるリュリュちゃん。
私はリュリュちゃんが出て行くのを見届けてからティミーに話しかけた。
「ほんと……妹に甘いわね……」

「シスコンだからね……僕は(笑)」
自分で言うな!
「そんな事より」
突如真面目な表情になるティミーは、私を見詰め話しかける。

「先程のリュカ陛下の話だが……どう思った?」
「どうもこうも……時折見せるリュカさんの深慮遠謀話だと思ったわ」
普段がそれだともっと尊敬できるのだけどね。

「アルル……気を付けろよ。父さんの言動を大きく評価する連中は、皆があの人の信奉者だ。妻然り、愛人然り……ユニだって以前に奴隷だったところを父さんに救われたリュカ信者だ。当人の思惑とは関係なく、敬愛するリュカ陛下の行動に正当性を見出す輩だ」

「さ、流石ティミーね……父親の事を、その周囲の事を熟知してるわ」
「感心するな。僕だってリュカ信者の一人なんだぞ。何せ血縁だからね……実の息子だからね!」
おいおい……それじゃ困るだろ。

「君が僕の妻として、リュカ信者とは違う物の考え方をしてもらわないと……」
「何その責任重大任務は!?」
あの人の真意なんか読み切れる訳ないでしょ!

「第二のリュカ陛下にはなれないけど、劣化版リュカ陛下にするのか、それともティミー陛下にするのかは君次第だ。僕はどちらでも構わないし、どちらでもこの国は問題ない」
究極の選択ね……どっちも魅力的だけど……

「君の好みに任せるよ。まぁ生まれてくる子供は、どっちの父親が良いのか判らないけどね」
「じゃ、昔のティミーが良い。チェリーだった頃の馬鹿真面目な父親(ティミー)であってほしい!」
妻としてはあの頃のティミーは疲れるだろうけど、子供の教育上は好ましい。

「あの頃の僕はもう居ない。君が僕を大きく変えたんだからね(笑)」
もう居ないかぁ……それは残念だ。

アルルSIDE END



 
 

 
後書き
次話よりウルフのバカンス編です。
でも仕事の都合で暫く海外へ行くので更新出来ません。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧